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2019年01月23日

すでに見えつつある“空飛ぶクルマ”のビジネスモデル。グローバルの最新事情とは

 ユニークな飛行方法や流麗なデザインで多くの人々の関心を集める「空飛ぶクルマ」。しかし、その今後を占ううえでは、機体にばかり目を向けていてはいけない。既にアメリカでは、空飛ぶクルマを事業として成立させるためのビジネスモデル作りが着々と進められている。日本でも、こうした潮流に遅れを取らないようにすることが肝心だ。空飛ぶクルマと都市型航空交通システム(UAM)の現状はどうなっているのか。その実情を探る。

もはや夢物語ではない空飛ぶクルマの実用化

 「空飛ぶクルマ」の実現を目指す動きが、世界中の国々で進んでいる。学術団体AHS Internationalの報告によれば、100社以上がコンセプトを発表。独のボロコプターや米のコーラようにパイロットによる試験飛行に入っているものもある。

 「空飛ぶクルマなんて、遠い未来や趣味の世界の話。もしそのように考えていたら大間違いです。すでにアメリカは本気で空飛ぶクルマの実用化を進めていますし、中国なども追随してくることでしょう。こうした動きが急速に進んでいるのも、現状の技術課題を解決し産業化することが可能との目算が立っているからです」と米アエリアル・イノベーションの小池 良次氏は指摘する。

米アエリアル・イノベーション
CEO
小池 良次氏

 ここでいう空飛ぶクルマとは、電動モーターを主動力とする垂直離着陸機、いわゆる「eVTOL」だ。実際にはクルマではなく、航空機の開発を指す。小池氏はその概要や特徴を次のように語る。

 「まず飛行時間については、現在のリチウムバッテリーのみを使用するもので平均30分。着陸できず戻ってくるケースも考えると、実質約15分というところでしょう。また、飛行高度は小型ドローンと干渉しない150m以上の空域で、ヘリコプターやグライダーなどと同じ高さを飛ぶことになります」(小池氏)

 小型飛行機やヘリコプターではエンジンの騒音が大きな問題になるが、eVTOLは電動であるためこの点の懸念は少ない。「ただし、街中での離発着には騒音を気遣う必要もあるため、ビルの屋上などをスカイポート(離発着所)として使用することになります」と小池氏は続ける。機体の定員は、娯楽用/自家用で1~2名、エアタクシーなどの商業用で5名程度を想定。無人運転や遠隔操縦も技術的には可能だが、規制や許認可の問題から実現は10年後と予想される。

 さらに、自家用車やバスと最も違うのが飛行速度で、娯楽用/自家用で150km/h、商業用は200~300km/hの高速移動が可能である。現在のバッテリー性能では、まだ30分程度しか飛べないが、それでも商業用なら100~150kmもの距離を移動できるのだ。そう考えると、ビジネスでの利用も俄然現実味を帯びてくる。

空飛ぶクルマのサービス化を目指すUber

 空飛ぶクルマの具体的な用途としては、(1)都市部の渋滞を緩和するための「大量輸送」、(2)利用率の低いローカル鉄道や過疎地の道路などを代替する「少量輸送」、(3)離島などへの「超少量輸送」の3分野が考えられる。

 「ここで注意したいポイントは、空飛ぶクルマは決して自動車を置き換えるものではないということです。自動車は交通分野における王様であり、空飛ぶクルマの時代がやってきてもそう簡単にはなくなりません。とはいえ自動車も万能ではありませんから、そこで足りない部分を解決することが空飛ぶクルマの役割になります」と小池氏は話す。

 ライドシェアの世界的大手であるUber Technologiesが提唱する「Uber Elevate構想」も、まさにこうした考えに沿ったものだ。例えば、東京都心に本社、千葉県に研究所を置く企業があったとしよう。本社から研究所まですべて自動車で移動すると、それだけで半日潰れてしまう。しかし、東京湾上の移動にはeVTOLを、本社~スカイポート、スカイポート~研究所への移動にはシェアードモビリティを利用すれば、相当な時間短縮が見込める。同社では、このように異なる移動手段を一つの手配決済アプリで組み合わせることで、ユーザの利便性を大きく高めるサービスを実現しようとしているのだ。

eVTOLのビジネスイメージ(出典:アエリアル・イノベーション) ヘリコプターやグライダーと同じ高度150~450mの空域を利用して、2地点間を高速に移動する「eVTOL」。都市部におけるエアタクシー事業などへの利用が有望視されている
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 「この取り組みでユニークなのが、Uber自身は機体も所有せず、運航サービスやスカイポートの所有も行わないという点です。彼らが目指しているのは、あくまでも『空と陸を結ぶシェアード・モビリティ・サービス』を提供する事業者です。なぜなら、それが一番儲かると考えているからです」と小池氏は話す。

 実際に現在のライドシェアサービスでも、Uberは自社で自動車やドライバーを抱えているわけではない。乗りたい人と乗せたい人をマッチングするための情報・決済サービスのみを提供することで、世界的企業へと一気に駆け上がったのだ。同社では、この陸で成功した事業戦略をさらに空へと広げようとしているのである。

日本も巨大マーケットへの参入を急げ

 この「空飛ぶタクシー」構想は、「uberAIR」の名称で事業化に向けた研究開発が着々と進められている。同社はNASA(米連邦航空宇宙局)とも機体開発で提携し、クルマ共有サービスの情報を元に需要予測を実施、効率的なスカイポートの配置先を検討している。これまでに米国のダラス市、ロサンゼルス市が試験開業都市として発表されている。同社は2023年を目指し、この両市の上空に東京の地下鉄のようなeVTOL公共交通網を張り巡らそうとしている。

 「uberAIRは時間をお金で買うビジネスモデル。例えば、ロサンゼルス市内から空港へ移動する場合の時間/コストは、ライドシェアのuberXなら1時間9分で60ドル、uberAIRなら29分で90ドルと試算されます。米国では、エクストラコスト(追加費用)を払ってでも優先的に移動したいという人も多いので、十分な競争力があると考えられます」と小池氏は話す。

 もちろん、本格的な事業化に向けては、まだまだ多くの課題も出てくるだろう。しかし、ここで考えなくてはならないのは、既にアメリカでは政府機関も巻き込んだ取り組みが具体的に進んでいるということだ。まだまだ先の話と鷹揚に構えていたのでは、大きな遅れを取ることにもなりかねない。「空飛ぶクルマは、巨大なマーケットを生み出す可能性が非常に高い。アメリカではその覇権を握るべく、機体開発にも総力戦で取り組んでいます。こうした市場には、少しでも早く参入することが重要なので、日本でも一刻も早い取り組みが求められます」と強調する小池氏。その言葉を深く肝に銘じる必要がありそうだ。

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