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2021年12月02日

世界の水不足問題とは?
現状や原因、テクノロジーによる解決策

 私たち一人ひとりが、1日に使用する水の量を考えたことはあるでしょうか? 国土交通省の統計によると、1日に1人あたり、およそ300リットル近くの水が使われていると言います。日本では「飲み水に困る」ということはあまり考えられません。しかし、世界では水不足が深刻化し、あたりまえに清潔な水が確保できない地域が少なくありません。水不足が原因で紛争が起こる場合もあり、今、世界の水不足問題の解決が急がれています。

水不足問題の現状と今後考えられる問題

 水不足問題により、世界ではどのような問題が引き起こされるのでしょうか。国連人口基金の「世界人口白書2021」によると、世界総人口は78億7500万人です。現在、その40%以上にあたる36億人が水不足に悩まされており、今後も上昇すると予測されています。この状況が続けば、2050年には約97億人になるとされる世界人口のうち、約半数が水不足にさらされ、4人に1人は慢性的な水不足の影響を受けると予測されています。

世界人口の推移(推計値)
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出典:「国連人口基金駐日事務所ホームページ」より引用しNECにて図版作成

 地球上の水資源には限りがあり、飲み水として利用できる水は地球全体の0.01%にも満たないといわれます。水不足が進み、枯渇してしまうと、多くの生物も影響を受け、絶滅してしまう種も出てくるでしょう。

 また、ユニセフによると、世界の約20億人が安全に管理された飲み水の供給を受けられずにいると言います。菌に汚染された水を飲むなどで感染する伝染病で、命の危険に直面している人がいます。2016年に中央アフリカ共和国では、急性の下痢などを引き起こすコレラが5年ぶりに流行し、多くの死者を出したという報道がありました。世界では、その水が危険だと分かっていながらも飲まざるを得ない人々が多くいるのです。

世界の人々の、飲み水へのアクセス状況(2020年時点)
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出典:「日本ユニセフ協会ホームページ」より引用しNECにて図版作成

水不足問題が引き起こす戦争や対立

 水不足は現在に始まった問題ではなく、過去にも深刻な被害をもたらしてきました。国同士の紛争に発展したこともあります。水資源配分の問題(湖や河川の上流地域での過剰取水)、水質汚濁の問題(上流地域での汚染物質排出など)、水の所有権・水資源開発の問題などが主な原因です。

 11カ国を流れる国際河川のナイル川では、水力発電や生活用水、灌漑用水などを巡って、流域の国でたびたび対立が起こりました。2021年には、エチオピアがナイル川上流で建設中の巨大ダムで今年の貯水を始めると表明し、これが水不足を懸念する下流のエジプトとスーダンが反発を強めるに至り、国連での討議を経ても対立が解消されていないことが報道されました。

 世界ではこれまで、さまざまな地域で水を巡る対立が起こってきました。ドナウ川におけるハンガリーとスロバキアが運河のための水利用に関して対立。漢江では韓国と北朝鮮がダム建設を巡る環境問題などで対立し、インダス川ではインドとパキスタンによる水の所有権問題で対立。こうした例は枚挙に暇なく、解決していない紛争もあります。このように水不足問題は国同士の対立、紛争を引き起こす原因にもなり得るのです。

水不足問題に対する世界の取り組み

 水不足問題の解決に向けての世界での取り組みとして、2000年、ニューヨークで開催された国連ミレニアム・サミットで、開発分野における国際社会共通の目標「MDGs(ミレニアム開発目標)」が採択されました。そのなかで「極度の貧困と飢餓の撲滅」や「ジェンダー平等推進と女性の地位向上」、「環境の持続可能性確保」など、8つのゴールが掲げられました。このMDGs が2015年に達成期限を迎えたことを受けて、後継として新たな世界共通の目標のSDGs(持続可能な開発目標)が定められました。

 SDGsは豊かさを追求しながら地球環境を守るため、17のゴールとそれを達成するために169のターゲット(具体的な達成基準)を設定。ゴールの1つに、「安全な水とトイレを世界中に」が設定されており、世界中の人が安心して水を利用できる未来をつくることが各国の目標となっています。

水不足問題の原因

 なぜ、水不足問題が発生してしまうのでしょうか? その原因を理解し、私たちが生活の中で意識できることを一緒に考えてみましょう。

人口増加・産業発展

 まず、「水の使用量が増えていること」が挙げられます。その背景には人口増加と産業発展があります。先述した通り、世界の総人口は2050年には約97億人に増加すると予測されています。人口が増えるほど水の使用量は増えますが、水は限りある資源です。使用する量が増えれば増えるほど、水不足は深刻になっていきます。

 また、水は工業や農業にも利用されています。産業発展に伴う生活レベルの向上により、生活に必要な水の量も増えてきています。その利用において、排出される工業排水や生活排水が河川や海、地下水の汚染にもつながっているのです。

気候変動

 そして、地球温暖化による気候変動も大きな原因となっています。温暖化は降水量だけでなく、雨の強さや頻度も変化させています。降水パターンが激しく変動するため、季節や月ごとで見ると、水不足に悩む地域が出てきやすくなると言われます。雨だけではなく、気温上昇による積雪の減少や雪解けの早まりは、春夏の水源量に大きく影響します。

 気候変動が引き起こす大雨による水害や干ばつで、水が必要な時に必要な場所で効率よく利用できなくなります。それは飲料水だけではなく、産業や農業にも大きな影響を及ぼしかねません。さらに、干ばつによって砂漠化が進行し、水不足だけでなく人の住める地域が狭められてしまう懸念も指摘されています。

開発による水源破壊

 都市化による開発などで森林伐採が進み、水を蓄積していた森も減少したりするなど、水源破壊も原因となっています。

水不足問題を解決する日本の技術と最新テクノロジー

 世界で深刻化している水不足問題の解決に、世界一とも言われている日本の水処理技術が期待されています。例えば、地球上の水の97%を占める海水をろ過し、飲用水や生活水として利用できる淡水に変える海水淡水化技術があります。この技術では蒸発法と、RO膜でろ過する逆浸透(RO)法があり、RO法で使われるRO膜は日本メーカーが世界で50%以上のシェアで、中東やアフリカなど慢性的な水不足で苦しむ地域を中心に導入されているといいます。

 海水と比較して3分の1のコストで飲み水を作ることのできる期待の資源として、下水が注目されています。この下水の浄化処理にも日本が開発した膜分離活性汚泥法(MBR)とRO膜を組み合わせたシステムが利用されています。下水中の病原性原虫類や大腸菌、ウイルスを除去し、きれいな水の精製を可能にしています。

 自然界に生息する微生物の浄化能力を生かして水をろ過し、安全な水を作り出す浄水法に生物浄化法(EPS)もあります。低コストでメンテナンスも容易なことから貧困に苦しむ開発途上国でも導入しやすいというメリットがあると言われています。

 このように、日本は海水淡水化や排水・下水再利用など水インフラで優れた技術を持ち、世界の水不足問題の解決に大きく貢献できると期待されています。

 そして、AI(人工知能)をはじめとするICT技術も今後の水不足問題を解決に導く鍵となっていくでしょう。例えば、AIが可能にするデータの見える化や予測分析、制御誘導などを浄水や配水の制御システムへ応用することです。AIが気象などさまざまなデータを組み合わせて水需要を予測し、配水計画をリアルタイムで自動生成することで、常に最適な水の供給制御を可能にするでしょう。

原因を理解し、日々の生活で意識して行動することが大切

 ただし、日本の優れた技術やAIなどの最新テクノロジーだけでは、世界の水不足問題の根本的な解決には至りません。私たち一人ひとりが水不足の原因を正しく理解し、できることを行動に移すことが大切です。

 私たちは料理、歯磨き、食器洗い、トイレ、入浴、洗濯など、生活のあらゆるところで水を使用します。その際、使用を最低限に抑える節水を心がける。洗剤や油など生活排水を減らす。このように生活における水の利用方法を改めて見直し、温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出を抑えるなど、日々の生活の中でも皆が少しずつ意識することが水不足対策につながるのです。

 日本では、水不足の問題は遠い国での出来事のように思えますが、自然にある資源が循環していることを忘れてはいけません。

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