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10万人超が集う「ジャンプフェスタ」を、より公平で安心な体験へ
~NEC顔認証が支える新しいイベント運営のかたち~

 毎年12月に幕張メッセで開催される「ジャンプフェスタ」。集英社の「週刊少年ジャンプ」など5誌が集結し、10万人超の規模で行われる漫画IPの祭典である。イベント運営はコロナ禍をきっかけに、これまで以上に「安心」「公平」「快適さ」が求められるようになった。特に、応募から当日の入場、物販エリアでの購入に至るまで、来場者一人ひとりがスムーズに楽しめる環境づくりは欠かせない要素となっている。こうした背景の中、昨年は初めてNECの顔認証システムが導入された。それでは、顔認証は実際のイベント運営にどのような価値をもたらしたのか。「ジャンプフェスタ」の全体統括を務める集英社の濱岡 諭史氏に、その狙いと手応えを聞いた。

多様な来場者の増加により、体験向上に向けた新たな工夫が必要に

 国内トップの発行部数を誇る、集英社の「週刊少年ジャンプ」。1968年の創刊以来、『ONE PIECE』『僕のヒーローアカデミア』『鬼滅の刃』『呪術廻戦』などのメガヒット作を次々に生み出し、日本の漫画界をけん引してきた。

 近年は作品のアニメ化やゲーム化、映画化などメディア展開も広がり、「ジャンプ」発のコンテンツは世界中にファンを持つ。漫画やアニメをきっかけに日本文化に関心を持つ海外ファンも増えており、「ジャンプ」作品は日本のポップカルチャーを代表するブランドの1つとなっている。

 その発行元である集英社は、1999年にジャンプフェスタをスタート。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年にオンライン開催に切り替えたが、翌2021年には完全招待制でオフラインのイベントを復活。これを機に、情報アプリ「ジャンプNAVI」を通じて事前に応募・抽選を行う招待制での開催が定着し、2025年12月には27回目となる「ジャンプフェスタ2026」が開催された。

 会期中は、イベント限定グッズの販売や、原画・サイン色紙の展示、作品ごとのステージコンテンツなど、多彩な催しが行われる。また、最新作の情報発表やアニメ特別映像の公開など、ファン垂涎の企画も目白押し。作品の世界観をリアルに体感できる貴重な機会となっている。

 回を重ねるごとに規模を拡大し、今では年末を代表する一大エンターテインメントイベントに成長したが、近年は漫画・アニメの世界的ブームを背景に、新たに配慮すべきポイントも顕在化してきた、と運営を統括する集英社 宣伝部の濱岡 諭史氏は語る。

株式会社集英社
宣伝部雑誌宣伝課 係長
濱岡 諭史氏

公平な入場と購入体験を守るための新たな対策が求められる場面も

 「今年で28回目を迎える『ジャンプフェスタ』は、「安全に親子でも楽しめる年末の日本最大エンターテインメントイベント」を目標に毎年開催内容を検討しています。ここ10年間で、日本の漫画は世界的に注目されるようになりました。その熱量の高まりに伴い、公平性を保つための配慮が必要な場面も増えてきています。近年特に対応を苦慮しているのが、イベントで販売されるグッズの転売を目的とした行為です。例えば、商品を大量に買い占めるため割り込みや成りすましをする、会場内を走り込む、といった問題行動がそれに当たります。来場者の皆さんにより安心して楽しんでいただくためには、これを改善していくべきだと感じていました」。

 そこで、招待制への移行に伴い、スマートフォンを用いた多要素認証を導入。それでも上述の問題行動は散見され、さらなる対策の強化は急務だった。なかでも工夫が必要となったのが、本人確認作業の複雑化だった。

 「ジャンプフェスタに応募できるのは日本国内の居住者のみですが、最近は外国人の方の来場者も増え、本人確認が簡単にいかないケースが増えています。仮に外国籍のパスポートを持参されたとしても、日本では本人確認書類として認められていないため、入場を許可できません。『この書類では本人確認ができないので入場できません』といったやりとりが発生し、スムーズにご案内が難しい場面も生じていました」。

 どうすれば、これらの問題を解決できるのか――チームで検討を進める中で、有力な対策として浮上したのが「顔認証」だった。「顔認証なら、来場された方が、事前に入場を許可された方と同一人物であるかどうかが瞬時に判定できる。そうした運営上のメリットも考慮して、顔認証の導入を検討することになりました」。

NECの顔認証なら数万人規模のイベントにも対応できる

 大規模イベントにおいて、来場者の本人確認は運営上の重要な課題だ。とりわけ近年はチケットの不正転売やなりすまし入場といった問題が各種イベントで指摘されており、主催者にはより厳格な本人確認が求められている。一方で、確認作業が煩雑になれば来場者の待ち時間が増え、イベント体験そのものの満足度を損なう恐れもある。

 そのため、セキュリティの強化とスムーズな入場の両立は、多くのイベント主催者にとって大きなテーマとなっている。「ジャンプフェスタ」における顔認証導入の検討も、こうした背景の中で進められた取り組みの1つだった。

 だが、何万人もの来場者の顔を瞬時に識別し、短時間で入場させるためには、きわめて高度な精度とスピードが求められる。果たして顔認証でそれが可能なのか、現実には難しいのではないか――当初はそんな疑念がぬぐえなかった、と濱岡氏は言う。

 「ジャンプフェスタ」に求められる高度な要件を満たすためには、世界トップレベルの品質を持つ顔認証技術が必要となる。そこで白羽の矢が立てられたのが、NECの顔認証だった。

 NECの顔認証技術は、米国国立標準技術研究所(NIST)※が実施する顔認証技術のベンチマークテストで、世界トップクラスの精度を持つことが実証されている。国内外の空港や公共施設、テーマパークなどで導入が進み、近年はイベント運営の分野でも注目を集めている。

  • NIST:National Institute of Standards and Technology(米国国立標準技術研究所)の略。技術革新や産業競争力を強化するために設立

 運営チームに名を連ねる大手イベント運営会社からの推薦もあって、集英社の会議室で実機によるデモが行われた。マスクやメガネをした状態でも、顔を認証できるのか。メイクして漫画のキャラクターに変身したコスプレイヤーでも、本人確認はできるのか。約20人の社員がさまざまな角度から検証を重ねた結果、最終的に「これならいける」という感触をつかむことができた。

 「コスト面も気になるポイントの1つでしたが、iOS端末用アプリを含むNECの既存SaaSが使えるので、費用はSaaS利用料と端末代だけで済む。それも採用の決め手となりました」と濱岡氏は振り返る。

再入場時と一部サービス利用時に顔認証を実装

 こうして、NECの顔認証が正式に採用され、2025年12月の「ジャンプフェスタ2026」に向けて着々と準備が進められた。NECのSEがサポートを行い、全体のフロー設計やアプリとのAPI連携方法などについて検討を重ねた。

 全体の流れはおおよそ次の通りだ。「ジャンプフェスタ」への参加希望者は、まず「ジャンプNAVIアプリ」で顔写真を登録し、事前応募。このうち当選者のみに入場チケットを取得する権利を与えられ、アプリと連携したNECのクラウドサービスに顔情報が登録される。

 イベント当日、来場者はアプリ上で入場チケットを提示。再入場する時や会場内サービスの利用時に、タブレット上で顔認証による本人確認を行い、なりすましによる不正入場やチケットの不正転売、転売目的でのグッズ買い占めなどを防ぐ。

 システム導入にあたっては、NECが認証精度の設定や画像アップロード時の注意点などを共有し、実運用を見据えたサポートを提供。実機を使ってシミュレーションを繰り返し、満を持して本番に臨んだ。

 「事前準備と充実したサポートのおかげで、本番では安心して顔認証を運用できました」と濱岡氏。「イベント会場ではネットワーク回線が不安定になりがちですが、今回は大きな通信トラブルもなく、スムーズな運営ができました」と満足感を示す。

「親子でも安心して楽しめるイベント」を目指したい

 NECの顔認証を導入したことは、「ジャンプフェスタ」の運営に何をもたらしたのか。「まず、顔認証による本人確認が不正行為に対する抑止力となり、来場者へのご説明も明確かつスムーズになりました。ノンバーバルで明確に入場可否を伝えられるので、現場のスタッフにとっても精神的な負担はかなり軽減されたと思っています」。

「ジャンプフェスタ」での顔認証の様子。今回は再入場と一部サービス利用時に、顔認証による本人確認が行われた

 また、JF公式ショップでも顔認証でグッズ購入チケット(JF公式ショップで商品を購入するためには、事前に応募できる抽選制のチケットを取得する必要がある)の有無をチェックできるため、転売目的と見られる不適切な行為を抑止できるようになった。それは、来場したファンにとっても大きな安心材料となったのではないか、と濱岡氏は語る。

 「イベント限定グッズは数が限られているので、SNS上で転売情報が散見されると、来場者は『本当に自分はグッズを買えるのだろうか』と心配される方もいらっしゃいます。今回、物販にも顔認証を導入したことで、『不正購入に対する対策がしっかり取られている』と肌で感じていただけたのではないかと思っています。その意味では、安心・安全なイベント環境をつくることができたと感じています」。

 その効果は、イベントの満足度調査からも見て取ることができる。「ジャンプフェスタは例年、満足度が非常に高いのですが、本年度は、約94%の方から『とても楽しかった』『まあまあ楽しかった』とご回答いただきました。顔認証など新たな試みの導入は、来場者がストレスを感じる原因にもなり得るのですが、調査結果を見る限り、その懸念は杞憂だったかな、と思っています」。

 今回、顔認証を導入したことで、「ジャンプフェスタ」は「親子でも安全に楽しめるエンターテインメント」という目標に大きく一歩近づいた。今後、同社はイベントで顔認証をどう活用していくのか。濱岡氏は、最後にこう抱負を述べた。

 「ジャンプフェスタも今は招待制となりましたが、過去には自由来場の時代が長かった。本当に大変な時代でした。熱量を持つ空間を安全に提供する。安全な場所提供は前提条件、その上で公平なイベント体験まで提供できれば、肯定的な評判が広まり、イベント来場を希望するお客様も増え、より多くのお客様に楽しんでいただけると信じてやってきました。引き続きソフトの部分だけでなく、仕組みやインフラの設計といったハード面にも磨きをかけ、親子でも安心して楽しめるイベントにしていきたいと思います。今、ファンの方々が何を求めているのか――それを考えながら、未来に向けてジャンプフェスタをしっかり運営していきたい。今回の顔認証導入が、その新たな一歩になったと考えています」。