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エコシステムで創り出す 安全性と利便性
SBIホールディングス×NEC
~NEC Vision 2020 共に未来を思い描くDialogue~

 金融がデジタル化していくなかで、ルールメイキングや新たな仕組みが求められています。
 誰もが安心して便利なサービスを受けられる社会を目指し、金融とテクノロジー、互いの強みを合わせた二社が創る未来の信頼源とは。

SPEAKER 話し手

SBIホールディングス
SBIセキュリティ・ソリューションズ

フェルナンド・ルイス・バスケス・カオ 氏

SBIホールディングス サイバーセキュリティ室長
SBIセキュリティ・ソリューションズ 代表取締役社長

2003年スペインから来日後、NTTデータ先端技術株式会社に入社。オープンソースソフトウェアの開発に携わり、Linuxの商用利用に貢献した第一人者。日本OSS貢献者賞などのアワードを受賞。15年にSBI BITSに入社。18年に現職。SBIグループ全体のサイバーセキュリティ対策の徹底や最先端技術を活用した独自のセキュリティサービスの開発を進めている

NEC

岩田 太地

デジタルインテグレーション本部 ディレクター

新規デジタルビジネスの企画実行を推進。これまでに、インドで国民IDを利用し銀行口座取引を可能とするICTインフラ事業や、三井住友銀行とのFinTech・ジョイントベンチャーを社内起業として立ち上げてきた。また、新規デジタル事業開発に加えて、デジタル時代の新たなガバナンスの在り方についてステークホルダーとの協議も進める

──金融をめぐる環境が大きく変わるなかで、今、企業に求められていることは何だと思われますか。

フェルナンド・バスケス氏(以下、敬称略):将来的には一人ひとりの携帯端末が自身の「銀行」となっていくでしょう。そのためにも正確な本人確認(KYC)が不可欠です。企業は、法制度の変化に適応しながらセキュリティを強化することがますます重要になるでしょう。

フェルナンド・ルイス・バスケス・カオ 氏
SBIホールディングス サイバーセキュリティ室長
SBIセキュリティ・ソリューションズ 代表取締役社長

岩田 太地:2018年11月に犯罪収益移転防止法改正により本人確認のオンライン完結が可能となったことで、セキュリティ対策の重要性も高まりましたね。国際的なマネーロンダリングやテロ資金供与にも強固な対策をとっていかねばなりませんし、金融がデジタル化していくことで、安全性と利便性の両方を追求することがより一層問われるようになりましたよね。

岩田 太地
NEC デジタルインテグレーション本部 ディレクター

バスケス:難しい課題ですね。多要素認証を使えば、なりすましを防ぎ安全性は強化できますが、要素を増やせば増やすほど使い勝手は悪くなります。発想を変えて銀行の取引や通信事業者の情報、Eコマースの購買履歴などのデータを組み合わせ、AIを使って個々のユーザーが抱えているリスクを割り出します。そのリスクのスコアに応じて認証の方式を変えたり要素を増やしたりする。これにより、安全性と利便性を両立した新たな認証のモデルがつくれると考えています。ただ、データも使い方を間違えると監視社会につながる恐れがあるため、その使い方には注意しなければならないでしょう。

岩田:“ビッグブラザー”の出現は防がなければいけませんからね。デジタル時代は顧客をデータで理解できるからこそ、いかに顧客体験を創意工夫して改善していけるかが重要ですよね。利便性を損なわず安全性を確保できれば、顧客志向に集中したサービスの創出につながるはず。NECとしては状況に応じた最適なKYCを行え、どのような人でも使えるサービスを世の中に提供していくことを目指しています。「安全」「安心」「効率」「公平」とNECが掲げている4つの社会価値のなかでも、「公平」は最もNECらしいものだと思います。

バスケス:これからは金融機関、ICT企業、通信事業者や関係当局などさまざまなステークホルダーを巻き込んだ動きがますます重要になってきますね。技術に強いNECさんと協力できるのを嬉しく思います。金融機関だけでは技術面に不安を抱かれることもあるし、逆に技術の企業だけでは金融のことを理解しているのか訝しがられることもありますからね。お互いの人脈や強みを活かしあってこれまでとは違うアプローチをしていける素晴らしいパートナーだと思っています。

岩田:「金融」はさまざまな顧客接点をもっていますし、規制対応の最前線にあるといってもいい。だからこそ、テクノロジーに強いNECが力を発揮できる部分は大きいと思っています。今後はさまざまな業種を巻き込んだエコシステムを創っていかなければいけませんから、新たなルールづくりを考えるうえでも企業間の連携は欠かせない。テクノロジー企業と金融機関が組むシナジー効果は大きいはずです。

──SBIグループとNECのこれまでの取り組みと今後目指す姿はどのようなものでしょうか。

バスケス:まずは2017年8月にSBIホールディングス、SBI BITS、NECの三社共同で分散台帳技術を活用したKYCの実証実験を開始しました。18年4月までのべ16社が参加し、口座開設業務の効率化とユーザー利便性向上を実証しています。その結果を受け、18年4月からは50以上の企業が参加する証券コンソーシアムで実用に向けた議論を継続しています。

岩田:これまでも共創してきたSBIセキュリティ・ソリューションズさまとNECで、2019年10月に合弁会社を設立し、国内外の金融機能提供者に必要であるKYC、AML/CFT ※1対策のサービスを提供していきます。キャッシュレス決済の推進によりKYCの需要は高まっています。また、2019年秋からFATF※2第4次対日相互審査も始まり、今後も規制強化が見込まれ、AML/CFTもニーズが高まっているので、会社設立の意義は大きいと思っています。

  • ※1 Anti-Money Laundering/Combating the Financing of Terrorism
  • ※2 Financial Action Task Force on Money Laundering:マネーロンダリングに関する金融活動作業部会

バスケス:こうした取り組みを通じて、データを使った新たなビジネスも構想していけるといいですね。証券コンソーシアムでつくったガイドラインがゆくゆくはグローバルスタンダードになっていく可能性もあるわけですから。

岩田:そうですね。データビジネスの未来を考えるうえでも、まずはみんなが安心してデータを提供できるエコシステムがなければいけません。新たなエコシステムをつくっていくことは未来の競争力になりますし、何より新しい信頼の源になる。そのうえで、プライバシーバイデザインの観点からも同じ意識をもち、目指したい社会像と果たしたい役割が一致しているSBIセキュリティ・ソリューションズさまと共創できるのは心強いです。

バスケス:プライバシーに反しない形でAIを使って顧客データを活用できるような、セキュアな共通基盤を共につくっていきたいですね。そして、ユーザーの利便性も上げていけたらと考えます。ヨーロッパでGDPR※3が施行されたように今後日本でもデータガバナンスは重要になるはずですからね。ただ、現状日本はあまり危機感がなく、セキュリティの考え方が遅れている企業も少なくない。どんなシステムも必ずハッキングされることを前提に、どれだけ早く検知して復帰できるか、実害が防げるかも重視した対策が必要です。

  • ※3 General Data Protection Regulation:一般データ保護規則

岩田:事故は起きるものですが、事故を恐れて新規事業が育たなくなると本末転倒です。事故が起きても信頼を失わないような仕組みをつくっていく意味がある。また、セキュリティ対策のコストはますます高くなっていて、対応しきれない企業もでてくるでしょう。だからこそ、われわれのようにサイバーセキュリティの知見と技術をもった企業が共同で取り組むことで「社会コスト」を下げられる。例えば、かつてベルリンでは、たくさんのホワイトハッカーがいたことで多くのFintechスタートアップが育ちました。同じように、われわれがセキュリティをきちんと守る役割をエコシステムの中で担えれば、小さなスタートアップもビジネスを始めやすくなるし新たな金融サービスが生まれやすくなるはずです。それがデジタル世界の安心源となっていろいろなイノベーションが生まれてくると面白いですね。

バスケス:FinTechは最初スタートアップ主導で進みましたが、これからは従来の金融機関が果たす役割が重要になっていくはずです。今やコンプライアンスやガバナンスが非常に重要で、万全なリスク管理ができなければ顧客を守れませんから。日本の金融庁は新しい法整備を進めているので、今後は私たちのような企業がさまざまなプレイヤーと連携し、金融の新たな“革命”をリードしていきたいです。

岩田:インターネットの誕生から30年近く経ち、データ流通や本人確認を前提としていなかった従来と同じWebの世界で安全なサービスをつくり続けるのは限界があると思います。新たな信頼の基盤となる次代のアーキテクチャをデザインしていくことが重要だと考えます。それによりあらゆる人々が安心して便利なサービスを受けられる社会にしていきたいです。