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大和証券グループが挑む、金融×バイオテクノロジーによる豊かな人生100年時代の実現

 いま、日本社会は大きな転換点を迎えている。医療技術の進歩によって平均寿命が延び、「人生100年時代」という言葉が現実味を帯びてきており、寿命を伸ばすだけでなく、いかに健康に生活できる期間を伸ばすかに関心が高まっている。また、30年にわたるデフレの終焉や金利ある時代への移行など、経済環境も大きく変化しつつあり、老後の生活資金確保のための安定的な資産運用が求められている。人々が長寿社会を安心して生きるためには、持続的な健康維持と資産形成の双方が不可欠な要素になっているといえるだろう。

 こうした社会の変化を受けて、これまでにない付加価値を備えた金融サービスへの関心も高まっている。なかでも7月にNECとそのグループ会社であるフォーネスライフが開催した「【AI×ヘルスケア】タンパク質データを活用した研究セミナー」において、大和証券グループ本社が紹介した両社の協業により実現したサービスは、金融×バイオテクノロジーによる新たな予防医療と資産運用の連動の可能性を感じさせるものだった。果たして、テクノロジーの発展は私たちのライフデザインをどのように変えてくれるのだろうか。

健康寿命と資産寿命の延伸を目指して

 「2007年以降、大和証券では効率的かつ手軽に国際分散投資を実践できるダイワファンドラップを提供してまいりました。お客様の運用ニーズをヒアリングし、最適なポートフォリオ運用を提供することで、お客様から好評をいただいております。退職者層を中心としたお客様のお悩みを丁寧にヒアリングしていくなかで、充実した不安の少ないセカンドライフの実現のためには、長期の資産形成・運用に加えて健康維持に対するニーズが大きいのではないかという思いを持っておりました。」

 そう語るのは、大和証券グループ本社 経営企画部の上橋賢一氏だ。

大和証券グループ本社 経営企画部 上橋賢一氏

 上橋氏によれば、ダイワファンドラップを契約する顧客の多くは退職後のセカンドライフを迎えた60代以上の人々であるという。大和証券が2024年に顧客に対し実施したアンケート調査によると、60-70代において、「健康」と「資産運用」が最も関心の高いテーマという結果が得られたそうだ。背景には、将来の生活に影響を与えるような疾病が若年層よりも身近な課題になる点があると上橋氏はいう。

 「内閣府の調査*によると、70代後半で何らかの循環器系の疾病を抱えている、とご回答された方は46.1%もいらっしゃるそうです。大和証券のお客様にお話をお伺いする中でも、同世代と健康について話す機会が非常に多くなっているという声を多くお聞きしました。私たちとしても資産運用だけではなく健康の面からお客様をサポートすることで、お客様の不安を解消し、より充実したセカンドライフを過ごしていただきたいと考えるようになりました」

 そこで大和証券がパートナーとして選んだのが、NECとそのグループ会社、フォーネスライフだった。フォーネスライフは米国SomaLogic社が開発した約7,000種類の血中タンパク質の解析技術にNECグループのAI・解析技術を組み合わせた世界初の検査サービス「フォーネスビジュアス」を提供していることで知られている。NECと大和証券グループは2022年から社会課題解決に向けた事業共創を開始しており、その一環として大和証券では2024年から「健康サポート特典」としてラップ口座の契約者へフォーネスビジュアスの利用機会を提供しているという。

 「将来の疾病リスクを可視化して健康的な生活を支援するフォーネスビジュアスと、お客様のニーズや資産の状況に応じて最適な資産運用スタイルを提供するダイワファンドラップ、両者をかけ合わせることで、お客様の健康寿命と資産寿命の双方を延伸するお手伝いができると考えています」

フォーネスビジュアスとの協業概要

金融×バイオテクノロジーに潜在する可能性

 両社のコラボレーションは、資産運用における現状把握・アドバイスに基づく運用戦略の策定・投資の実行・運用結果のレビューというサイクルとフォーネスビジュアス検査・コンシェルジュへの健康相談に基づく生活習慣改善プログラムの検討・生活習慣改善の実践、生活習慣改善プログラムの再検討というサイクルの類似性に着目することで生まれたものだ。

 たとえばダイワファンドラップにおいては、顧客の意向をヒアリングし、定期的なアドバイスを通じて一人ひとりの顧客に合わせた資産運用を実現していく。他方で、フォーネスビジュアスは、まず血液検査によって各種疾病リスクを予測し、コンシェルジュとの相談などを通じて、一人ひとりの顧客に合わせた行動改善プログラムを展開していく。

 「どちらも現在直面しているリスクやお客様のご希望・ニーズを把握し、それに基づいた相談や具体的な取り組みを展開するという点で共通しています。このサイクルを何度も繰り返していくことで、健康と資産に関する不安を低減し、よりアクティブで前向きなシニアライフを支援していきたいと考えています」

 そう上橋氏が語るように、健康と資産運用、双方の達成が重要なポイントだ。

 フォーネスビジュアスを通じて生活習慣を見直すことで、健康な状態が長く続けば、就労期間の延長による収入の増大や医療・介護にかかる費用の節約が可能になり、セカンドライフにゆとりが生じるとともに、ひいては中長期的な資産形成にも影響を与える可能性がある。

 大和証券の金融サービスとNEC/フォーネスライフのバイオテクノロジー、両者は一見縁遠いもののように思えるかもしれないが、一人ひとりの人間が生きていくうえで、資産も健康も生活を支えてくれるという点は共通している。すこやかに暮らせる方が前向きな資産形成に取り組めるのはもちろんのこと、健康リスクに応じて金融商品を最適化し予防医療と資産運用を連動させていくこともありうるだろう。人生100年時代に豊かな暮らしを実現していくためには、むしろ金融×バイオテクノロジーにこそ、新たな可能性が眠っていると言えるはずだ。

資産コンサルティングとフォーネスビジュアスの比較

専門コンシェルジュによる一人ひとりに合ったアドバイス

 本サービスは開始から10カ月程だが、お客様より前向きなフィードバックが得られていると上橋氏は語る。

 「当初私たちが想定していた、健康リスクの不安が高まっていく退職者層を中心としたお客様から多くのお申し込みをいただいています。健康と資産運用の双方からセカンドライフを支援したいという我々のメッセージがダイレクトにお客様に届いたものと実感しています」

 資産運用と健康のかけあわせにより、金融商品のプロモーションの新たな可能性を開拓したと言えるだろう。

 申し込み状況を見ても、2024年8月のサービス開始以降、継続的にこの「健康サポート特典」の申込者数は増えている。

 フォーネスビジュアスを体験した顧客へ行ったインタビューでは、ポジティブなフィードバックが多く得られているという。

 「お客様からフォーネスビジュアスの先進性に対する驚きの声を頂戴しています。血液検査だけで現在の体の状態と将来の疾病リスクを把握できる手軽さに加え、分析結果を示すだけでなく専門のコンシェルジュからお客様の健康状態と生活に合った生活習慣改善に向けたアドバイスをもらえることが高い評価をいただけたポイントだと考えています」

 そう上橋氏が語るように、顧客満足度の高さはコンシェルジュからのアドバイスに起因していると言える。コンシェルジュへ相談したことで検査結果への理解が高まるとともに、生活習慣改善への意欲も高まり、結果としてサービスへの満足度も向上する傾向が見られている。こうした結果は、まさに今回の協業が当初から目指していた健康管理と資産運用のサイクルがうまく回りはじめているからこそ得られたものだと言えそうだ。

人生100年時代の新たなライフスタイルを支えるコラボレーション

 両社の協業による取り組みはまだ始まったばかりだ。フォーネスビジュアスを通じたパーソナライズされた健康管理の実現に向けて、今後もサービスの改善を続けてほしいと上橋氏は続ける。

 「長期的な視点から見れば、フォーネスビジュアスにとって3つのポイントが重要となると考えています。まずは、消費者の理解・認知度の向上。2つめは、結果に応じたパーソナルな情報提供。そして、健康増進に向けた活動支援です。これらを達成することで、お客様の長期にわたり安心して暮らせる豊かな生活を両社で実現できるはずです」

 なかでも重要なのは、消費者の理解・認知度の向上だと上橋氏は指摘する。近年、疾病リスク予測サービスは世界的に見ても注目されており、遺伝子検査をはじめ、ひとくちに疾病リスク予測と言ってもさまざまなものがあり、その差異が伝わりづらいことも事実だ。フォーネスビジュアスは一生を通じてほとんど変わることがない遺伝子と違い、日々の生活のなかで変化するタンパク質に着目している。約7,000種類以上の血中のタンパク質を一括分析するという世界唯一の技術は、類似のサービスと比べてみてもより大きな強みと言えるだろう。

 同時に、ただリスクを予測するだけでは人々の行動が変わるわけではない。疾病リスクを下げるためにはどんな行動をとるべきなのか、一人ひとりの体質やライフスタイルに合わせたパーソナルな情報提供を進めていくことは、これまで以上にサービスの満足度を上げていくことにつながるはずだ。もちろん、実際に生活習慣を改善していくためには、何より行動を継続しなければいけない。上橋氏が「コンシェルジュサービスの進化や他社様との連携による健康増進サービスの拡充など、今後も両社で議論しながらお客様の行動変容を支援していきたいですね」と語るように、今後はさまざまなサービスとの連携によって、より顧客が行動を続けていきやすくなるようなプラットフォームが構築されていくかもしれない。

 大和証券とNEC/フォーネスライフの協業は、単なる商品・サービスの組み合わせを超えて、人生100年時代における新たなライフスタイルを提案するものと言える。健康寿命と資産寿命の双方を延伸することで、より豊かで安心できる人生を実現する──この取り組みは、高齢化社会を迎える日本において、多くの人々にとって重要な指針となるだろう。金融業界とヘルスケア業界の垣根を越えた協業は、この日本社会の未来を明るくしてくれるはずだ。

  • 本記事は2025年7月18日に実施されたセミナーの内容をもとに作成しております。また、大和証券グループによる特定の運用商品の勧誘を目的とするものではありません。