2017年06月15日
AFP通信ニュースで世界の「今」を読み解く
世界の就活&転職事情、日本とどう違う?
シンギュラリティがもたらす可能性
テクノロジーは専門性と大きく関係しており、2045年にはシンギュラリティ(技術的特異点)が訪れると主張する者がいる。(9) AIなどのテクノロジーの発達により産業構造や労働市場が大きく変わる可能性がある。より高い専門性が求められ、現在は専門性と思われている技能が陳腐化することも考えられる。それによって、失われる職業が出てくるとも言われている。


実際、人間の代わりに等身大ティラノサウルスが宿泊客を出迎え、フロントデスクでは話せる恐竜ロボットがチェックインを手伝う千葉の「変なホテル」や、フランスの病院で薬剤師に代わって薬を扱うロボットが、すでに稼働している。インターネット通販最大手の米アマゾン・ドットコムは今年4月、同社の人工知能(AI)パーソナルアシスタント「アレクサ」を搭載する新製品「エコー・ルック」を発表した。音声認識機能やハンズフリーの深度センサー付きカメラが搭載され、専用アプリ「スタイルチェック」を使って服を選んだり、コーディネートのアドバイスを受けたりもできる。(12)
このように様々な作業を人間に代わってロボットがやるようになれば、多くの人の仕事がなくなり、最終的には仕事をしないで済むと主張する者も出てくる。(13)
しかし、イノベーションは新しい需要も生み出す。過去にも様々なイノベーションが起き、新しい需要や仕事を生んできた。その一例としてガラケーからスマホに変わり、ガラケー以前にはなかったような職業、たとえばユーチューバ―などが生まれた。消える職業がある一方で、新たな需要に応える新たな仕事が生まれる可能性も高い。
ビジョンを持とう
AIやIoTなどICT技術の劇的な進歩により大きく変わろうとしている世界で、専門性とともに重要なのは、各人がビジョンを持って主体的に行動することだろう。これまでの日本では終身雇用制度のもと、大企業を中心にジェネラリストとしてキャリアを積んでいくことが良しとされた。しかし、最近は2枚目の名刺をもつ人たち、すなわち副業をもつ人たちが増えている。ビジョンを持って行動している人たちが増えているともいえる。ひとりひとりがビジョンを持つことで、主体的な行動が可能になり、自らがイノベータ―としてイノベーションを起こせるようになる。自らがイノベータ―になれば、将来予見できる新しい課題にいち早く対処できる。早稲田大学大学院経営管理研究科の入山章栄准教授は「常識の枠」を出ようと提言する。(14) 人との出会いが視野を広げ、マインドセットを変えていくというのが彼の持論だ。専門性の高い人たちも専門性の幅を広げることは重要だと言える。キャリア理論においてスタンフォード大学のクランボルツ教授が考えた「計画的偶発性」のすすめも同じだ。
また、厚生労働省が発行する「働き方の未来2035」(15)では、2035年には様々な仕事がプロジェクト型になり、働き方や組織の形態も今後変化すると予測している。そうなれば2035年には転職は今よりも一般的になっているだろう。大学生の就活についても変化していく可能性が高い。
すでに感度の高い学生はボストンキャリアフォーラムなどに参加している。世界のあちこちで催されているイノベーションチャレンジ・コンペティションやオープンソース・アワードなどに挑戦してハーバードやMITの学生としのぎを削ってみてもいいだろう。今日からでも「常識の枠」から一歩出られるようにまず行動しよう。
(文/有限会社ラウンドテーブルコム Active IP Media Labo、写真/AFPBB News)
(1) http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000132220.html
(2) http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html
(3) http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/16-2/dl/gaikyou.pdf
(4) http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2016fy/000721.pdf
(5) AFPBB News 関連記事(2017年6月1日)「ワインの本場、仏ブルゴーニュに中国人学生急増 需要拡大背景に」
(6) http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/intern/sanshou_kangaekata.pdf
(7) AFPBB News 関連記事(2016年6月18日)「米国防総省のサイトに弱点138か所、バグ発見の報奨制度で判明」
(8) http://www.seikatubunka.metro.tokyo.jp/chiiki_tabunka/tabunka/files/0000000737/soan2.pdf (東京都で暮らす外国人の状況)
(9) Kurzweil, Ray. (2006) The Singularity Is Near: When Humans Transcend Biology, New York, NY: Viking.
(10) AFPBB News 関連記事(2017年3月15日)「恐竜ロボットお出迎え 「変なホテル」関東初上陸 千葉」
(11) AFPBB News 関連記事(2017年3月30日)「人工知能やロボットが奪う「人の仕事」、専門家らの意見」
(12) AFPBB News 関連記事(2017年4月27日)「米アマゾン、AI搭載「Echo Look」発表 衣服のアドバイスも」
(13) AFPBB News 関連記事(2017年2月8日)「全国民に最低所得保障」は空論か、未来経済の処方箋か」
(14) なぜ、これからのイノベーションに「あなた自身の強いビジョン」が必要なのか~「常識の枠」を出る組織と個人のあり方を考える~(2017年4月25日)
(15) http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000133449.pdf