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2024年02月05日

NECが「自己託送」で挑む脱炭素社会への道
~発電した再エネを有効利用する仕組みとは~

自己託送により削減される電力量・CO2排出量の試算イメージ

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 地球温暖化の抑止には、太陽光をはじめとした再生可能エネルギー(以下、再エネ)の活用が有効な手段となるが、都市部ではソーラーパネルの設置場所を確保することが難しい。そこで期待を集めているのが、遠隔地で自家発電した電気を電力会社の送配電網を借りて送る「自己託送」だ。NECは自己託送によって、我孫子事業場で発電した電力の余剰分を本社ビルに送電する取り組みを開始。そこで培われるノウハウを活かしてカーボンニュートラルのさらなる貢献にチャレンジしようとしている

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再エネ自給率の向上でカーボンニュートラルに貢献

 持続可能な社会を実現する上での最重要課題が、異常気象や海面上昇などを引き起こす地球温暖化への対策だ。その要因はさまざまだが、産業革命以降、大量の化石燃料が使われるようになって大気中の二酸化炭素濃度が高まったことが、今日の深刻な温暖化につながっていると考えられる。

 状況の改善には経済活動などに伴う二酸化炭素の排出量を減らすことが不可欠だとして、脱炭素の動きが世界で拡大。日本政府も、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言した。

 そのために有効な方法の一つが、発電手段を化石燃料から再エネに代替することだ。NECでは再エネの自給率を高めるべく、国内各所の主要事業場で太陽光発電設備の設置を進めてきた。

 「中でも主に通信ネットワーク機器の試験や評価を行うNEC我孫子事業場(千葉県我孫子市)には、『モノ売り』から『コト売り』への事業転換に伴って生じた余力のある空地があったことから、多数のソーラーパネルを設置。『再エネパーク』として機能させることになりました」と語るのは、NEC内の省エネ施策などを統括する臼井 和昭だ。

 ただし、利根川流域に位置する我孫子事業場は地盤が柔らかいため、ソーラーパネルの地上設置を展開するにあたっては、架台の杭長を長めに設計するなどの対策を要したという。それに加えて台風の影響も懸念され、強風に対する備えも求められた。

NEC
人事総務統括部
ワークプレイスグループ
Workplace Excellence
テクニカルマネージャー
臼井 和昭
NECファシリティーズ
北関東IFM事業部
環境工務部長
下重 臣弘

 「パネルの設置角度を工夫するとともに、メーカーに依頼して架台の耐風圧性を高めてもらいました」と、NECの各拠点における太陽光発電設備の設置計画立案と施工・運用に携わるNECファシリティーズ(我孫子地区担当)の下重 臣弘は話す。

 このように立地面の課題を克服した結果、我孫子事業場は2023年末時点で計4.1MW(3.6MWが太陽光、0.5MWが蓄電池)の発電能力を獲得するに至っている。

自家生産した電力の余剰分を有効活用したい

 我孫子事業場では2019年度に1.2MW、2020年度に0.3MW、2022年度に2.6MWと段階的にソーラーパネルや蓄電池を増設してきた。その結果、同事業場で使う電力のかなりの部分を自家発電した再エネで賄えるようになり、消費電力の少ない休日には余剰が生じるようになった。余剰電力を有効活用するべく持ち上がったのが、NEC本社ビル(東京都港区)への「自己託送」計画である。

 自己託送とは、自家発電した電気を離れた場所にある自社の施設に送ること。企業が消費する電力を太陽光で賄いたくても、都市部ではソーラーパネルを設置するスぺースの確保が難しい。郊外にある自社やグループ会社などの拠点で発電した電力を融通できればよいが、民間企業にはそれを送電する手段がない。そこで、電力会社の送配電ネットワークを借りて送電できる自己託送の仕組みが2013年の電気事業法改正によって制度化された。

自己託送の実現に向け立ちはだかったさまざまなハードルとは

 ただし、我孫子事業場と東京本社間の自己託送を行えるようにするには、乗り越えなければならないいくつものハードルがあった。

 プロジェクト発足当時は「国内には太陽光発電設備を活用した自己託送の取り組み事例がほとんどなく、電力会社や公官庁への手続の仕方すらよくわからないといった状況でした。しかし、私どもが先陣を切ることで再エネを有効活用する機運を醸成したいとの思いから、自己託送を実現するプロジェクトをスタートさせることになりました」と臼井は振り返る。

自己託送の実現に向け乗り越えたチャレンジ(その①:設備面)

 準備段階では、自己託送に必要な指針の順守に備えるために必要な対応も行われた。我孫子事業場の構内側に予期せぬ事故や不具合が発生して電力会社が変電所からの送電を遮断しなければならなくなると、同じ送電系統網の需要家への電力供給がストップしてしまう恐れがある。それを防ぐため、万一の場合に我孫子事業場と電力会社を結ぶ電路を直ちに遮断できる環境を整備したのである。

 「その工事をするには、5日間にわたって我孫子事業場を全面的に停電させる必要がありました。製品の出荷スケジュールに影響しないよう、半年以上前から調整を重ねてようやく停電日を確保することができました」(下重)。

自己託送の実現に向け乗り越えたチャレンジ(その②:「計画値同時同量」の順守)

 この工事と並ぶ難題となったのが、「計画値同時同量制度」に対応しなければならない点である。自己託送のために送配電網に送る電力を30分毎に予測した計画を一般送配電事業者に事前に提出することが求められ、計画と実績に不足のインバランス(差分)が発生した場合は、インバランス料金の支払いが必要になる。そのため、送配電網に送る電力を的確に予測し、できるだけインバランスを発生させない運用システムを構築する必要があった。その開発を担ったのが、国内スマートシティシステム統括部の石井 幹晴だ。

 石井の所属する部門では、事業家の電力需要を制御する技術を開発し、電力市場取引での実証事業などを行っている。また、2016年から経済産業省のリソースアグリゲーション実証事業に参画し、太陽光発電設備や蓄電システムなどの分散するエネルギーリソースを束ねる制御技術や需要予測をするAI(人工知能)などの研究開発も進めてきた。

NEC
国内スマートシティシステム統括部
GXサービス事業開発グループ
自己託送サービス開発チーム 主任
石井 幹晴

 それらの事業を通じて培われた幅広い知見は「NEC Energy Resource Aggregation クラウドサービス(以下、RAクラウドサービス)」として、お客様が太陽光発電や蓄電システムなどの分散するエネルギーリソースをICTで統合制御するシステムに結実している。

 「そのRAクラウドサービスで使われている仕組みを土台に、当社が独自開発したAIを用いて、発電量と消費量の予測精度や需給の調整能力を段階的に高めていきました。まずは第一ステップで実績データに基づく予測を実施。続く第二ステップで気象データなどを加味した太陽光発電量を予測できるようにし、第三ステップで蓄電池を活用したインバランス回避を行えるようになりました」(石井)。

 我孫子事業場で実証実験を繰り返した結果、ようやく自己託送向けの運用システムが実用レベルに到達したわけだ。

操作しやすい運用システムも開発

 RAクラウドサービスをベースとした自己託送システムの開発に際しては、UI(ユーザーインターフェース)の大幅な改良も図られた。脱炭素への意識の高まりにつれて自己託送が活発に行われるようになることを視野に入れ、将来、企業や自治体などの電力需要家がシステムのお客様となることを想定したのである。

 「電力市場取引におけるRAクラウドサービスはある程度専門知識を持つ人が利用する想定ですが、今回想定するお客様はそうはいきません。どんなUIを搭載するべきかを一から検証し、使い勝手の良さを追求しました」(石井)。

 こうして設計された運用システムは、「発電量予測」や「消費量予測」から「託送計画作成」、「インバランス監視」や「リソース制御」に至るまで、経験の浅いユーザーでも各機能を簡単に使えるよう配慮された。そこには、東京本社への自己託送開始後にシステムの運用にあたるNECファシリティーズによる意見も反映されている。

NEC Energy Resource Aggregation クラウドサービス概要図
RAクラウドサービスに追加された「自己託送向けサービス」は、発電量の予測から託送計画の作成、実需給監視やリソース制御まで、操作性に富むインターフェースで合理的な運用を支援

 「自分たちだけではなく、専門知識のないお客様がオペレーションをすることも念頭に置き、こんな機能があるべきといったリクエストを多数出しました。実運用を開始してから得られる気づきも多いはずなので、システム開発チームへのフィードバックを継続してさらなる改良に寄与するつもりです」(下重)。

 下重はそう語る一方で、「AIの能力が飛躍的に高まり、発電量や消費量をかなり精緻に予測できるようになりました。また、『インバランス監視画面』なども見やすく、オペレーションの負担が非常に少ないシステムになっていると思います」と、運用システムの性能と操作性を高く評価する。

 臼井が感じているのは、自己託送の実施に向けたプロジェクトチームが、部門やNECグループ内の会社の枠を超えて一体となり、それぞれの持つ力が十分に発揮されたことだ。臼井と下重も「この『連携力』こそがNECグループの強みです」と強調する。

脱炭素への取り組みは企業価値の向上にもつながる

 このようなプロセスを経て、東京本社への自己託送はいよいよ2024年2月に実運用が開始された。当面は本社ビルの消費電力の10%相当を託送できるようにするが、ソーラーパネルのさらなる増設を検討しており、最終的には20%ほどまでに高めることを目標としている。今後はNECグループ関連会社にノウハウを横展開し、NECグループ全体としての取り組みも推進する構えだ。

自己託送 概要(NEC 我孫子事業場~本社)
我孫子事業場の太陽光発電設備で発電された電力のうち、使い切れない余剰分を電力会社の送配電網を経てNEC本社ビルに供給

 「自己託送は消費電力の再エネ比率を高めて脱炭素に貢献すると同時に、発電事業者から調達するグリーン電力が減ることなどによる費用効果も見込まれます。また、ESG投資家からの評価が変わり、企業価値を向上させることにもつながるはずです」(臼井)。

 これらのメリットを広く企業や自治体に享受してもらうべく、RAクラウドサービスに「自己託送支援メニュー」が追加された。このサービスを利用すれば太陽光発電設備を持つ利用者が自分たちで専用のシステムを構築することなく、スムーズに自己託送を始めることが可能だ。「太陽光発電による再エネの利用は脱炭素のための他の手段と比べて敷居が低いこともあり、多くのお客様が強い関心を示されています」と石井は話す。

 臼井と下重が思い描くのは、RAクラウドサービスの「自己託送支援メニュー」だけではなく、将来的にソーラーパネルの設置から自己託送まで一気通貫のサービスを提供できるようにすることだ。そのために、先進的な技術を持つ多様なパートナーと協働したいという。

 カーボンニュートラルは、社会全体が一丸となって向き合わなければ実現しないテーマだ。デジタルテクノロジーを活かした豊富な脱炭素ソリューションを開発してきたNECは、自己託送という新たな手段の提供によってその取り組みを加速させようとしている。

NEC 我孫子事業場~本社間自己託送プロジェクトメンバー
NEC 我孫子事業場~本社間自己託送プロジェクトメンバー

自己託送により削減される電力量・CO2排出量の試算イメージ

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【広報発表】NEC、我孫子事業場から本社ビルに太陽光発電による再生可能エネルギーの自己託送を開始
~発電量と電力消費量の高精度な予測を可能とする独自AIを活用~

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