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2022年12月12日

アジア金融の未来を見通す
― Singapore Fintech Festival 2022

 国際金融センターランキングで世界3位となり、アジアの金融ハブとしても名高いシンガポールで、Fintech系最大のイベント「Singapore Fintech Festival」が今年も11月2日~4日に開催されました。3年ぶりのフィジカルイベントでしたが会場は過去最高の6万2千人超と多くの参加者で溢れ、シンガポール金融管理局による政策立案者の立場からの新しい構想や現在進行中のFintechプロジェクトの最新情報の発表などを皮切りに、参加企業らによる先進的な取り組みや魅力的なパートナーシップの紹介など、イベントは盛況のうちに終了しました。本稿ではシンガポール政府主導で実施されている取り組み、および出展企業として参加したNECの取り組みを紹介します。

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Singapore Fintech Festival 2022

 「Singapore Fintech Festival」(以下、SFF)はアジア地域の最大のフィンテックイベントの開催を目的に、シンガポール金融管理局(Monetary Authority of Singapore)(以下、MAS)が主催となって2016年から毎年開催されており今回が7回目の開催。今年のテーマは「Building Resilient Business Models amid Volatility and Change(変動と変化に強いビジネスモデルの構築)」で、世界115カ国・地域から金融機関や政策担当者などが参加。展示会では570社以上が出展し、また、25の国際パビリオンが参加し会場を盛り上げました。

 デジタルアセット/トークン化、ESG/サステナビリティに対するMASの取り組み紹介のほか、有識者たちによるパネルディスカッションも多く実施され、2023年も同テーマの取り組み・エコシステム形成は一層加速していくことが予想されます。

会場の様子(筆者撮影)

会場の様子(筆者撮影)

注目トピックス

 シンガポールでは政府主導で大手銀行とも連携した実証実験が数多く実施されています。SFFでは、Lawrence Wong副首相兼財務大臣が、テクノロジーの 5 つの Es (Enhance; Empower; Envision; Encourage and Engage) と、それらをシンガポールがどのように利用できるようにするかについて講演を行いました。また、MASのRavi Menon長官はシンガポールが数々のフィンテック構想を通じて実現したい5つの重要な成果、「 instant remittance (即時送金)」「 sustainability data (サステナビリティに関するデータ)」「programmable money(プログラム可能なお金)」「 atomic settlement (不可分決済)」「 tokenized assets (トークン化された資産)」を概説。これらの講演の中から、注目するべきトピックスを2つ紹介します。

・Programmable money/Purpose-bound Money (PBM)

 プログラマブルマネーとは、交換媒体そのものに使い方を定義するルールを埋め込んだお金を意味しており、このプログラムは貨幣をトークン化し、分散型台帳に載せることで実現される、と説明されています。SFF期間中の10月31日、MASはPurpose-bound digital Singapore Dollarの潜在的用途と必要な支援インフラを詳述した報告書を発表しました。このコンセプトを検証するため、MASは政府機関や業界関係者と、いくつかのトライアルを開始しており、SFF2022会場では選ばれた個人5,000人を対象に、会場の飲食店で使用できる商用デジタルバウチャーとしてPBMを発行する実験を実施しました。

 DBSとGovTechは、選ばれた個人への払い出しにPBMを利用するほか、OCBCと中央積立基金(CPFB)は、政府機関からの資金の払い出しにPBMを利用、UOBとSkillsFuture Singapore(SSG)は、現行のSSGクレジットの払い出しプロセスを強化するためにPBMを試験するなど、大手銀行も参画する先進的な取り組みとなっています。

デジタルバウチャーの受け取り画面
デジタルバウチャーの受け取り画面

・Green Fintech

 テクノロジーは気候変動への取り組みに不可欠な役割を果たすことが期待されています。特にESGデータの品質とアクセス性を確保し、グリーンウォッシング*に関連する懸念に対処するのに役立つと考えられています。MASは、KPMGとSingapore FinTech Associationと提携して、この分野における主要な使用事例と成長戦略を特定する予定であることを発表しています。また、SFF2022ではMASは積極的な模範を示すべく、イベント中のCO2排出量を測定し、次回以降のイベントに向けて脱炭素化への取り組みに役立てると宣言。そして金融とFintechがこの世界的な危機に対処するために必要であるという認識のもと、SFF会場ではESG Fintechゾーンを初めて設置しました。更にはFSTIに対しての新たな資金提供ではESG FinTechなどの新たな重点分野も設定するとの発表も行いました。

* 環境に配慮しているイメージの「グリーン」と、上辺を取り繕うさまの「ホワイトウォッシュ」を組み合わせた造語。あたかも環境保護に熱心であるように取り繕うこと。

 また、シンガポールはGreen financeの分野で中国との協力関係を強化しています。この協力関係「The China-Singapore Green Finance Taskforce」ではGreen financeの基準や定義、グリーン及び移行期の資金調達ソリューション、 Green financeの流れを促進するためのデータや技術の実現、中国や地域におけるグリーン投資の機会の強化といった分野における協力を模索していくようです。MASのRavi Menon長官は、気候変動や持続可能性に関するデータの収集、アクセス、利用の効率化を目指す「Project Greenprint」を通じて、シンガポールを、アジアと世界のネット・ゼロへの移行を促進するESG Fintechソリューションの発祥地としたいとの意思を表明しました。

NECの取り組み

 SFFは10月31日-11月1日の2日間で「Innovation lab crawl」、11月2日-4日の3日間はSingapore Expoでの本イベント(ExhibitionやPlenary Session等)が催されました。NECは両取り組みに計5日間フル参加をし、3年ぶりに開催されたこのグローバルイベントを盛り上げる一助を担いました。

・Innovation lab crawl(10月31日-11月1日)

 Innovation lab crawlとは、事前に参加申し込みをした顧客・パートナー候補を自社の研究施設に招き、オープンハウス形式で研究技術等を紹介する取り組み。シンガポールに拠点をおくDBSやUOB、VISAやMastercardといった現地大手金融機関ら26社が参加する中、NECは初参加を果たしました。会場としたNECシンガポール研究所の紹介のほか、欧州とイスラエルの両NEC研究ともオンラインでつなぎ、AI、顔認証、サイバーセキュリティやブロックチェーン等の研究技術、およびパートナー企業のソリューションを紹介しました。またそれぞれの日程ではResponsible AI、Web3.0をテーマにパネルセッションも実施し、来場者とのオープンなディスカッションを行いました。

Innovation lab crawlの様子(筆者撮影)

Innovation lab crawlの様子(筆者撮影)

・Exhibition(11月2日-4日)

 NECは2016年の第一回SFFから出展を行っており、今年も“Embracing Digital Banking Innovation and Transformation (デジタルバンキングの革新と変革を推進)” をテーマにブースを構え、BanqsoftとAvaloq等を紹介。シンガポールに拠点を構える金融機関の方々だけでなく、アジア各国の金融機関の方々にも来訪頂きました。

会場の様子(筆者撮影)

会場の様子(筆者撮影)

 3年ぶりの本格開催となったSFFの会場は世界各国からの多くの参加者で溢れ、こうした国際カンファレンスに対する企業・個人の意識や取り組みが、コロナ前同等レベル近くまで回復してきていると感じました。シンガポールでは政府主導で大手金融機関とも連携した実証実験が数多く実施されていることから、他国に先んじた事例が生まれることが期待されるため、引き続き政府・金融機関の先進的な取り組みに注目していきたい。

山口 博司(やまぐち ひろし)

NEC Asia Pacific Pte. Ltd.
Senior Sales Manager

システムエンジニアとして金融機関向け業務アプリケーション開発・システム企画を経て、2016年から2021年までシリコンバレーにて米国発の新技術・サービスの調査、活用の企画・推進に従事。2021年4月からAPAC地域の金融機関向けSalesを担当。マサチューセッツ州立大学MBA修了。 ΒΓΣ(Beta Gamma Sigma)会員。

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