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未来企業共創プログラム 開催レポート

創発リーダーシップを科学する

2017年04月05日

※未来企業共創プログラムは、一般社団法人企業間フューチャーセンターの主催、株式会社岡村製作所・大成建設株式会社・日本電気株式会社の共催イベントです。

経営学の世界でホットなトピックスのビジネスリーダー論

 経営環境が激動する今、どのようなマインドを持つべきなのでしょうか。「経営マインド」「イノベーション」「新しい関係性」という3つの切り口で新しいリーダーシップのあり方を「未来企業共創プログラム」では模索します。

 最終回となる第3回を2017年2月16日に開催しました。テーマは「創発リーダーシップを科学する」。ゲストスピーカーには、早稲田大学ビジネススクール准教授の入山章栄氏、フューチャーセッションの手法を全国に先駆けていち早く取り入れ話題となった静岡県牧之原市の西原茂樹市長、そして、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社の島田由香氏。ゲストスピーカーからの事例紹介後には、会場参加者全員によるテーブルダイアログを行い、“未来企業”に向けた共創への足がかりを共有しました。

両利きの経営を

 ピッツバーグ大学経営大学院でドクターを取得後、ニューヨーク州立大学で3年教鞭を執り、現在は、早稲田大学ビジネススクールで准教授を務めている入山章栄氏。入山氏からは、経営学の世界的潮流の中で論じられているリーダーシップ論を紹介していただきました。

入山氏:
 素晴らしい経営者のみなさんとお会いすると、個性の違いはいろいろあれども、決定的に共通している重要な特徴がひとつあることが分かります。全員が非常に明確に会社、またはご自身のビジョンを持ち、面白く魅力的に語るストーリーテラーであるということです。ベンチャー企業や起業家ではよく言われますが、実は大企業でも同様です。企業の規模に関係なく、優れた経営者は優れたビジョナリーであり、優れたストーリーテラーなのです。そして、これが今の日本のリーダーシップでもっとも重要であり、もっとも欠けているものだと思います。

 では、それはなぜなのか。経営学的な裏付けがきちんとあるのです。そのひとつが「知の探索」です。イノベーションにおいて知の探索が重要であるというのは経営学においては世界標準です。新しい知とは、今ある既存の知と、別の今ある既存の知との新しい組み合わせです。新しい知とは、ゼロからは生み出されません。しかし、実際にやるのは難しい。人間の認知、脳には限界があるために、どうしても目の前にあるものだけで組み合わせてしまう傾向があるからです。大企業は、目の前にある組み合わせをやり尽くしています。なので、イノベーションを起こせない。イノベーションを起こす第一歩で重要なのが、できるだけ自分から遠く離れた知を幅広く探索すること。それを自分の持っている知と組み合わせていくということです。これが「知の探索」です。遠くを多様に見て探索し、見つけた新しいものを自分が持っているものと組み合わせることがイノベーションにおいては何よりも重要です。同時に、いろいろ組み合わせた中で、「これは行けそうだ」というものはさらに深めることも大事です。それが「知の深化」です。イノベーションにおいては、知の探索と知の深化、その両方をやる「両利きの経営」であるべきだというのが経営学者のコンセンサスになっています。ところが、どうしても知の深化のほうに偏ってしまう傾向があります。

 知の深化というのは、短期的な予算の獲得には良いのですが、知の探索を疎かにしていると知が足りなくなり、中長期的なイノベーションが枯渇します。これを経営学では「競争力の罠」(Competency Trap)と言います。Competency Trapに陥らないためには、知の探索を促す施策をしなければなりません。ダイバーシティもそうですし、オープン・イノベーションと呼ばれる取り組みもそう。新しい知と知の組み合わせを起こさなければならないわけですが、ここで重要なのがリーダーシップ論です。

 今、世界的にコンセンサスになっているのが2つのリーダーシップ論です。ひとつが「トランザクティブ・リーダーシップ」。部下をきちんと見て把握し、成功すれば報酬を与え、失敗したらコミュニケーションしてフィードバックする。信賞必罰の管理型リーダーです。もうひとつが、今、世界的に注目されている「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ」、啓蒙型リーダーです。長期的ビジョンを語り、部下の内面的な意識を啓蒙し、知的好奇心を刺激してモチベーションを上げる。こういうのをやろうぜ!というタイプです。どちらも重要なのですが、統計解析に基づく分析で、現代では後者のトランスフォーメーショナル・リーダーシップが重要と言われています。理由は、世界が不確実になってきているからです。不確実だからこそ、ビジョンを掲げて「ついて来いよ!」とやらないといけない。それが今の日本には欠けている。そして、その裏付けになるのが「センスメイキング理論」です。不確実性の高い現代において、変化は激しくどんな変化が起きるも分からない。技術ひとつとってもどう進展するかさえ分からない。そんな世界だけれども、我々は意思決定し、前へと進まなければなりません。そのような時に絶対にやってはいけないのが「正確な分析」なのです。正確な分析自体が悪いわけではなく、それだけに頼ってはいけないということ。不確実性が高すぎて、正確な分析自体があてにならないし、分析して結果を待っている間に世の中は変わっていってしまう。だから、不確実な世界にあっては、正確性よりも納得性が重要になります。正解は分からないけど、私はこうなると信じているというビジョンを掲げ、ステークホルダーを巻き込んで前へ進んでいくことが必要になる。つまり、リーダーにもっとも必要な資質は、繰り返しになりますが、ビジョンを掲げ、魅力的なストーリーで語り、仲間に納得してもらい、前へ進めていく力ということになります。そして、それを支えるのが、知の探索であり、トランスフォーメーショナル・リーダーシップであり、センスメイキング理論なのです。

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