住友重機械工業株式会社、新事業創出で経営課題を克服へ
NECのコンサルタントの伴走で得られた新たな価値
変化が激しい現代において、日本企業は収益源の多様化や新たな価値創造など競争力強化に向けた経営課題への対応に迫られている。住友グループの総合重機械メーカーとして長年、社会インフラを支えてきた住友重機械工業はさらなる成長を実現すべく、「新事業探索の強化」を重点課題の1つに置く。同社では2024年と2025年に新事業創出を目的としたピッチコンテストを開催。選考の結果、選ばれた3案件は現在も事業化に向けた取り組みが進められている。このプロセスを伴走支援したのがNECである。NECは自社での実践を通じて磨き上げてきたデザインコンサルティングのノウハウを住友重機械工業に提供し、新事業創出への挑戦を後押ししてきた。プロジェクトを推進した住友重機械工業の新事業創出を統括する冨永浩之氏と、NECのコンサルティング事業を率いる棈木琢己に話を聞いた。
経営層の危機意識から始まった「新事業探索」
──現在、日本の製造業の多くが新ビジネス創出に取り組んでいます。住友重機械工業が新事業創出に取り組むようになった背景についてお聞かせください。
冨永:当社は2023年に新事業探索室を設置し、新事業への取り組みを本格的に強化してきました。背景にあるのは、事業規模は拡大しているものの、利益の伸びが必ずしも十分ではないという課題意識です。特に国内事業においては、ここ10年ほど大きく成長する新事業を生み出せていません。経営層の間には、強い危機意識があります。
常務執行役員
新事業探索室長(現インダストリアル マシナリーセグメント長)
冨永 浩之氏
棈木:かつて世界をリードした日本の製造業ですが、ここ数十年は厳しい状況が続いています。顧客に対して、プラスαの価値をどう提供していくのか。そのための戦略的な施策が求められていると感じています。新ビジネスの創出は、その中でも重要な一手でしょう。
──住友重機械工業が取り組む新事業創出プロジェクトについて教えてください。
冨永:2024年と2025年の2年にわたり、社員が自身のアイデアをプレゼンテーションするピッチコンテストを実施しました。主な参加者は研究所のメンバーです。自分が世に出したい技術、思い入れのある技術をどのように事業化していくのか。その考えや道筋をまとめた書類による審査を経て、通過者が審査員の前でプレゼンを行います。2024年は7人、2025年は5人が登壇し、その中から2024年は2人、2025年は1人が選ばれました。現在、選抜された案件は事業化に向けたプロセスを進めています。ピッチコンテストの運営はもちろん、参加者へのメンタリングを含めたサポートまでもNECに担ってもらいました。
棈木:2000年代から2010年代にかけて、NECは厳しい経営環境に置かれていました。そこで持続的な成長を目指し、事業ポートフォリオの変革を進めながら、いくつもの新事業を立ち上げてきました。すべてが成功したわけではありませんが、現在では軌道に乗っている事業もあります。そうした試行錯誤の積み重ねを通じて、新事業創出に関するデザインコンサルティングのノウハウを蓄積してきました。
企業DX(デジタルトランスフォーメーション)においても同様です。私たちはNECをゼロ番目の顧客とする「クライアントゼロ」の考えのもと、まずは自社の課題に対して最新のテクノロジーを活用します。そこで得られた知見やノウハウをもとに、新たなソリューションをお客様に提供しているのです。
デジタルデリバリーサービスビジネスユニット
コンサルティングサービス事業部門
事業部門長
棈木 琢己(あべき たくみ)
冨永:自社での実践を通じて得た知見を、外部に提供できるレベルまで磨き上げている点に感銘を受けました。実際にNECの伴走支援を受けて、私たち自身も多くの学びを得ることができたと感じています。
顧客の声を何度も聞き、一つひとつ課題を乗り越える
──新事業創出プロジェクトにおいて工夫した点について教えてください。
棈木:今回のプロジェクトにおいて、NECはピッチコンテストの企画・運営のみならず、コンテスト参加者の準備やメンタリングなどもサポートさせていただきました。コンテスト参加者である研究所の方が実際のお客様から直接話を聞くことで、困りごとや要望を深く理解しコンセプトをブラッシュアップする。そういったプロセスを非常に重視し、伴走支援させていただきました。
冨永:研究所とお客様との間には、これまで大きな距離がありました。事業部の営業や設計担当者を通じて間接的に「お客様の声」を聞くことはあっても、研究所の社員が自ら足を運び、直接話を聞く機会はほとんどなかったのです。以前はそれが当たり前でしたが、そうした文化に風穴を開けたいと考えました。
ピッチコンテストに参加した2年間で12人の研究所員は、自分たちの事業アイデアを携え、お客様との直接ヒアリングを重ねました。最初から高い評価を得られるわけではありません。ほとんど関心を示されないこともあれば、「いいね」と言ってもらえることもある。しかし、「いいね」と「買いたい」との間には、大きな隔たりがあります。
その文化に風穴を開けたい
棈木:いかにして「買いたい」と思ってもらえるか。その水準までアイデアを練り上げるのは、決して簡単なことではありません。最終的に審査で選ばれたのは3人ですが、12人全員がその厳しいプロセスを体感しました。一方で、お客様との対話を通じて気づかされた課題を乗り越えるたびに、喜びを感じる場面もあったのではないかと思います。
最初に描いたコンセプト通りに、一直線で進めるケースは稀です。「この技術で世の中をよくしたい」という強い思いや情熱は重要ですが、それだけで事業化にたどり着けるわけではありません。想定外の壁に直面したり、お客様から思いがけないヒントを得たりしながら、途中で軌道修正を迫られるケースがほとんどです。そうした軌道修正を繰り返すことにより本質的な価値に昇華させていく活動にこそ、大きな意味があります。
冨永:NECのコンサルタントが「次はこれをやってください」と、ある種の「正解」を示してしまっては、重要な学びの機会が失われてしまいます。参加者本人にとってはストレスを感じる場面もあったかもしれませんが、試行錯誤を重ねながら、少しずつ前に進むしかありません。
棈木:前進を止めないよう、コンサルタントが答えを与えないように、モチベーションを維持させながら新たな洞察を得るように伴走していくことが我々に期待されている役割と認識していました。過度に介入せず、放任もしない。今後もお客様自身が新事業創出を「自走」できるよう、極めて微妙な舵取りが求められます。
ピッチコンテストを通じて得られた企業文化の変革
──住友重機械工業がNECにサポートを依頼した理由はどのようなものだったのでしょうか。
冨永:コンサルティング会社など数社に要望を伝え、どのようなサポートが可能かプレゼンをしてもらいました。その中で最終的にNECにお願いした決め手は、当社の課題、事業環境や組織文化を十分に理解したうえで、当社に最適な新事業創出へのアプローチを提案してくれた点です。他社のプレゼンでは、新事業創出の「定型フォーマット」に当てはめるような内容もありましたが、NECの提案はそれとは対照的でした。
棈木:新事業創出の方法論はいろいろありますが、企業が置かれている状況により方法論を組み合わせたり、アレンジすることが重要であると考えます。唯一無二の方法論は存在せず、アレンジを加えないと価値の向上と価値の納得性を高めることは難しく、画一的な事業コンセプトになってしまう傾向が強いと思います。ここは、我々の知見が問われる領域です。今回も、コンテストの運営だけではなく、コンセプトのつくり方やメンタリングも含めたコンテスト参加者のサポートを通して、お客様自身が自走し、今後も新事業創出を継続していけるような支援を行いました。
型ではなく「自社に合ったアレンジ」です
──ピッチコンテストの成果については、どのように捉えていますか。
冨永:一般的な研修とは異なり、本プロジェクトは事業化というゴールを設定しています。参加者は、事業がどのように成り立ち、どのように回っているのかを理解しながら、事業化のために何が必要なのかを突き詰めて考えました。選ばれた3つの案件を担当するメンバーは、現在も引き続き思考と検証を重ねています。その姿を見た周囲の社員も、多くの学びを得たのではないでしょうか。
新事業への挑戦を通じた企業文化の変革は、当初からの狙いの1つでしたが、この観点でもポジティブなインパクトがあったと考えています。
棈木:そもそも研究者は他の研究者に対するライバル意識というものが存在していると思います。複数の研究者が並走して新規事業を検討するだけでなく、各自の検討内容を共有する場もあるため、自然と横を意識し、「負けていられない」という意識を持つことでポジティブな競争意識が生まれたように感じています。
──最後に、本プロジェクトでの経験を今後どのように生かしていきたいか、お聞かせください。
冨永:今回の取り組みを、今後の新事業・新製品開発へと繋げていきたいですね。 先日、棈木様を講師にお迎えし「変革とイノベーション」をテーマとする社内講演会を実施しましたが、役員を含む多くの社員から反響があり、社内のイノベーション創出に向けた機運の高まりを実感しています。このような機運の高まりも受け、近い将来NECとの新たなプロジェクトが生まれることも期待しています。
棈木:私たちからも、ぜひ積極的に提案させていただきたいですね。例えば、現在大きな関心を集めているAI(人工知能)をどのように活用するか、あるいは製品やサービスにどのように組み込んでいくか。NECは「Human AI Collaboration」というキーワードのもと、変革に向けて人とAIが協調する世界を目指しています。また、AI活用に限らず、幅広い領域で今後も住友重機械工業を支援していきたいと考えています。
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