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2021年11月04日

“Smart Retail CX”の実践から見えてきた、これからの「共創」の形

 複雑化する社会課題を解決するために企業や産業の壁を超えていくことが求められているなか、今後ますます企業間や官民連携による「共創」は必要不可欠なものになっていくだろう。NECは数多くの企業との共創に取り組んでいるが、なかでもNEC Visionary Weekで行われたセッション「お客様との共創と『Smart Retail CX』で未来を実現」では、小売業におけるさまざまな取り組みが紹介された。

これからの「共創」とは

 「これまでの『共創』はお客様との価値創造を考えることがメインでしたが、社会課題を解決するためには、お客様だけでなく競合他社も含めさまざまなステークホルダーと協力していくことが重要となります。“協調”の土台の上でそれぞれが“競争”しながら社会課題を共に解決していくことが、これからの『共創』だと私たちは考えています」

NEC
スマートリテール本部
シニアマネージャー
石井 健一

 そう語るのは、NEC スマートリテール本部 シニアマネージャーの石井健一だ。石井は新たなプレイヤーの参入による競争の激化や消費者行動の変化、そして急速に進む労働力不足に対応するために、DXと共創が必要不可欠であり、とりわけ小売業においてNECは「Smart Retail CX」と題した取り組みを進めていると語る。「Smart Retail CXは『業務量の50%削減』、『お買い物の魅力2倍』、『不正/現金ゼロ』を3つの柱として打ち出しています。ICTにより、従業員は人間だからこそできることに注力するとともに、待ち時間の削減や楽しい買い物体験、安全・安心なリテール環境を実現してまいります」

 Smart Retail CXでは、既に数多くの企業との取り組みが進んでいるという。たとえばセブン-イレブン・ジャパンとは省人型店舗としてビル内に半無人店舗をつくった他、ローソンとは夜間の店舗の省人化を実現する実証実験を行った。また、NECでは本社ビル内でレジレス型店舗を運営しており「本社にはショールームも設けているため、小売業に限らずさまざまなお客様を招きながら未来の購買やお店づくりについて議論しています」と石井が語るように、小売業に変革を起こすべく「共創」の場を社内につくっている。

 コンビニや企業内店舗の取り組みのみならず、スーパーマーケットとの共創も進行中だ。

 NECは日本スーパーマーケット協会と共同研究を行い、大手食品スーパーで実証実験を行った後、スマートフォンを使ったセルフスキャンショッピングのサービスも開始している。他にも海外ではローソンインドネシアとの取り組みを通じて、店舗状況を可視化する実証実験を行った。たとえ同じコンビニでも日本と海外では土台となる文化が大きく異なっており、従業員の働き方も同じようには考えられない。自動化や省人化だけでなく、店舗業務やお客様行動を可視化することも、新たな購買体験を提供するうえでは大きな意味をもつのだろう。

NEC Smart Retail CXが目指す3つのテーマ
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NEC Smart Retail CXが目指す3つのテーマ

映像分析で顧客体験が変わる

 今、小売業においてNECが進めている活動の1つが「店舗映像アナリティクス」だ。NEC スマートリテール本部 マネージャー 田原裕司によれば、NECは映像クラウドサービスを提供しており、カメラ1つだけで録画も通信も行えるようなシステムを構築している。従来はカメラの他に記録用のレコーダーが必要とされたが、このサービスを使えばカメラをネットワークにつなぐだけでクラウド化が可能であり、手軽かつ低コストで映像を活用できるというわけだ。

NEC
スマートリテール本部
マネージャー
田原 裕司

 「加えてNECは、独自の検知技術を提供しています。例えばカメラの前をどれくらいの人が通過したか、今画面に何人の人が映っているか。人だけでなく車も検知でき、さらに特定の場所を通過した車だけに絞るなど、より細かな情報を検知することができます。モノの検知に関しては、棚の領域と商品を見分けて空きスペースがどのくらいあるのか算出も可能です。私たちはクラウド化と検知技術の2つを使って、さまざまな課題解決に取り組んでいます」

 田原はそう語り、現在進行形で共創が進んでいる5つの事例を紹介した。まず1つ目として挙げられたカフェの混雑状況発信では、映像によって座席の領域と人の姿を検知し、どの座席が空いているのかを自動で判別。スマートフォンのアプリを通じてその状況を配信することで顧客満足度の向上や集客効果の向上につなげるという。2つ目に紹介されたのは、スーパーの事例だ。スーパーではレジ待ちの行列ができてからスタッフが対応に回ることが多いが、入店してきた客とレジ待ちの状態の相関を映像で分析することで、レジが混む前に対応できるようになる。

 3つ目は、長時間駐車への対応。店舗の駐車場に長時間車が停まっていることで他の顧客が入れなくなることを防ぐため、どの部分に車がいつからいつまで停まっていたかを分析することで、カフェと同じく稼働状況を可視化できるのだという。4つ目は、看板の効果測定を行うもの。車による来訪が多くを占める大型スーパーでは店舗から離れた場所に看板を設置するが、その効果は分かりづらい。そこで看板の位置からどれくらいの車が店舗に向かってきたのか検知することで、その効果を判断できるようになるのだ。

 最後の事例は、スーパーの補充優先度の自動表示だ。棚欠品の状態をカメラで捉えてバックルームへ常時配信することで、どの棚が一番早急に補充対応を進めるべきなのか判断できるようになる。迅速で効率的な補充を行うことで、機会損失を防ぐというわけだ。「こうした事例を見てもわかる通り、映像領域においては、AIの活用が非常に進んでいます」と田原は語り、同時に顧客とのコミュニケーションも重要なのだと続ける。「メーカーの立場でモノをつくっていると思い込みが生まれやすい。お客様と会話することでわかることもあるので、固定概念に囚われないよう気をつけなければいけません」

映像分析を導入することで、業務変革をもたらす精緻な効果測定を行える
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映像分析を導入することで、業務変革をもたらす精緻な効果測定を行える

立場に囚われずに対話を重ねる

 セッション後半では、共創をさらに加速していくための取り組みが紹介された。先立って田原がコミュニケーションの重要性を説いたように、こうした共創はテクノロジーのみによって実現するものではないとNEC 第二リテールソリューション事業部 主任の守田咲絵は語る。

 「これまで紹介された事例を見ればわかるように、課題解決の手段は増えているものの、小売業の方からするとどんな施策を打ち出せばいいのか悩ましくなるのも事実です。NECでは単にソリューションを提供するだけではなく、お客様と共に考え共に解決することが重要だと思っています」

NEC
第二リテールソリューション事業部
主任
守田 咲絵

 そう言って、守田は「未来を作り上げる共創ワークセッション」と「NECことづくり共創プログラム」という2つの取り組みを紹介した。前者は、顧客の置かれた状況をきちんと理解したうえであるべき姿を考えていくワークショップだ。3つのステップからなるこのワークショップは、例えば、まずECサイト診断や店舗の実地調査を通じ現状の分析と課題の検討を行う。そこから見えてきた取り組むべき課題の仮説をNECが立て、それを基にディスカッションを繰り返すことで、具体的かつ実効性のある施策を立案していくのだという。

 「デジタルを活用した具体化は、最終ステップにあたります。業務フローやサービスイメージ、要件定義レベルまで進めることで、実際にプロジェクト化する際もクイックに進められるはずです」と守田が語るように、ただ議論するだけでなく実践へつなげていけることが大きな強みになっていると言えるだろう。

 前者が顧客と一対一で向き合いその課題を深堀りするものだとすれば、後者の「NECことづくり共創プログラム」は、より広く顧客同士がつながっていく場をつくるものだ。「このプログラムでは、複数のお客様が集まりDXの取り組みや課題を共有していきます。なかなか他の企業とコミュニケーションをとる機会のないお客様もいるので、同じ立場のお客様が集まってみんなで課題とその解決策を検討することで、新たな気づきが得られる場が生まれていきます」。そう守田は語り、従来の企業の壁を超えた交流が生まれていることを明かす。

 たとえば今年度は、「OMO」(※)をテーマとしてOMOストラテジー研究会が実施されたという。10名程度の業種の異なる顧客が集まって既に実現できているOMOサービスや感じている障壁について、失敗談を含めて共有することで、業種による差異や共通する要素も浮き彫りになる。「自社の方向性や取り組む施策の有効性や妥当性を整理する機会にもなるはずです」と守田が言うように、異なる複数の企業とディスカッションを繰り返すことで、自社の取り組みを異なった視点から捉えられるようにもなるのだろう。

(※)OMO:Online Merges with Offline オンラインとオフラインを融合した顧客体験の向上を目的とするマーケティング手法

NECことづくり共創プログラムは大きな気づきをもたらす場をつくっているという
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NECことづくり共創プログラムは大きな気づきをもたらす場をつくっているという

 先端的なテクノロジーを活用した映像アナリティクスと、テクノロジードリブンではない対話のための空間をつくるワークショップ――異なるアプローチに思える2つの取り組みは、どちらもNECの考える「共創」にとって必要不可欠なものだ。石井はこのセッションを振り返り、次のように語る。

 「これからはさまざまなステークホルダーが手をとって共創していかなければいけないでしょう。ときには競合ともいえる小売業のお客様同士でディスカッションするからこそ見えてくることもあるはずです。私たちも『お客様とベンダー』という立場に囚われず、お客様の立場にも立つ必要があると感じています」

 これからの「共創」においては、受発注の関係や競合ベンダー同士といったような既存の「立場」から自由にならなければいけないのだろう。企業の壁だけでなくその立場もないまぜにしながら一緒に考え、挑戦することからこそ、複雑な課題解決へつながる共創が生まれてくるのかもしれない。

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