ここから本文です。

2022年10月18日

NXとNECが共創する理由とは?
~社会課題の解決につながる「物流DX」を加速~

 物流業界では労働力不足や働き方の変化、サプライチェーンの複雑化、脱炭素社会の実現といった課題が山積している。その解決に不可欠なのが、現場業務の効率化や事業継続を支えるデジタル化と、新たな価値創造を担うDXだ。DXによる価値共創に向け業務提携を締結したNIPPON EXPRESSホールディングスとNEC。両社は現在の社会課題をどうとらえ、デジタルでどう解決しようと考えているのか。キーパーソンに話を聞いた。

目次 表示する

事業を通した社会課題の解決に向け共創を開始

 物流業界では少子化・人口減少に伴う労働力不足が深刻化している。新型コロナウイルスの拡大による働き方の変化、サプライチェーン構造の高度化・複雑化も大きな課題だ。環境面ではCO2の排出量削減が必須要件となっており、世界各国で「2050年までのカーボンニュートラル実現」が宣言されるなど脱炭素社会の実現を目指した取り組みが求められている。

 「一社だけの努力でこれらの課題を解決するのは非常に難しい。業界を超えた企業同士が知恵を寄せ合い、解決策や新たな価値を共創していくことが重要です」そう語るのは、NIPPON EXPRESSホールディングスの中山 大輔氏だ。

NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社
経営戦略本部 DX推進部
専任部長
中山 大輔氏

 長年「日本通運」として親しまれてきた同社グループは2022年1月、持ち株会社体制に移行。NIPPON EXPRESSホールディングス(以下、NX)として新たなスタートを切った。現在は物流事業の効率化・高度化のためのデジタル化と、中長期的視野に立った新価値創造を目指すDXという“両利きでの成長”を目指すDX戦略を推進している。

 そのNXがDXの共創パートナーに選んだのがNECである。「NXはグローバルな物流インフラをビジネスの柱としています。一方、NECは世界最先端のAIやIoTといったICTインフラを有している。互いのノウハウや知見を組み合わせることで、物流課題の解決とともに、未来へ向けた新たな価値が共創できるのではと考えました」と中山氏は話す。

 NECの武藤 裕美も「物流とICTはどちらも社会インフラとして欠かせない基盤です。それを支える企業は課題感や方向性において同じ軸を持っています。さらにメーカーであるNECはNXに長年サプライチェーンを支えていただき、2013年からは合弁会社を立ち上げた協業の歴史もあります。両社のタッグは必ずいい結果につながるという確信がありました」と振り返る。

 そこでNXとNECは2020年10月から価値共創に向けた探索プロジェクトを開始。両社合わせて数十人ものメンバーがメガトレンドや社会課題の把握、あるべき姿の共有などを半年ほどかけて議論した後、2021年6月に業務提携を締結。相互の強みを活用しながら、「物流の付加価値向上」と「持続可能な社会の実現」を目指すDXプロジェクトに着手した。

NEC
スマートILM統括部
ディレクター
武藤 裕美

価値共創に向けて3つのテーマを設定

 NXとNECによる価値共創に向けたテーマは大きく3つある。

 短期的な取り組みとなる「倉庫作業のデジタル化」、中長期的な取り組みとなる「ロボット遠隔操作によるユースケースの開発」、サステナブル社会に向けた「サプライチェーンのCO2見える化」である(図1)。

図1: 両社の取り組みと目指す姿
画像を拡大する
図1: 両社の取り組みと目指す姿
NXとNECそれぞれが持つノウハウや強みを持ち寄り、事業を通じた社会課題の解決と、新たな価値共創を進めていく。これらの取り組みを通じてグローバルレベルで持続的な成長を目指し、そのサイクルを継続的に回し続けていく

倉庫作業のデジタル化

 物流の重要性が増すにつれ、配送スピードや品質面での要求が一段と厳しくなっている。配送センターなどの倉庫作業でも、従来は業務の手順を変更したり、荷物の配置を工夫するなど、現場でのアナログな業務改善で対応してきた。だが近年は倉庫作業員などの労働力不足が深刻で、増加する荷物量や複雑化する配送ニーズに十分対応できていないのが実情だ。

 そこで考えられたのが、熟練者のノウハウや暗黙知をデータ化し、作業効率の向上と安全・安心な作業現場の実現につなげる倉庫作業のデジタル化だ。

 具体的には、IoTや3D・画像認識・5GなどNECの先進技術によって作業現場の人やモノの動きを高速にデータ化。AIでタイムリーに分析することで作業員のノウハウや暗黙知をデジタル化する。これにより熟練者の作業品質を“AIによる作業指示”という形で再現し、倉庫作業のパフォーマンスを最大化していく(図2)。

図2: 倉庫作業のデジタル化の仕組みと両社の目的
画像を拡大する
図2: 倉庫作業のデジタル化の仕組みと両社の目的
倉庫内業務は細かい作業が多く経験値に左右されるため、熟練者と新人では効率に大きな差が出る。その違いをデータ化しAI分析することで、熟練者の作業品質を再現することが可能になる。この仕組みをソリューションとして幅広く提供していく

 「労働力不足の解消とともに、作業員が安全・安心に働ける環境を実現することで、変化にも即応できる強靱なサプライチェーンをつくり、お客様への提供価値を向上することが目的です。将来的には輸配送現場も含めた物流現場全体での事故ゼロや人員配置の最適化にもつなげていきます」と、中山氏は説明する。

ロボット遠隔操作

 働き手が減少している産業や、労働環境の悪い場所、危険な地域などでは人力による作業の提供が一段と難しくなっている。現場作業が欠かせない物流でも、安全な労働環境の確保が重要なテーマとなっており、遠隔操作ロボットなどを用いた作業現場の無人化が求められている。

 こうしたニーズに対応するのが、人とロボットが連携して作業を提供する「テレロボパイロット」だ。「距離を超えて人が人を支える社会づくりと、その可能性を探索することがテーマです」と中山氏は言う。

 まずはNXグループが受託した倉庫内業務の中で遠隔操作のロボットを使う「業務請負型」の実証を行い、ロボット操作人材の育成や動作プログラムの構築などを通じ知見を蓄積していく。その後は、顧客先にロボットを配送し、介護業務やベビーシッターの仕事を登録パイロットが遠隔操作で行う「人材派遣型」、さらにはロボットのみを顧客に配送し、操作も顧客自身で行う「ロボレンタル型」などのユースケースを想定している。

 「労働力不足の解決に向け、まずはロボットを入れることで業務の標準化・効率化・省人化に貢献していきます。さまざまなオペレーションからデータを取得できるので、将来的にはデータを活用したビジネスモデルもつくっていけるはずです」(中山氏)

 武藤も「NXは全国に業務現場を持ち、日ごろから創意工夫でオペレーションを改善・運用されてきた実績があります。このノウハウとNECのロボットリモート制御技術、画像認識・ローカル5Gなどを利用した環境を組み合わせ、世代・産業・国境の垣根を越えて社会の発展を支えるソリューションを提供していきます」と力を込める。

サプライチェーンのCO2見える化

 サステナブルな社会を実現するには、自社の改善にとどまることなく、パートナーや顧客などサプライチェーン全体を意識した環境負荷の低減につなげていくことが必要だ。そこでCO2排出量削減のため、Scope3も含めた精緻なCO2排出量の見える化ソリューションをNXとNECが共同で開発している(図3)。

図3: サプライチェーンのCO2見える化の取り組み
画像を拡大する
図3: サプライチェーンのCO2見える化の取り組み
サプライチェーン全体のCO2排出量を削減していくには「見える化」が重要なポイントだ。デジタルで業界全体のCO2排出量を把握して具体的な削減施策につなげていく。その基盤となるのが、NECの環境パフォーマンス管理ソリューションである

 もちろん「見える化」はCO2削減のゴールではなく出発点だ。「見える化」が実現したら次は具体的な「削減」につなげていかなければならない。

 「削減効果の『見える化』は、現場で頑張っている方々やお客様のモチベーション向上にもつながります。『見える化』を削減につなげ、削減効果をまた『見える化』するサイクルがとても大事なポイントになります」と武藤は指摘する。

 そこでNXグループは、物流データ精緻化による「見える化」を基軸に、顧客に対してモーダルシフトや共同輸配送、倉庫省エネ/ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)化、オフセットといった削減施策&効果創出を訴求する物流サービスを提供。さらに環境車両(EV/FCVなど)の導入・運用を推進するソリューション展開を計画していく考えだ。

サプライチェーンの強靱化とサステナブルな社会を両立

 本格的な共創がスタートして約1年。プロジェクトは順調に進んでいるというが、両社の足並みが揃うまでには少し時間がかかったのも確かだという。

 「最初は社会インフラを支えてきた企業同士、共通項も多いだろうと考えていました。しかし実際にプロジェクトが始まると、使う言葉の意味が違う、仕事の進め方が違うといった企業文化の違いを感じたのも事実です。提供するサービスが異なる会社ですから当然ですが、一方では“国や社会、産業に向けて幅広くサービスを提供している事業構造はそっくりだな、向き合うお客様も同じじゃないか”と気付き、いつしか価値観の違いがあまり気にならなくなってきました。今では気心が知れたNECの皆さんと一緒に、新しい価値を生み出していくことが楽しみで仕方ありません」(中山氏)

 今回の共創を踏まえ、両社ではどのような未来を描いているのか。

 NXは2037年の創立100周年に向け「グローバル市場で存在感を持つロジスティクスカンパニー」になるという目標を掲げている。それは「持続可能な社会の実現に、物流を通じて貢献する企業でありたい」という揺るがぬ理念を表したものであり、顧客や社会に新たな価値を提供し続けられるよう「デジタル化やイノベーションによって聖域なき業務改革と新たな成長領域の創造に挑戦」していく強い意思が込められている。

 一方、NECはパーパスに「Orchestrating a brighter world」を掲げ、企業活動を通して豊かな人間社会に貢献することを宣言。ロジスティクス&モビリティの領域では「安全・安心な人とモノの移動をデジタルで支え、すべての人々と産業が公平にサービス・機会を享受できる社会の実現」を目指している。

 それは、センシング・認証・ネットワーク技術や、熟練者の暗黙知を形式知化するAIなどで、人やモノ、プロセスを産業の枠を超えてつなぎ、サプライチェーンに新たな価値を創出するデジタルイノベーションの実践にほかならない。

 両社に共通するのは、デジタルとデータの力を最大限に活用し、物流現場だけでなく企業間連携のサプライチェーン全体をグローバルレベルでイノベーションしていくことだ。そしてそれはCO2削減や持続的成長も含めたサステナブルな社会の実現においても同じベクトルを向いている。

 「NXとNECの企業理念には通じるものがたくさんあります。だからこそ、お互いの強みや経験を持ち寄り、これまでにない価値と未来を共創していけるパートナーになり得るのです」と武藤は語る。

 中山氏も「世界全体がサステナブルに発展をして、その中で我々が新たな価値を創造し続ける、信頼される存在であり続けることが何よりも大切です。NECと一緒にこれからも日本の産業を支え、グローバルに通じるDXを共創し続けていきます」と先を見据える。

 企業の成長と顧客の喜び、そして持続可能な社会の実現は、人々の英知とデジタルの力を結びつけることで必ず両立することができる。NXとNECが取り組む共創は、日本を代表するDXのロールモデルの1つとなっていくはずだ。

関連キーワードで検索

さらに読む

この記事の評価


コメント


  • コメントへの返信は差し上げておりません。また、いただいたコメントはプロモーション等で活用させていただく場合がありますので、ご了承ください。
本文ここまで。
ページトップ