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2016年08月19日

働く大人の学びと成長

原 晋氏(前編)~組織を強くするのは、グレーゾーンのある自由な議論だ~

「黙々と」ではなく、自由に議論することが選手の力を引き出す

──すると、大学の駅伝部でも自由に議論をさせているのでしょうか。

原氏:
 「提案することはいいことだ」「話をするのはいいことだ」というのがベースにあります。私が話をして、みんなに「意見があるか?」と聞いて、「何もない」と言うと、「それはおかしいよ、何か言いなさい」と言います。体育会だと、上から言われた通りに黙って黙々とになりがちですが、それではダメです。「常識は変わるもので、今日の常識が明日の非常識になることもあるのだから考えなさい」と言っています。

──陸上選手は「黙々と走る」イメージが強いですが、そうじゃないということですか。

原氏:
 陸上選手は余計なことは遮断して、修行僧のような競技生活を送りますから、「黙々と走れ」「あまり話すな」となりがちでしたが、監督がいくら指示をしたところで、今はクリック1つでいくらでも情報が手に入ります。「監督の言っているのは20年前のことだ」となると、誰も言うことを聞かなくなります。

 指導のあり方が、かつての「教える、教わる」ではなく、若者の引き出しをどう引き出すかが大切になっていますから、そのためには自由に言葉を発信できる組織にしなければいけません。

 リーダーの仕事は引き出すことであり、引き出したものをどう実行に移すか、そのタイミングや選択を経験値で行うことです。今までは選手は「教わる」でしたが、今は「教える」ことは何もありません。

──それでは、学生たちが練習方法を提案することもあるのでしょうか。

原氏:
 もちろんです。その提案を受けて、「今のタイミングじゃ早いな、3ヶ月後だな、1年後だな」と判断をするのが私の役割です。駅伝シーズンはチームとして責任を負うので、ある程度の枠はありますが、練習方法や目標などをみんなで考えることはよくあります。

 青山学院大学の今年のテーマは「個の色合わせて緑となれ」ですが、我々は個人を大切にして、個の色を合わせたうえで最終的には青山のチームカラーの緑になればいいなと考えています。

──個人の考える力や個性を生かしながら大きな目標を達成するということですね。次回は、原さんのチーム作りにおける哲学や、リーダーに求められる役割についてお伺いします。

(インタビュー:時田 信太朗、文:桑原 晃弥)

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