2016年08月19日
働く大人の学びと成長
原 晋氏(前編)~組織を強くするのは、グレーゾーンのある自由な議論だ~
2015年に箱根駅伝で初優勝を果たした青山学院大学ですが、これは創部以来97年目、箱根への初出場から73年目の快挙でした。翌2016年にも圧勝で連覇を果たしたことで大いに注目を集めたのが、同大陸上競技部監督・原 晋さんの指導法です。その指導法が生まれた背景には、10年間の営業マン時代の経験がありました。原さんに、ビジネスマン時代の経験、仕事と陸上における共通点についてお話をお聞きしました。

青山学院大学 陸上競技部 監督

株式会社アスコム
目標への向かい方は陸上も仕事も一緒
──青山学院大学 陸上競技部の監督として有名な原さんですが、それ以前のビジネスマンとしての経歴について教えていただけますか。
原氏:
中学で陸上を始めて、世羅高校3年生の時に全国高校駅伝で2位に入っています。その後、中京大学を経て陸上競技部第1期生として中国電力に入社しますが、故障もあって27歳で競技を引退しました。2004年に青山学院大学の監督に就任するまで、サラリーマン生活を過ごしてきました。
サラリーマン時代、私はひとつの仕事に対して「陸上に置き換えたらこうなる」というように考えていました。陸上だろうと仕事だろうと目標を達成するプロセスは同じだと感じていたのです。
──陸上選手としての経験が、サラリーマンとしても役に立ったということでしょうか。
原氏:
私は、「最初にどうすれば最大限の成果を出すことができるか」を常に意識し、「こうあるべき」というのを決めて、戦略を練って積み上げていくタイプです。陸上もビジネスも成果を上げるためには、その分野で「ここを外してはいけない」というキーワードをつかむことが大切ですが、仕事の核となるキーワードをキャッチしてからは、私の成長は意外と早かったと思います。
できないサラリーマンは枝葉の部分で議論しがちですが、枝葉を議論しても成長はないし、会社も変わりません。与えられたポジションごとに肝となる何かがありますが、私はそれを嗅覚でキャッチしてきました。
陸上もそうでした。何も考えずにグラウンドをぐるぐる走る人がいますが、私はやるべきことをやったらパッと切り上げます。そんな私を見て周りは「あいつはすぐにトレーニングを終える」とか「練習嫌い」と言いましたが、そこには理由がありました。陸上でだらだら走ってもダメなように、仕事もだらだら残業してもダメなのです。