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2016年05月30日

地方創生現場を徹底取材「IT風土記」

佐賀発、職人芸継ぐ「デジタル技術」、 有田焼の逆襲はじまる

型なしの陶磁器も

 有田焼の産地の進化は、さらなる先を見据えている。センターは「型を作らずに、3Dプリンターで直接、陶磁器を造形する技術」の開発に踏み出した。コンピューターに入力したデータ通りに陶磁器原料の陶石の粉末と接着剤を吹き付け、等高線状に固めて生地をつくり、通常の有田焼と同様に1300度で焼成すれば完成だ。

 従来の手作業では難しかった鎖状などの複雑な形が量産できるほか、工程が大幅に短縮するので製造コストも抑えられる。さらに3Dデータさえ制作すれば、製品データをインターネット上でやりとりできるので、海外など遠方のデザイナーやバイヤーとのコミュニケーションも容易になるという副産物も得られた。

 寸法の精度や強度の向上が今後の課題だが日本初の画期的な技術で、今年の有田焼創業400年を機に販路拡大をめざす「ARITA EPISODE2」の17プロジェクトのひとつにも入った。関係者は「技術が普及すれば多様な商品を提案できるし、潜在需要を掘り起こして国内外の市場の裾野を広げることもできる」と期待を膨らませる。

 デジタルデザインを中心に製作した新しい有田焼は、今年4月にイタリアのミラノで開催された国際見本市「ミラノサローネ」に360点が出展され、高い評価を得た。職人の手業をICT(情報通信技術)で受け継いでいく取り組みは着々と地歩を固めている。有田の逆襲はこれからが本番だ。

※陶磁器3Dダイレクトプリ ントアウト技術による試作品
今まで手作業では難しかった、鎖状などの複雑な形を作り出すことが実現出来た。

* 陶磁器デジタルデザイン技術
3Dデジタル技術を陶磁器のデザインから製造に至るプロセスに応用する技術の総称。出力する機械として下記が挙げられる。

* 3Dプリンター
3Dデータから実際の立体を出力する装置。
2015年3月末に陶磁器粉末で成形し、焼成すれば陶磁器が得られる「陶磁器3Dダイレクトプリントアウト技術(C3DPO)」を発表、実用化に向けて研究開発を継続中。

* NC切削機(モデリングマシン)
当センターでは陶磁器の生産に使う石膏型をNC切削機で自動的に削り出す技術を2003年から研究開発し、2013年に佐賀県陶磁器工業協同組合にも導入。手作業を凌ぐ精密な加工が可能。既に商品化されたものも多数あり。

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