NEC人事セミナー採録
選ばれる会社を目指して
~エンゲージメント向上での人事部門の取り組み~
少子高齢化が進み、生産年齢人口が減少。その結果、多くの企業が人材不足の課題に直面しはじめています。これからの企業にとって、そこで働きたいと選ばれること、つまり従業員エンゲージメントの向上は重要なテーマです。中心を担うのは人事部門。NECの実践例や最新のHR テクノロジー(Human Resources Technology)の活用法などを紹介します。
NECのエンゲージメント向上のための取り組み
澤谷 幸作
NEC
カルチャー変革統括部
SmartWork Engagementグループ
人口減少や少子高齢化は、日本の社会が直面する構造的な課題です。これからの企業にとって労働力不足は避けることができない重要な経営課題となります。
NECも選ばれる会社を目指して様々な取り組みを進めています。その1つが従業員と企業の間で強い絆を築くこと。すなわち従業員エンゲージメントの向上です。従業員エンゲージメント向上は、企業が優秀な人材を獲得し、雇用を維持し続けるためのカギとなります。
NECが従業員エンゲージメント向上、ひいては人・カルチャーの変革に取り組んだ背景には、強い危機感がありました。
2000年頃、NECは最高の売上高を記録していますが、純利益を見ると残念ながら物足りません。その後も低迷が続き、赤字を出した年もあります。このままでは、存続が危うい。そう考えた当時の経営陣が構造改革に着手。ビジネスモデルの大転換を目指しました。
具体的には、携帯電話/スマートフォンやコンシューマー向けPCなどの事業は譲渡するなどして整理し、ITサービス、通信、宇宙・防衛事業に経営リソースを集中することにしました。また、単に事業を整理するだけでなく、NECの存在意義も再考。役員が合宿を行い、議論を重ね、たどり着いたのが、現在もNECが目指す姿として掲げている「社会価値創造型企業」です。
しかし、事業を整理し、存在意義や方針を定めても、それだけで組織が動き出すわけではありません。肝心なのは「人」です。そこで、まず役員がNECグループの従業員、約1万人と対話を行いました。日々、どんなことを感じているか率直に聞かせてほしい。そう問いかけると「大企業病」という厳しい指摘も含め、様々な課題が浮き彫りになりました。それらの課題の1つひとつに向き合い、解決に取り組みはじめたのが人・カルチャーの変革の最初の一歩です。
注力領域を3つに絞って施策を展開
人・カルチャーの変革を全社的に推進するために、2020年中期経営計画において「実行力の改革 ~社員の力を最大限に引き出す改革~」を宣言し、人・組織への投資を強化。社員一人ひとりが主体的に考え、新たな挑戦ができる、「人」が主役のカルチャーへの変革を目指しました。プロジェクト名は「Project RISE」です。
変革は「人・組織・カルチャー」「制度/プロセス」「インフラ」など、文字通り全方位にわたっていますが、直近では、期中に行う従業員サーベイ結果の相関分析を行って従業員エンゲージメントの向上に影響の大きな領域を割り出し、3つの領域に特に注力しています。具体的には「全社方針・戦略の浸透」「評価/報酬/登用/キャリア」「働き方/心身のコンデイション」が3つの注力領域です。
例えば、全社方針・戦略の浸透では、社長と社員との対話セッションを毎月開催しています。グループ会社や地方拠点にも社長自ら足を運び、延べ1万1500名が参加。満足度は99%となっています。
評価/報酬/登用/キャリアでは、段階的に評価制度を改革して、新しい制度・仕組みを導入。2024年4月には、ジョブグレード体系・報酬制度を改め、各ジョブの適性を重視し、最適な人材配置を行う「ジョブ型人材マネジメント」を本格展開しました。
また多様性人材強化のためにキャリア採用専門部署も立ち上げました。変革に取り組む以前は、多くても100名/年度未満だったキャリア採用は、現在、600名/年度を超えています。企業が求職者に直接アプローチすることでベストな人材獲得を目指すダイレクトソーシングにも取り組んでおり、直近では、キャリア採用の3分の1近くがダイレクトソーシングによる採用となっています。
さらにNECグループで働く誇りを醸成するために、優れた成果をあげたプロジェクトを表彰するNEC Awardを開催。受賞プロジェクトはNEC本社ビルに直結する三田駅にて特別展示を行ったりしています。
働き方/心身のコンデイションにおける中心的な取り組みは、働き方のアップデートです。前提として柔軟な働き方を取り入れていますが、リモートワークなどが増えた中でも、コミュニケーションの質・量・スピードを高めてチームとしてのパフォーマンスの最大化を目指すため、40%(週2回)を目安にFace to Faceのコミュニケーションを行えるように、チーム内で対話することで組織ごとに最適な働き方を決めています。
現状把握、対話、アクションのサイクルがカギ
変革は確実に進んでいます。設定したKGI(Key Goal Indicator)は、2025年度にエンゲージ50%を達成することですが、2023年度の実績値は39%まで来ています。そして、このエンゲージメントスコアの向上は、株価や業績をはじめ、確実にNECの企業価値に反映されています。
このような取り組みを通じて、エンゲージメント向上のためのポイントも見えてきました。ポイントの1つが調査や測定、つまりサーベイです。やみくもに取り組むのではなく、データを通じて進捗や成果などを把握。把握した状況は、客観的に評価できるよう、できるだけ定量化し、それをもとに対話して改善点などを検討する。サーベイを起点とする現状把握、対話、アクションのサイクルを回し続けることがエンゲージメント向上には欠かせないと強く感じています。
(NEC 澤谷 幸作)
多様なHRテクノロジーをいかに有効活用するか
香山 知佳子
NECソリューションイノベータ
ビジネスソリューション事業部
藤木 協子
NEC
インダストリアルDX統括部
EXPLANNER第一グループ
NECも人・カルチャー変革のために様々なテクノロジーを活用していますが、現在、市場では人事業務をサポートする様々なHRテクノロジーが提供されています。それらを従業員エンゲージメントの向上に役立てない手はありません。
様々なHRテクノロジーと述べましたが、実際、市場では、採用、タレントマネジメント、そしてエンゲージメントなど、用途や業務ごとに実に多くのシステムやサービスが提供されています。企業、および人事部門は、その中から自社に合うものを選び、適切に組み合わせて使わなければならないわけですが、ともすると「自分達に合うシステムが分からない」「どれを選べばいいのか分からない」と選定に悩むケースも多いようです。
では、どのように選定すべきか。カギはシステムおよびデータの連携を意識することです。システム単独の評価だけではなく、人事業務全体を見渡して必要な機能を見極め、各システムを連動させるのです。
ある企業は、「これは良さそう」と思ったシステムを次々に導入しましたが、それらの連携までは視野にいれていませんでした。結果、それぞれのシステムが必要とする人事情報を何度も手入力で登録しなければならず、人事部門の負担が増大。エンゲージメント向上の施策などに手が回らないという状況に陥ってしまったそうです。
一方、別の企業は、基幹となる人事・給与システムを中核に据えて、タレントマネジメント、採用、勤怠管理など、複数のシステムを導入。人事データベースと連携させているため人事情報を二重入力したりする必要はありません。また、従業員が入力した情報も必要に応じて自動的に人事・給与システムに反映することができます。これなら人事部門の負担は最小限に抑えられます。
困ったときはシステムインテグレータに相談
中核となる人事・給与システムは、ERP型、パッケージ型、機能選択型があります。
ERPは、販売、会計、人事、企業の様々な基幹業務をカバーするシステムです。1つのシステムですから、人事と会計の連携などが標準で行えます。パッケージ型は、複数の人事業務を一つのパッケージとして提供します。そして、機能選択型は、さらに細分化し、例えば「年末調整申請」だけに特化した機能を提供するようなシステムです。
どちらが優れているということはありません。連携のためのコストや工数がかからないことなどを考慮してオールインワンのシステムを導入する。コストはかかっても、自社にあったシステムを1つずつ選定して連携する。既存のシステム環境や予算、使いたいシステムを踏まえて、判断していきます。
提供形態も選択です。多くの場合、オンプレミスとクラウドを選択できます。ただ、見逃しがちなのが導入手法です。「SIレス」を選択し、がんばって自分たちだけで構築するのか、「コーチング型」で部分的に支援を受けるのか、「構築型」でシステムインテグレータに任せるのか。こちらも求めるシステム品質やコスト、期間に応じて判断していきます。私たちシステムインテグレータは、数多くのプロジェクトを経験してノウハウを蓄積しています。導入を安全・安心に進めたい場合は、困った際には、ぜひご相談ください。
多様なHRテクノロジーをつなぐデータ連携基盤を実現
NECが提供するERPシステムEXPLANNER/Axも、先頃、給与と人事のモジュールの提供を開始しました。人事データベースの要件として大切なデータの一元管理、お客様の規定に対応する給与計算機能などを備えており、お客様の人事・給与業務、ひいては従業員エンゲージメント向上を支えることができます。導入形態は、当社またはSIパートナーのSEによるプロジェクト型導入となります。お客様の業務要件をヒアリングし、確実にEXPLANNER/Axに実装します。
EXPLANNER/Axの製品コンセプトは「やさしい(User-friendly)」「つながる(Connectivity)」「つよくする(Strengthen)」の3つ。「やさしい」は、わかりやすい操作方法、「つながる」は、多様なシステムやサービスとの連携、「つよくする」は、データ活用支援などを指しています。
特に多様なシステムやサービスとの連携では、すでにCSV連携の機能は備えていますが、さらに容易に人事・給与システムを中核とするHRテクノロジーの連携を実現するための強化を図っています。具体的には、勤怠管理、タレントマネジメントなど、他社が提供する様々なシステムやクラウドサービスとマスタ連携を図り、個別の連携開発を行わずともシステム連携が可能になるデータ連携基盤の実現を予定しています。
NEC自身が取り組んできた人・カルチャーの変革の経験。そして、多くのお客様の人事・給与システムの構築をしてきたシステムインテグレータとしての実績を踏まえると、従業員エンゲージメントに必要なのは、次の3つに集約できます。
1つ目は、サーベイを起点に現状把握、対話、アクションのサイクルを回し続けるための人事データの活用。2つ目は、多様な働き方の実現やスキル向上支援といった従業員体験の向上。そして3つ目は人事部自身のエンゲージメント向上です。先ほど紹介した事例のように、バラバラに導入したシステムへの情報入力に追われ、人事部門が疲弊している状況では、従業員エンゲージメント向上のための取り組みをリードするのは難しい。人事部門自身のエンゲージメントは、極めて重要。業務をできるだけ効率化したり、工数をかけずにシステム環境を整備したりすることを意識する必要があります。
これらを実現するためのHRテクノロジーは、非常に充実しています。あとは、それをどのように活用していくか。EXPLANNER/Axは、人事・給与業務を支えながら、様々なシステムとデータをつなぐ連携基盤としても機能し、お客様の従業員エンゲージメント向上を強力に支援します。
(NECソリューションイノベータ 香山 知佳子)
(NEC 藤木 協子)
多様なHRテクノロジーをつなぐデータ連携基盤とは?
NECのEXPLANNER/Axは、人事・給与業務を支えながら、様々なシステムとデータをつなぐ連携基盤としても機能し、人事部門の業務効率化と従業員エンゲージメントの向上を支援します。