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2016年06月29日

地方創生現場を徹底取材「IT風土記」

和歌山発、始動した「ふるさとテレワーク」、白浜プロジェクトの成果と課題

生活直結サービスの提供も

 ふるさとテレワークの効果検証では成果を上げた白浜プロジェクトだが、テレワークの実証にはもうひとつのミッションがある。防災、医療、教育、行政手続きなど移住者に対する生活直結サービスの提供だ。

 地方移住の障害には「家族の同意が得られない」ことも大きい。都会と違って周囲に大きな病院や学校があるわけではないので、子供の教育を考えると二の足を踏むケースが少なくない。「家族も便利に生活できるように保育や塾などの子育て支援や健康予防の医療サービスなどを提供できないか。買い物支援や災害発生時の避難所など防災情報も必要だ」と、前述の総務省の今川課長は話す。

生活直結サービスを提供する「白浜リンク」の画面

 それに応えるのが現在セールスフォース・ドットコムが開発中の携帯アプリ「白浜リンク」だ。(1)保育園などの子育て支援(2)観光(3)防災(4)ボランティアなどのマッチングの4項目について移住者だけでなく、白浜町の住人や観光客にも使ってもらえる情報を提供しようと開発は大詰めを迎えており、7月には稼働予定という。

 ふるさとテレワークについて総務省の今川課長は「人や企業、仕事を都会から地方に呼び込むことは地域経済にも効果的です。昨年度は実証事業だったのですが、今年度から補助金事業を実施します。いずれは全国の都道府県にサテライトオフィスをつくりたい」と意気込む。

和歌山県企画部情報政策課の田中一也課長

 和歌山県企画部情報政策課の田中一也課長は「今後の課題は定着です。生活することで個人が移住のメリットを感じられるのはもちろんだが、移住したことで企業価値も上がらなければ、国がお金を出す期間だけで終ってしまう。企業としてもメリットがあるようにもっていかなくては」とみる。

 白浜オフィスの吉野さんは「人数も10人と多いし、オフィスの環境整備など設備投資もしているので、採算はまだとれていない。企業実績としてはこれからです」と表情を引き締める。動き出したふるさとテレワークの定着はこれからが本番だ。

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