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既存ビジネスの価値を見直し、小さな変革を積み重ねる
「リ・インベンション」の成功のカギとは

 「リ・インベンション」という言葉を聞いたことはあるだろうか。「Re(繰り返し)」と「Invention(発明)」が合わさった言葉で「再興」「再発明」「再発見」といった意味を持つ。NECの棈木 琢己は、DXでは、このリ・インベンションを意識してほしいと訴える。「小さな変革」を積み重ねるアプローチの重要性と、日本企業がDXを成功させるための実践的な方法論について、棈木とグロービス経営大学院教授・多摩大学大学院客員教授の栗山 実氏が語り合った。

SPEAKER 話し手

栗山 実氏

株式会社アンテカニス 代表取締役
グロービス経営大学院 教授、多摩大学大学院 客員教授
VISITS Technologies株式会社 取締役・共同創業者
株式会社souco 取締役・共同創業者、 他 顧問等多数

棈木 琢己(あべき たくみ)

NEC
コンサルティングサービス事業部門
戦略・デザインコンサルティング統括部
統括部長

小さな変革を積み上げるDXのアプローチ

──棈木さんは、お客様のDXを支援する中で「リ・インベンション」という言葉を強く意識しているそうですね。

棈木:リ・インベンションは、決して新しい言葉ではなく、以前からビジネスの中でも用いられてきました。多くの企業がDXに取り組む現在、改めてこのリ・インベンションが重要だと考えるようになりました。

──どうしてでしょうか。

棈木:リ・インベンションの意味は「再発明」「再発見」などですが、DXは、これらの言葉が示すように、一過性ではなく継続的な取り組みであるべきだからです。

 変革に成功したからといって、それが永続的に通用するとは限りません。どんな技術や製品、サービスも、普及すれば、いずれ当たり前になり、お客様はさらなる価値を求めるようになります。企業は、その期待に応え、価値をアップデートし続けなければなりません。もし、その役割を競合他社に奪われたら、たちまち存在感を失います。

 さらに環境変化の激しい現在、将来の事業環境をはっきりと見据えて大きな変革に取り組むのは非常に難しいことです。またゼロを起点とする破壊的な変革は、そう頻繁かつ簡単に起こせるわけではありません。

 これらのことを考えると、DXは近い将来を見据え、既存ビジネスの価値を見直しながら、再発見や再発明による小さな変革を繰り返し、最終的に大きな変革を成し遂げるアプローチが有効と考えられます。つまり、リ・インベンションです。

栗山氏:リ・インベンションを強調する姿勢からは、DXで日本を「再興」したいという力強いメッセージも感じます。また、イノベーションという言葉は、どうしても過去に例がないような革新的な変化を想像してしまい、場合によっては、そのハードルの高さが変革を停滞させることがあります。そうではなく、自分たちの得意分野である既存ビジネスを舞台にして小さな変革を積み上げる。リ・インベンションという言葉を使うことは、「まずやってみる」という姿勢を促し、挑戦する文化の醸成につながりそうです。

棈木:10打数3安打なら大成功! 失敗を許容できる文化はDXにおいて非常に大切ですね。

棈木 琢己

具体的な道筋を描くのはミドルマネージャーの役割

──変革を継続していくには、どのようなことが重要になりますか。

栗山氏:破壊的な変革は難しいという話がありましたが、もちろん小さな変革が簡単なわけではありません。製品やサービスそのものだけでなく、組織やビジネスプロセスを見直し、価値を再発見できることもあります。さらに言えば、社員一人ひとりが“リ・インベンションに向かう組織”を作る方法自体を“再発明”することも考えられますね。

棈木:まず変革に挑戦するマインドは不可欠です。日本人および日本企業の姿勢や考え方は保守的に偏りがちですが、安定していることに満足せず、よりよくできると考え、変革を是とする考え方にシフトしなければなりません。さらに個人では、取り組みが単発になる可能性がある。変革マインドを企業全体に醸成しなければなりません。

 また、継続的な変革の過程では、失敗をはじめ様々なことが起こります。その時、なぜ変革に取り組む必要があるのか、何を目指しているのかを確認し、自信を持って前進するための拠り所が必要です。多くの場合は、それはトップが示すビジョンです。

栗山氏:変革の根底にビジョンが必要という考え方は私も同意です。変革を継続する拠り所としてのビジョンは、例えば「社会に貢献する」「世界一のアパレル企業になる」など、環境変化に左右されない普遍的なものがよいですね。

棈木:100年企業などは、一貫してビジョンを変えていない企業が多いですね。ビジョンについては、もう1つ感じていることがあります。よく「トップがビジョンを示さない」という指摘を聞きます。しかし、そんなことはないのでは? ほとんどの経営者は、ビジョンを掲げています。ビジョン達成のための道筋が見えないという意味の指摘だとしたら、それは間違い。具体的な道筋を描くのはミドルマネージャーたちの役割です。意識を変える必要があります。

 ミドルマネージャーを中心に変革の意思を絶やさない組織作りに取り組むのも1つの方法です。例えば、豊かな発想力を持つ一方、考え方や行動が直感的すぎる傾向にある人材は、論理的で調整能力に長けた人材とチームを組ませてみる。発想力を持つ人材のひらめきを変革に向かう組織の原動力にしやすく、異なる個性から双方が学ぶことも多いはずです。

栗山 実氏

「クライアントゼロ」の経験を活かしたDX支援

──NECは、多くの企業のDXを支援しています。継続的な変革を支援するために、どのようなことを行っていますか。

棈木:NECのDX支援は「伴奏型」を基本としています。一般には「伴走」と表現されることが多いと思いますが、NECは、お客様と共に価値を創る取り組みは、複数のプレーヤーが共に音楽を奏でる姿のようだと考え、「伴奏」と表現しています。この伴奏型の支援も変革を継続する1つの力になっていると感じます。

栗山氏:先ほど棈木さんがマインドの話をしましたが、よほど意識しないかぎり、変革を避けて現状維持を求めてしまうのは人間の性質だと思います。日本でも海外でも、突出した経営者に率いられたイノベーティブな企業が成長と共に徐々に「らしさ」を失っていくことは、これまでにもたくさんありました。組織として変革を継続することは、それほど難しく、意図的に働きかけないと変革は停滞してしまうものです。ですから、目指す未来像の目線を引き上げたり、実現させる技術を共に作り出したり、NECのような伴奏者が外部から刺激を与え、手を引きながら変革の継続を促すのは、非常に有効な方法だと思います。私自身も企業に関与する際は、多くの場合、そのような関係でいることを意識しています。

棈木:周知の通りNECは、もともとテクノロジーやシステムインテグレーションに強みを持つIT企業です。しかし、これから私たちがお客様に提供すべき価値は何かと自問し、数年前からDXコンサルティングに注力しています。DXコンサルティングの根底には、テクノロジーの強み、システムインテグレーターとして吸収してきた各業種や業務に関する知識、そして新しいNECを目指して自身が実践してきた変革の経験、さらには自身で経験したからこそ蓄積できた大小様々なノウハウがあります。特に経験については、自身をゼロ番目のクライアントと位置付ける「クライアントゼロ」の考え方のもと、率先して最新技術を導入したり、課題解決に挑戦したりしてきましたから、失敗や苦労も含めて数え切れない経験やノウハウを積み上げてきました。

 このような背景のもと提供するNECのDXコンサルティングは、他の企業には真似のできない、唯一無二のサービスだと自負しています。先日、NECのあるイベントでお客様に声をかけられました。「コンサルタントが提供するレポートには、私たちが置かれている状況、抱えている課題、そしてデジタル活用や変革の必要性が書かれている。でも、どうやって変革していくか、具体的な方法までは書かれていない。どうしようと考えを巡らせていたが、NECの発表や展示内容を見たら、変革の背景、注意すべき点、変革に有効な技術、そして、技術の具体的な活用法、さらにNECがどのような支援を行うことができるかまで示されていた。それを見て、自分たちが、どこを目指し、次にどんな手を打つべきか、すべてが腑に落ちた」というのです。

 自ら変革した経験があるから、落とし穴など変革を停滞させるポイントをケアできる。ただ計画を立てるだけでなく、その後のシステム化まで支援できる技術や技術力を持っている。さらにその後も運用支援などを通じて、お客様との関係を維持し、改善をサポートし続けられる。NECのコンサルティングサービスは、NECだから実現できるサービスであり、継続的な変革を促すのに最適な特長を持っています。

栗山氏:コンサルティングを取り巻く環境は変化しつつあります。まれにコンサルタントを指して「高級派遣」と揶揄されることがあります。戦略立案やDX支援など、正社員だけではカバーしきれない業務が求められる期間だけ高単価で契約され、必要期間が終われば契約が終了するところが派遣社員を連想させるためです。

 こういった企画業務受託型のコンサルティング会社に、企業が「自社ではDXをどう進めていいか分からないから」と全てを期待して丸投げしてしまうことがあります。しかし、受託で作られた「完璧なDX戦略」では実行を担う社員の心が動かず、変革が停滞してしまうケースが少なくありません。結局のところ、変革を実行するのはあくまでも当事者。社員自身がリ・インベンションに挑む意志を持つことが、変革を成功させるには極めて重要です。現在のコンサルティング業界には、そういった社内起点の変革を後押しする新たなサービスモデルへの転換が求められています。

 また、リ・インベンションの創出には、ロジカルな情報整理だけでは導くのが難しい「飛躍」と「実装」が重要な要素になります。テクノロジーを使って動く仕組みを作り、実際に見ることで「こんな価値があるんだ」「こんなふうに使えるんだ」という発想の飛躍が生まれる。その上で、それを技術力によって実装していくのです。

 これらのことを踏まえると、NECのコンサルティングサービスは、まさに今の時代に求められるサービスだと感じます。自社変革の経験知、様々な業種・業界における深く豊富な実績、そして、テクノロジーによる具現化という強みを持ち、適切な距離でプロジェクトの立ち上げから実際のシステム化までを伴奏する。先ほど棈木さんが紹介してくれたとおり、他の企業には簡単には真似のできない唯一無二のサービスです。企業が高く評価したり、期待したりするのもわかります。

棈木:「投げ出さない」「粘り強い」「まじめ」といった日本の企業らしいNECの社風も、お客様の信頼につながり、継続的な変革に伴奏する上で大きな力になっています。

栗山氏:多様な業種の企業を支援したり、共にビジネスに取り組んだりしている。それらの企業をつなぐことができる力もNECのコンサルティングサービスの強みですね。

棈木:ありがとうございます。NEC自身の変革の経験を活かしてお客様のDXを成功させることが現在のNECの重要な使命の1つ。ぜひご期待ください。

参考:お客様を未来に導く価値創造モデル「BluStellar(ブルーステラ)」
参考:企業のDXを加速する「DX戦略コンサルティング」