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2017年01月31日

「ビッグデータ」の“次”を見据えて。NECのAI技術が切り開く「新しい世界」とは?

 地球規模での人口増加、都市部への人口集中を背景に変貌を続ける社会――。よりよい世界の実現のため、NECはデジタル技術を通じてどのように社会価値の創造に貢献していくべきなのか。NECの研究開発に関する記者発表会が2016年12月16日、中央研究所の主要拠点である神奈川県川崎市の玉川事業場で開催され、執行役員 西原基夫が未来を見据えた研究開発方針を説明。また、特設会場では、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」を中心とした最新の研究成果が、デモンストレーションを交えながら披露された。

「ワンランク上の価値創造」の姿勢が、AIの実用化を強力に推進

 NECの社会価値創造ポリシーを支えるのは、研究所としてワンランク上の価値創造を目指す、という姿勢だ。将来技術ビジョンとして、同社の将来事業を支える5つの技術進化軸が掲げられる。「実世界を理解するセンシング」「人の知性をアシストするAI」「脳に倣うコンピューティング」「エッジに広がるクラウド」「IT・人・モノの全体のセキュリティ」。これらの軸に沿って技術を進化させ、社会ソリューションの開発に結びつける。今回披露された成果は、いずれもこの進化軸に沿って開発された画期的な新技術。NECのAI技術は従来の限界を打ち破り、実社会を変革するための第一歩を踏み出した。

 では、「実社会を変革する」とはどういうことなのか。従来のAI技術は、分析の対象がデジタルデータであり、体系的に整理されていることが前提だ。しかし現実世界では、デジタル・アナログの両データが渾然として入り交じり、その深層部分を現状の技術で把握することは不可能に近い。AIが実社会にかかわる「入り口」とも言うべきこの難関を突破したのが、NECの得意分野である映像、音声認識の技術だった。

視線の方向・動きを検出して不審な行動を事前に察知

 今回の説明会で初めて披露された「遠隔視線推定技術」は、一般的なモノクロの監視カメラ映像を使って、10m以内にいる複数の人の視線の方向や動きを検知する技術。同技術は、NECの誇る顔認証技術をベースに開発されたもので、顔認証技術は、米国国立標準技術研究所(NIST)のベンチマークテストで3回連続第1位の評価を獲得している。

遠隔視線推定技術

 この技術は主に群衆の集まる場所での犯罪抑止に威力を発揮する。従来の顔認証では、あらかじめデータベースに犯罪者・要注意人物の顔画像を登録して、そのデータと照合することでリアルタイムの検出を行うという仕組みだった。

 しかしこの手法では、犯罪者・要注意人物としてリストアップされていない人物の不審な行動は見逃されてしまう。「遠隔視線推定技術」は、人物の黒目・白目のパターンを解析することなどで、その視線の方向と動きを検出。例えば犯罪を計画する人物が、非常口などの脱出経路を何度も確認したり、離れて歩く複数の人物が、不自然に視線を交わし合ったりする行為を検出することで、対象の監視強化など事前対応を可能にする。

 将来的には犯罪予防だけでなく、買い物客の視線の動きから購買心理の変化を解析するなど、マーケティング領域への応用も期待される。

迅速な初動対応を可能にする“犯罪関連音”の高精度抽出

 同様に犯罪抑止領域でのブレイクスルー技術として注目を集めたのが「音状況認識技術」。NECが2016年11月に発表した技術で、音響検知の国際的コンテスト「DCASE2016」で第1位を獲得している。同技術は、群衆や雑踏で発生する雑多な音の中から、「口論」「ガラスの割れる音」「破裂音」など犯罪を予感させる音をリアルタイムで検知し、迅速な初動対応を可能にする。

 仕組みは、マイクを通じて収集される多種多様な音の周波数パターンを解析することで、対象となる音のみを高精度で抽出する。同社の30年以上にわたる音声信号処理技術研究を結実させた成果であり、通常、人が気付かないほど小さな音量レベルでも検出が可能。暗がりや建物の死角といった、カメラ映像ではチェックできない状況でも、監視機能を発揮する。

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