2016年07月15日
インダストリー4.0最新動向、日本・ドイツ・アメリカが目指す未来とは
「モノ発想」から「アウトカム発想」へ、第4次産業革命では「実行力」が欠かせない(後編)
オープンイノベーションにはポジショニングが欠かせない
──さまざまな分野から、独自の強みを持ったプレーヤーが参入してきました。また、トヨタがテスラやUberに出資するなど、競合関係も複雑化しています。こうした構図をどう見ますか。

清水氏:
どこに「プロフィット・プール(利益の塊)」があるのかに着目すると理解しやすいでしょう。たとえば自動車であれば、従来は車を販売して保守点検をするくらいしか、企業とお客さまとの接点がありませんでした。それがUberの登場によって、デジタルデバイスを持つユーザーに「移動というアウトカム」が提供されるようになりました。
アウトカムの時代には、今までと見ている“ものさし”を変える必要があります。競合がだれかという構図は、今後さらに複雑化していきますが、お客さまを獲得していく競争の中で、モノづくりのプレーヤーもいれば、デジタル技術を持った異業種が参入してくることも、自然な成り行きです。
──オープンイノベーションといったときに、技術提携やM&Aなど、さまざまな選択肢があります。マーケットのエリアは広がり、「プロフィット・プール」の範囲、定義も難しくなるのではないでしょうか。
清水氏:
お客さまにどんな価値をもたらすか、そこで一番大事なのは、事業にキャッシュを生み続けるためのケイパビリティ(Capability:能力)の確保です。ケイパビリティの獲得には3つの手段しかありません。
(1)Buy(買う)
(2)Build(作る)
(3)Borrow(借りる)
買収はその1つの手段ですが、一概に買えばいいかと言うとそうではありません。買収したものの、自社のカルチャーにまったく合わなかったというケースもあるからです。「自分たちが何屋を目指しているのか」というポジショニングによって選択肢が変わってくるのではないでしょうか。
──「お客さまにとって何が価値になるか」というのと「自分たちが何屋になるのか」というのは、似ているようで違います。ポジショニングを規定する難しさはないのですか。
新野氏:
GEの取り組みで言えば、採算を上げるためにIoTやICTをどう活用していくかというテーマがあり、そのために我々の独自資源は何で、お客さまの課題はどこにあるのかというのを、お客さまと一緒に考える取り組みを行っています。
自分たちの課題がわかっているお客さまもいれば、わかっていないお客さまもいます。また、課題と認識していることが本質的な課題ではないかもしれません。強みや課題はお客さまごとに違いますし、同じお客さまでも工場ごと、ラインごとに異なります。
そこで、サービスデザインのようなワークショップをGEがファシリテーターとなって行っています。具体的には、UXデザイナーを動員して、デザイン思考のような手法でお客さまの本質的な課題を抽出します。
そして、それを解決するために何ができるかを考えます。「データサイエンティストが、今、取っているデータはこれで、こういうデータが取れればこんなことができる」というのを提案し、その場合の費用対効果を提示します。ワークショップによる課題抽出からプロトタイプ作りまで、3~4カ月くらいかけて実施します。