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2022年11月15日

顔認証決済で変わる!海陽学園/Osaka Metroに見る新しいユーザ体験

 NECは世界トップレベルの精度を誇る顔認証技術を活用し、決済サービスを提供している。これは、利用者が事前に顔情報とクレジットカード等の利用者情報を登録しておき、店頭での会計時にタブレットで顔認証を行うことにより、登録したクレジットカード等で決済が出来るというものである。安全性と利便性を兼ね備えた「手ぶら決済」を実現する。このサービスは、どのようなシーンで利用され、利用者にどのようなメリットをもたらすのか。今回は、海陽学園とOsaka Metroの導入事例を紹介したい。

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顔認証の活用により「手ぶら決済」が可能に

 スマートフォンのロック解除をはじめ、オフィスの入退出管理、イベント会場の本人確認など、今や多くの施設やサービスに導入されている顔認証。最近では、「決済サービス」への活用の期待も高まっている。

 顔認証決済サービスには、大きく3つ特長がある。1つ目は、店舗などでの「手ぶら決済」が可能になる点だ。近年、クレジットカードやICカード、電子マネーといったキャッシュレス決済の普及が進んでいるが、顔認証決済はタブレットに「顔をかざす」という、極めてシンプルな方法で支払いを済ますことができる。

 2つ目は、レジでの会計時に生体認証を行うため、極めて安心・安全な決済ができる点だ。なりすましや不正利用を抑止できるだけでなく、現金やカードの受け渡しが発生しないため、衛生面でも安心・安全な決済方法といえるだろう。

 3つ目は、導入のしやすさだ。NECでは2022年7月に、個別のシステム構築に加えて、パッケージ化により導入の容易性を高めた顔認証決済サービスの提供もスタート。短期間での導入と、コスト低減につながる料金体系を実現した。

顔認証決済サービスの特長
NEC顔認証決済サービスの3つの特長。安心・簡単・便利な手ぶら決済を実現し、これまでにない感動体験を利用者に提供することができる
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 こうした3つの特長によって、事業者/利用者はさまざまなメリットが得られる。「安心・簡単・便利な手ぶら決済をご導入いただくことで、事業者の皆様は、顧客満足度の向上やリピート促進を実現することができます。また、利用者の皆様は、小さなお子様や手荷物を抱えたまま会計を済ませられますし、財布やスマートフォンを持ち歩く必要がないので、紛失・盗難の心配もなくなります。加えて、マスクもしたままで顔認証ができるので、レジ会計のたびにマスクをはずす必要もありません」とNECの浜口 小百合は説明する。

NEC
デジタルファイナンス統括部主任
浜口 小百合

 使い方も簡単だ。事前に氏名とメールアドレス、パスワード、クレジットカードなどの基本情報と顔情報を登録。あとは、店頭レジに設置した専用タブレットに顔をかざすだけで、顔認証決済が完了する。主なユースケースとして小売店、オフィス、学校、テーマパーク、百貨店など、幅広い業種業態を想定している。今回は、その中から2つの事例を紹介したい。

図書の貸し出しから受験時の本人確認まで

 1つ目は、教育現場への初の導入事例である海陽学園だ。同校は、愛知県蒲郡市にある全寮制の私立男子中高一貫校。「日本の将来を担う人材の育成が最重要課題である」との認識のもと、トヨタ自動車株式会社、東海旅客鉄道株式会社、中部電力株式会社など80社以上の企業が賛同し、2006年に設立された。

 次世代のリーダー育成という教育理念を実現するためにも、同校は、かねてから生徒に「最先端の技術に触れる機会を提供したい」との思いを抱いていた。また、生徒たちは専用のプリペイドカードを使って、校内で必要なものを購入していたが、カードの紛失・破損が多発し、カード自体や機器も老朽化。独自開発したキャッシュレス決済システムの運用費・維持費の負担も増える一方だったという。

 こうした課題の解決に向けて採用したのが、NECの顔認証決済サービスだ。その理由を、海陽学園の川村 裕和氏はこう語る。

 「まずは、顔の認証精度が高いこと。NECの顔認証研究の実績や、NIST(米国国立標準技術研究所)のベンチマークテストで世界No.1に輝いたことも知っていたので、顔認証決済という新しいサービスにも安心して踏み込むことができました。先行して導入していた顔認証決済の自動販売機が非常に使いやすく、スムーズに運用できていたので、売店でも問題なく使えると判断しました」

学校法人海陽学園
海陽中等教育学校 マネージャー
川村 裕和氏

 同校では、顔認証決済のタブレットを、校内の売店のレジ前に設置。顔認証決済の導入にあたっては、導入目的と用途を生徒・保護者に説明して理解を求め、利用には保護者の同意を必須とした。決済情報の登録手続きは、夏休みに保護者と一緒に行い、生徒が商品を購入したときは、保護者のメールアドレス宛にリアルタイムに通知される仕組みにした。

顔認証決済の利用シーン(海陽学園)
海陽学園の売店レジ横に、顔認証決済を行うiPadを設置。顔認証決済の利用は保護者の同意のもとで行われ、購入情報もリアルタイムで保護者にメールで通知される
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 導入後、生徒や教職員からは、喜びと感嘆の声が寄せられたという。
 「売店にプリペイドカードを忘れても、寮に取りに帰らなくてもいいからすごく便利!」「すごい!ハイテクだ」「早く登録して流行についていきたい!」――。生徒たちは「顔をかざすだけで買い物ができる」という新しい体験に興味津々で、最先端の技術に触れることが良い刺激になっているという。

 「生徒たちにとっては、先端技術を体験できますし、プリペイドカードやスマートフォンを使わなくとも、手ぶらで決済できる。それに、マスク着用のまま決済ができるので、非常に衛生的です。また保護者にとっても、子どもが買い物をするたびに購入情報がメールで配信されるので安心ですし、顔認証決済の利用をきっかけに、生徒と保護者のコミュニケーションが生まれることも高評価につながっているようです」(川村氏)。

 顔認証決済の導入は、学校側にもさまざまなメリットがあった。iPadが1台あれば決済できるため導入費用を抑えられたほか、決済サービスの運用費・維持費の負担軽減、プリペイドカード紛失のトラブル回避などはその一例だ。

 「今後は、顔認証サービスの活用を、さまざまな領域に広げていきたい。例えば、受験時の本人認証や、食堂での決済や図書の貸し出し、PC教室やトレーニングルーム入室時の出欠確認にも利用できると思います。また、寮への入退館や点呼、卒業後はOBネットワークへのログインなど、さまざまな形で活用を検討しています」と川村氏は期待を込める。

「マスク対応顔認証決済」で新たな顧客体験を創出

 2つ目の事例は、関西の交通機関としては国内初の導入となったOsaka Metroだ。

 Osaka Metroの前身にあたる、大阪市交通局が市電(公営路面電車)の営業を開始したのは1903年のこと。1933年には大阪市営地下鉄を開業し、地域の交通インフラを支えてきた。その後、大阪市交通局の民営化にともない、2018年にOsaka Metroが発足。現在は「交通を核にした生活まちづくり企業」を目指して、駅ナカや地下街、都市開発、MaaSなどさまざまなプロジェクトを展開している。

 2022年4月、同社は駅ナカの新規事業として、初の直営ポップアップ型販売店舗「Metro Opus(メトロオーパス)」をオープン。週替わりでスイーツやグッズのブランドが入れ替わる期間限定ショップとして、現在は梅田駅となんば駅で2店舗を展開中だ。これに合わせ、2023年3月末までの1年間、「マスク対応顔認証決済」の実証実験を行うことにした。

顔認証決済の利用シーン(Osaka Metro)
Osaka Metroでは、初の直営店舗となる「Metro Opus」の梅田店・なんば店に顔認証決済を導入。今年4月から来年3月末までの1年間、実証実験を行っている
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 今回、同社が顔認証決済を採用した理由は主に3点ある。1点目は、「新たな顧客体験の創出」だ。「初めて直営店舗を立ち上げるにあたって、買い物だけではないプラスアルファが欲しい。新たな顧客体験を提供できて、かつ短期間で実現できるものは何か。ディスカッションを重ねる中で、アイデアとして固まったのが『顔認証決済』でした」とOsaka Metroで駅ナカ事業を担当する小池 唯氏は振り返る。

大阪市高速電気軌道株式会社(Osaka Metro) 
マーケティング事業本部 リテール事業部 リテール事業課係長
小池 唯氏

 2点目が「次世代サービスの検証」だ。元々、駅ナカ店舗はキャッシュレス決済の比率が非常に高いが、直営店舗では新たな決済のバリエーションを作りたいと考えていたという。「その点、顔認証決済なら、コロナ禍でも、マスクを着けたまま完全非接触で決済ができる。その点に大きな可能性を感じました」(小池氏)

 3点目の理由が、「顔認証改札」だ。Osaka Metroは2019年12月から、顔をかざすだけで電車に乗れる「顔認証改札」の実証実験を行っており、「2025年3月末までに全駅設置」という目標を掲げている。店舗と改札とは別システムだが、将来の顔認証改札の全駅設置を見据え、駅ナカ店舗のオペレーション面の検証を行うため、顔認証決済を導入することになったわけだ。

 それでは、同社はなぜNECのシステムを採用したのか。その理由を、小池氏はこう説明する。

 「1つ目は、高精度・安心です。我々は交通事業者として、個人情報やセキュリティには細心の注意を払っています。この分野におけるNECの実績と評価には定評があり、安心してお任せできると考えました。

 2つ目は、NECとのリレーションです。当社は元々、NECとはお付き合いがあり、Metro Opusの立ち上げにあたっては、企画段階から相談に乗ってもらいました。顔認証決済のアイデアも、NECとの議論の中で出てきたもの。NECをパートナーに選んでよかったと感じています。3つ目は、マスク対応です。お客様はほぼ100%マスクを着用されているので、“マスクをつけたまま、高精度でスムーズな認証が行える”ことがマストの要件でした。この点についても、導入前に何度か試して誤認証がないことを確認したので、NECのシステムなら安心して使えると考えたのです」

 とはいうものの、顔認証決済を導入することに、社内で異論がなかったわけではない。当初、社内では「面白いね」という反応も多かったが、「個人情報やセキュリティは大丈夫か」という不安の声もあった。このため、社内のICT部門や個人情報を管理する部門と協議を重ね、規約の整備も含めて入念に準備を進めたという。

顔認証改札の全駅導入を見据え、駅ナカでノウハウ蓄積

 2022年4月、Metro Opus開業と同時に顔認証決済を導入。すでに数多くのメリットを実感しているという。

 「まず、『完全非接触での決済』の実現が挙げられます。現金やカードの受け渡しがなく、衛生的な完全非接触が実現したことは、コロナ禍にあっては大きなメリット。マスクをずらさなくても顔認証ができるので、決済も思った以上にスムーズです」と小池氏は満足感を示す。

 次に「会計時間の短縮」も見逃せないポイントだ。駅ナカ店舗では、ラッシュ時に顧客が集中するので、レジをいかに回転よくさばくかが重要となる。今回、顔認証を導入したことで、会計時間を短縮することができたという。

 さらに、副次的なメリットとして「ニュースバリュー」もあった。Metro Opusのオープンにあたり、同社はプレスリリースを発表し、メディア内覧会を実施。「マスク対応顔認証決済」は新聞やテレビでも大々的に取り上げられ、宣伝効果という点でも大きな反響を得られたという。

 利用顧客には、おおむね好評だ。「お客様は、『顔で買い物できるのが不思議な感覚』『想像以上に簡単だね』と、好意的な反応をいただきました。ただ、顔認証決済のインパクトが強すぎたせいか、『Metro Opusでは顔認証決済しか使えない』と勘違いされる方もいらっしゃいました。誤解を防ぐためにも、コミュニケーションに工夫が必要と考えています」(小池氏)

 それでは、出店者側の反応はどうだったのだろうか。「出店者は全国各地でさまざまな売り場を回っている人が多く、顔認証決済を初めて体験して驚く人が多いようでした」と小池氏。「オペレーションはシンプルなので、出店前日に簡単な説明をすれば理解してもらえますが、出店者や販売員の入れ替わりが激しく、必ずしも全員に操作説明ができるとは限りません。こうしたケースにどう対応するかも課題の1つです」と小池氏は語る。

 今後、Osaka Metroは顔認証をどのように活用していくのだろうか。「当社は『交通を核にした生活まちづくり企業』を目指しています。それを実現するための1つのアイテムとして、顔認証を通じて、お客様に対するサービス向上を深化させたいと考えています。そのためにも、まずは実証実験を通じて、お客様の反応や利用率を検証しながら、顔認証決済の本格導入を検討していきたい」と小池氏は抱負を語る。

 安心・簡単・便利な手ぶら決済を実現する、顔認証決済サービス。海陽学園とOsaka Metroは、世の中の先陣を切って、いち早く導入に踏み切った。今後も利用シーンの広がりと共に、ユーザに感動体験をもたらしていくことになるだろう。

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