2016年09月16日
働く大人の学びと成長
原 晋氏(後編)~常勝チームのつくり方は「引っ張り、声を聞き、巻き込む」こと~
勝つために必要な「一体感」をいかに持たせるか
──原監督は、2008年の箱根駅伝で関東学生連合選抜チーム(以下「関東学連」)の監督を率いて、チームを史上最高位の4位に導いています。選抜チームは、各大学のチームとは違い、組織としての経験が浅いと思いますが、なぜこのような結果を出せたのでしょうか。
原氏:
箱根駅伝では、予選会で次点になった大学の監督が関東学連の監督を引き受ける慣例になっており、その年は私が監督に選ばれました。
そもそも関東学連は、予選会で敗れた各大学のチームの上位選手が集結するため、個々の力は非常に高いものがあります。選ばれた選手10人の予選会のタイムを合計すれば、たいてい予選会トップのチームより上になります。つまり、本来は箱根駅伝本番でも好成績を残せるはずなのですが、実際のところ、そこまで結果を出せていなかったのです。
箱根駅伝までの期間は2ヶ月間しかありません。私は、関東学連には何が足りないのかを分析しました。ビジネスでも陸上でも共通して重要だと思うのは、仕事の核となるキーワードを見つけることだと考えていますが、この時に導きだしたキーワードは「一体感」でした。
これまでの関東学連チームでは、練習初日に選手がやることは自己紹介と写真撮影をする程度でした。しかし、私が監督になった年は、練習初日にミーティングをして「このチームは何位になりたいのかを議論してくれ」という課題を出したのです。青山学院大学でもこうした目標管理ミーティングを行っていますが、それに近いものを関東学連でも行いました。2時間に亘ってあれこれ自由に意見を言い合い、議論した結果、目標は「3位」に決まりました。
私は、関東学連の選手たちに「じゃあ、そのお手伝いをさせてもらいます」と伝えました。それだけではありません。各選手が所属する大学の監督にも電話をして「あなたのチームの○○君は3位を目標にしたので、ぜひ協力してください」と依頼したのです。
駅伝というのは「心の襷リレー」ですから、一体感のないチームがいい成績を上げることはできません。言い換えれば、寄せ集めのチームだったとしても、選手や監督、外部の協力者が確固たる目標を持てば、個々の力が強いチームに勝てる可能性があるということです。
最初にみんなで目標を共有したり、チーム名を決めたり、マネジャーもメールで各選手と頻繁に連絡を取ったりした結果一体感が生まれ、彼らは史上初めて4位に入ることができました。