2017年01月31日
「ビッグデータ」の“次”を見据えて。NECのAI技術が切り開く「新しい世界」とは?
人間の脳を“再現”する究極の省エネコンピュータ
ビッグデータの活用に社会の注目が集まる一方、現実世界においては、自然災害や突発的な異常事態など、少ないデータを使って分析・予測を行わなければならないことも珍しくない。また状況によっては、大きな電力などの十分なリソースを確保できないケースも多い。NECはこうした状況を踏まえ、オープンイノベーションによって、莫大なコンピューティングリソースを必要としないエッジコンピューティングへの取り組みを加速している。この背景には、NECが提供する社会ソリューションが、「監視・異常検知」から「インフラの最適化」、「都市全体の最適化」へと高度化していくのに対応して、それを支えるコンピューティング技術も、「認識・見える化」「規則性の発見」「高次判断支援」など処理の高度化が求められるという、「技術進化の連動ニーズ」がある。「都市全体の最適化」まで実現するためには、大量のデータを収集して、より広く、深い内面や因果関係を理解し、規則性をより緻密に、素早く検出し、リアルタイムに反応して、高次の判断を下すことが不可欠だ。そしてリアルタイムに対処するためには、リソースが広域に分散する「エッジ」においても、従来のデータセンターと同等のパフォーマンスが必要になる。

大阪大学、東京大学とともに開発が進められる「脳型コンピューティング技術」も、こうした考え方がベースにある。NECは人の脳が、わずか20W程度の消費電力で、認識や思考など高度な処理をしているという点に着目。脳を“再現”するコンピュータの実現に向けて、大阪大学とは、ポストディープラーニングを実現する脳型情報処理アーキテクチャの確立を目指し、2016年4月に「NEC ブレインインスパイヤード・コンピューティング協働研究所」を設立した。また、東京大学とは、脳や神経系を模倣した超低消費電力プロセッサの研究開発を行うほか、社会での実装のための倫理・法制度、人材育成についても検討するパートナーシップ協定を結んでいる。同プロセッサは、脳型コンピューティング技術への利用だけでなく、広く電力面の課題解決に寄与する成果として期待されている。
一連の研究が結実すれば、従来のAI機能をはるかに凌駕する高度な機能を獲得するはずだ。AIが人間とインタラクティブに協働し、人間の判断能力を必要とする多様な犯罪予防や小売店での緻密な接客、計画や戦略の立案など、社会的価値が極めて高い、現状のAIの延長では実現困難な高次判断の支援をすることができるようになる。