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2016年07月15日

インダストリー4.0最新動向、日本・ドイツ・アメリカが目指す未来とは

「モノ発想」から「アウトカム発想」へ、第4次産業革命では「実行力」が欠かせない(後編)

デジタル化時代にビジネスを成功に導く「7つの必要条件」とは

──今後、インダストリー4.0で、ものづくりはどのように変わっていくと思われますか?

新野氏:
 お客さまのアウトカムにフォーカスしていく、ということに尽きます。そして、自社の製品技術を忘れて、お客さまのために何ができるかを考えるカルチャーチェンジを、社員一人ひとりが実行できるかにかかっています。

 GEとしては、日本市場でエコシステムを広げていきたいと考えています。色々な形態がありますが、SIベンダーや、キャリア、ソフトウェアベンダー、デバイス、センサー技術など、賛同いただける企業に参加してもらい、お客さまのアウトカムに早く到達できるようなエコシステムを構築していきたいです。

清水氏:
 21世紀の天然資源は「データ」になると考えます。プロダクトであれ、ネットワークであれ、ソフトウェア主導の方向にシフトしていくでしょう。ソフトウェアから収集したデータが、何らかのアナリティクスを経て、情報やインサイトとなります。その情報・インサイトを見て今後経営者は判断していくことでしょう。

 10年後には、経営者が判断するための源泉となるデータを持っていない企業は、コンシューマ、インダストリアル分野とも、競合に市場を奪われてしまうほどの変革が起きているはずです。

 産業の分野でも、たとえば、製造ラインで今までと違う挙動を示したときに、デジタル技術が察知して、把握して、洞察して、ラインを変えていく。これが、製造業における新しい価値の出し方だと思います。

──日本企業はどうしたらいいでしょうか。

清水氏:
 デジタル化時代を勝ち抜いていくための7つの必要条件があります。
1つ目は、「トップのコミットメント」です。企業にとっては、今の事業を続けているほうが楽ですが、10年後にはまったく違う世界になります。それに向けて、自社のポジショニングを明確にし、トップ主導で不退転の覚悟で進んでいくことです。

 2つ目は、顧客理解に基づく「課題の設定力」です。顧客がどういうビジネスをしていて、何を課題に感じているのかを明確にします。シリコンバレーのデジタル企業の経営者は、「今の延長線上で何かを良くする」という発想ではなく、「世の中でできないことをテクノロジーで可能にする」と考えています。インダストリアルの世界でも、お客さまのビジネスでできないことを可能にする課題の設定力が欠かせません。

 3つ目は、「ビジネス構想力」です。課題を解決し、どう収益を上げていくか。従来のコスト積み上げの発想でなく、バリューを収益化するビジネス構想力が求められます。。

 4つ目は、「ソリューション力」です。データサイエンティストやUXデザイナーなど、デジタルビジネスを実行するケイパビリティが必要です。

 5つ目は、テストするための「データとフィールド」です。実際に顧客に対して新たなサービスを展開し、その利用状況や示唆を得るためのフィールドが重要です。

 そして6つ目は、フィールドテストで取得したデータを検証し、サービスを改良する。このプロセスを高速回転で実行できる「オペレーション力」です。行動や判断にスピードを加えることが最も重要と言えます。

 最後の7つ目が、「スケールさせる力」です。これは、内部に閉じたプラットフォームだけで思考するのではなく、拡張性ある広汎なプラットフォームとして関連のプレーヤーとエコシステムを作ることが求められます。

──この7つを実行していくことが必要だということですね。

清水氏:
 この7つは、インダストリー4.0、インダストリアル・インターネットの時代にビジネスモデル転換をするための「必要条件」だと思います。私たちは、よく「成功要因を教えてほしい」と言われますが、成功要因には100%の再現性がありません。反面、失敗要因は、100%再現できます。失敗しないためには、成功要因ではなく、「必要条件」に則ることが大事です。たとえば、先述したようなGEのワークショップを活用することなども1つの方法です。

 日本はまだまだ、オートメーション、産業機械、自動車などのインダストリアル領域が強く、元気です。そのインダストリアル領域で、顧客接点を強化し、お客さまに近づいて価値を生み出していくために、事業のポジショニングを変える戦いが始まってきました。何度も繰り返しますが、「手段」ではなく「成果」が求められており、そのためには実行することが大事なのです。

──アウトカムをベースに「拙速でいいから実行する」。これが、今回の対談の結論であり、日本企業へのメッセージと言えそうです。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

(インタビュー=フロンティアワン 代表取締役 鍋野 敬一郎、ビジネス+IT 編集部 松尾慎司)

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