2017年04月05日
未来企業共創プログラム 開催レポート
創発リーダーシップを科学する
重要なことは市民が決める
第10回マニフェスト大賞を受賞した静岡県牧之原市長の西原茂樹氏は、行政にフューチャーセッションの手法を取り入れて、地方創生の文脈で「産官学金労言」と言われるその前から他セクターとの協働による市政を行ってきました。「一億総活躍」の基盤として市民一人ひとりが「主役」であることを知らせ、認めるプロセスにより市政を推進している実態について紹介してくださいました。
西原氏:
牧之原市が注目を集めるようになったのは2015年、第10回マニフェスト大賞で受賞したことがきっかけです。これはこの10年の取り組みが評価された結果です。私は市長就任4期、12年目を迎えます。市長になったころは、ちょうど市民みんなで何かをやる「協働」が注目を集め始めたころでした。そこで、市民参画と協働を推進する「フォーラムまきのはら」を立ち上げました。
みなさん、会議って何だと思いますか?「結論を出す場」「意見を出す場」「意思決定をする場」という声がありますが、私が聞いたのは「相手の話を聞く場」ということでした。大切なのは内容よりもプロセスなのです。対話というプロセスを通して、当事者である市民たちのやる気を引き出した。つまり、やる気というのはプロセスに参加するかどうかなんですね。産官学金労言のさまざまなステークホルダーを巻き込んだ対話の場を作ったことが、結果として参加者全員のやる気を引き出したということです。
重要なことは市民が決める。人は誰もが、自分が描く世界の中心で主役をやっています。だから、みんなを主役にしてあげればいい。そうすれば誰もがみんな一生懸命にやってくれると私は思うのです。一億総活躍と言いますが、そのためには、まず、一人ひとりが主役になれる社会を作ることが大切です。人は主役になればやる気を出します。家族のために俺は頑張る、地域のために、国のために、と考える人が一人でも増えてくれたら、社会はもっとよくなっていくと考えます。
Are you happy?
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社の島田由香氏は、脳科学やコーチング、さまざまなアカデミックな理論を援用しながら人事のマネジメントに取り組んでいます。その視線のベースにあるのは“人”。「人が好きすぎて人事になった」という島田氏が語る“人”へのアプローチは、理論的で、かつ、感覚的にも腑に落ちるもの。この日のリーダー論をそのまま包含するような多様で多彩な思考の枠組みを紹介してくださいました。
島田氏:
私が大切にしているのは、毎日笑顔でいるということ。「幸せ」はひとつキーワードになると思います。みなさんにお尋ねします。「Are you happy?」
(会場からは「Yes!」の声と共に大多数の挙手)
ありがとうございます。私は「Are you happy?」と聞かれて、即座にYesと答えられる人を世界で増やしたいと思っています。そして、ハッピーかどうかという点に、リーダーシップもリーダーのあるべき姿も直結していると思っています。
ユニリーバが定義するリーダーの特性は、「目的(Purpose)」「多様性(Diversity)」「レジリエンス(Resilience)」「判断力・決断力(Judgement)」「必要なリスクを取る力(Risk Taking)」「素の自分(Authenticity)」の6つです。ユニリーバCEOであるポール・ポールマンのPurposeが非常に明確で、ユニリーバのPurposeとも共通しているので、社員はスッと理解できるのです。
また、ポール・ポールマンは、この先、さらに予測不可能な世界になった時に必要とされる「Outstanding Leader」(特に優れたリーダー)について語っています。Outstanding Leaderは次の4つを理解し実行する人。まずは、「グローバルな課題に前向きに貢献する」こと。目の前のことだけでなく、世界を大きく捉えてメガトレンドを読み、自分の一挙手一投足が世界にどう関係していくかを考えられる人。そして、「明確な価値観と深い目的意識に基づき行動する」こと、「透明性の力を理解している」こと。最後に、これは重要なキーワードで「他者に投資し、他者を成功に導こうとする意志を持つ」こと。他人の成功を心の底から喜ぶことができる人です。
ユニリーバで取り組んでいる「WAA」(Work from Anywhere & Anytime)についても紹介します。WAAは、どこで働いてもいい、いつ働いてもいい、という働く時間と場所の制約を排除するものです。そして、残業時間を減らすこと。月平均で45時間以下という目標を立てました。では、なぜ、WAAを導入したのか?それは会社を強くするためです。会社で一番大切な「人」を強くするためにはどうしたらいいか。「強い」というのは、ここでは「それぞれが持っている能力を余すところなく発揮できる状態」くらいの意味。具体的な数値目標は設定せず、ビジョンで定義しています。「よりいきいきと働き、健康で、それぞれのライフスタイルを継続して楽しみ、豊かな人生を送る」というビジョンです。
最後に。私は、People(人)、Passion(情熱)、Purpose(目的)をイノベーションの3つのPと呼んでいます。Passionを持つのは人ですし、Purposeを持つのも人。つまり、私たち“人”というのが、何よりも一番大事だということを申し上げて、終わりにします。