2016年09月16日
働く大人の学びと成長
原 晋氏(後編)~常勝チームのつくり方は「引っ張り、声を聞き、巻き込む」こと~
チームが強くなれば、監督の立ち位置は自然と下がっていく

──関東学連の選手にとっても大変な自信になったでしょうし、監督ご自身も大変嬉しかったのではないですか。
原氏:
それまで惜しいところまでいってなかなか箱根駅伝出場を果たせずにいましたが、この結果によって「原は指導者として力がある」と大学内外で認められました。
──その後、青山学院大学は2009年に33年ぶりに箱根駅伝出場を決め、2010年にシード権を獲得と順調に成果を上げ、2015年に初優勝、2016年に連覇という素晴らしい成績を上げられました。3連覇がかかっている来年に向けて、青山学院大学が取り組んでいることを教えてください。
原氏:
餅は餅屋で、社外講師を招いてメンタルトレーニングなどを充実させています。陸上の監督はヘッドコーチタイプが多くて、外部を寄せ付けないで、自分が率いていくスタイルが目立ちます。たしかに、弱いチームを強くする第一ステージではこのやり方でいいでしょう。しかし、チームが成熟してくると、監督の能力以上のものを出さなくてはならなくなります。選手たちも1から10まで指示されて動くのではなく、自分たちで動くようにしていかないと強くなれません。
私は、強いチームになるほど、監督の役割や立ち位置は下がっていくものだと思っています。2連覇を達成し、さらなる高みを目指すためには、各選手の提案を受け入れたり、専門家を巻き込んだりして、さまざまな人を巻き込んでいくことが必要です。強いチームをより強くするためには、監督である私の自己満足でクローズドにせず、選手たちがより輝くようにオープンな体制で育成していくべきなのです。
──最後に日本の陸上界の課題や提言がありましたら教えてください。
原氏:
陸上界には、「華」が足りないと思っています。身体能力の高い選手は、サッカーや野球といったメジャー競技に取られています。陸上界はマラソン、駅伝以外はマイナーという危機意識で運営しなければいけません。
陸上競技の中には日本記録が長く破られないものがありますが、これは競技のレベルが上がっていないということで、会社に置き換えたら倒産してもおかしくないのです。
陸上界が発展していくためには、もっとスポンサーを増やし、若い人たちに陸上競技をやりたいと思ってもらい、競技を続けられるような仕組みを作ることが大切だと思っています。ゼロに何を掛けてもゼロになりますが、1人でも声をあげれば、その輪が広がっていくと信じて行動していきたいと思います。
(インタビュー:時田 信太朗、文:桑原 晃弥)