店舗同等の機能と専門性を持つオンライン・コンサルプラザ
お客さま接点の価値を高める三井住友信託銀行の挑戦
人口減少やライフスタイルの変化を背景に、企業の顧客接点は大きな転換期を迎えている。三井住友信託銀行は、新たな顧客接点として「オンライン・コンサルプラザ(OLCP)」を展開し、オンラインでも店舗と同じ価値を届けることを念頭に専門性の高い相談や手続きを完結できる体制を整えてきた。利用が拡大するOLCPの今後を見据え、同社は架電業務の効率化とサービス品質の均質化を目指し、クラウドを基盤とする変革に取り組んでいる。
店舗と同じことができるオンラインの次世代型お客さま接点
人が対応することを前提としてきた業種では、人口減少の進行により人材確保が年々難しくなり、拠点の統廃合も進んでいる。その一方、共働き世帯の増加やパンデミックを契機とするライフスタイルの変化によって、お客さまからは時間や場所に縛られない相談や手続きを求める声が広がっている。
こうした社会環境の変化を背景に多くの企業がオンラインの顧客接点強化に取り組んでいる。信託銀行としての専門性を強みに、個人・法人の双方に対して預金や資産運用に関するサービスを提供している三井住友信託銀行も、その一社だ。
同社はインターネットバンキングに関するヘルプデスク、多様な問い合わせに対応するインフォメーションデスク、スマートフォンアプリなど、目的に応じて複数のオンラインチャネルを展開している。それらの中核と位置付けているのが「オンライン・コンサルプラザ(OLCP)」である。
OLCPは、問い合わせ対応を主とする一般的なコンタクトセンターとは役割が異なる。単なる問い合わせ対応にとどまらず、資産運用や相続、住宅ローンなどに関する専門的な相談に加え、大方の手続きまでをオンラインで完結できる点が特徴だ。同社はOLCPを店舗と同等の機能と専門性を備えた「次世代型お客さま接点」と位置付け、そのための体制や仕組みを整えてきた。
「営業店を中心とした対応だけでは、平日日中の来店が難しい現役世代のお客さまや近隣に店舗がない地方にお住まいのお客さまへの対応が難しくなっていました。そこで、オンラインであっても店舗と同じ価値を提供できることをコンセプトに据えてOLCPを構想しました」と同社の田中 李佳氏は語る。
チャネル営業推進部
オンライン業務チーム
調査役
田中 李佳氏
架電業務の効率化とサービス品質の均質化に取り組む
既にお客さまの約4分の1を担当するなど、OLCPは同社のビジネスにおいて重要な役割を担う存在となっている。今後の利用増加も見据え、同社はOLCPを支えるシステムの高度化が必要だと判断した。
システムの高度化に向けて、同社は2つのテーマを掲げた。1つは架電業務の効率化である。
OLCPでは、オンライン相談の案内や既存のお客さまへのフォローのためにコンサルタントが架電業務を行っている。対象となるお客さまに1件ずつ電話をかけ、つながったお客さまに対して提案や案内を行うのだが、従来の架電業務は人手に大きく依存していた。
「コンサルタントが手作業で電話をかけていましたが、時間帯やお客さまの属性によっては7~8割がつながらないことも珍しくありませんでした。また、つながった場合でも、事前準備から発信、通話、会話内容を記録する後処理までを含めると、1件当たり約8分を要しており、対応できる件数には自ずと限界がありました」と同社の大西 健司氏は語る。
チャネル営業推進部
オンライン営業チーム
セクション長
大西 健司氏
もう1つのテーマはサービス品質の均質化だ。
今後の利用拡大に対応するには、システムの整備だけでなく人員そのものの拡大も求められる。この人員拡大において、同社はBCP(事業継続計画)や人材確保の観点から、同一拠点に集約するのではなく、複数の拠点にコンサルタントを分散させながら体制を拡大していく計画を立てている。
「拠点が分散すると難しくなるのがサービス品質の維持と向上です。お客さまから見ればOLCPは1つですから、どの拠点のコンサルタントであっても同じ水準で対応しなければなりません。同一拠点内であれば、お客さまとのやり取りを目の前で見ながら相談や改善を行い、伝えやすい説明方法などをすぐに共有できましたが、拠点が分散するとそうはいきません。別の方法でサービス品質を担保していく必要がありました」と田中氏は語る。
標準機能や金融機関の統制要件を踏まえクラウドサービスを採用
この2つのテーマを据えて同社は次期システムの検討を開始。複数の提案を比較検討した結果、最終的にNECが提案したクラウド型エクスペリエンス・オーケストレーション・プラットフォーム「Genesys Cloud(ジェネシス・クラウド)」の採用を決めた。
採用の決め手となったのは、以下の3点である。
- (1) OLCPの拡大計画に合わせ、柔軟に拡張していくにはクラウドサービスが最適
- (2) Genesys Cloudが架電業務の効率化や拠点分散を前提とした運営に必要な機能の多くを標準機能として備えている
- (3) 導入支援を行うNECが金融分野で培ってきた豊富なノウハウを評価
「金融機関である当社のシステム導入においては、セキュリティや内部統制など、非常に多くの要件があります。そうした要件に一つひとつ対応しながら、安心して運用できる仕組みを整える必要がありました。金融分野で多くの実績を持つNECであれば、これらを任せられると考えました」と同社の加藤 圭利氏は語る。
デジタル企画部
主任
加藤 圭利氏
架電数は約2倍。コンサルタントへのフィードバックの“質”も向上
同社は既に導入プロジェクトを終え、OLCPはGenesys Cloud上での業務を開始している。
まず、架電業務の効率化では自動架電機能を活用。Genesys Cloudが自動的に電話をかけ、電話がつながったお客さまへの対応のみをコンサルタントが行う体制を整えている。「導入後、早い段階で架電数は約2倍になり、つながらない電話に費やしていた時間は大幅に削減されました。より多くのお客さまとコンタクトを取ることが可能になり、コンサルタントもお客さまとの会話に集中できるようになった上、つながらない架電に追われる必要がなくなった分、業務負担の軽減にもつながっています」と大西氏は話す。
データ活用によるサービス品質の均質化についても大きな成果が生まれている。
Genesys Cloudによって、各拠点の応対状況やコール量、応答率、通話時間などをリアルタイムに把握しながら、必要に応じて人員配置や架電タイミングの調整といった改善を柔軟に行えるようになった。また、コールデータをBIツールに取り込み、時間帯や曜日、顧客属性ごとの傾向を分析。架電計画の見直しを図ったり、コンサルタントへの具体的なフィードバックに役立てたりしている。「拠点が分散していても、同じ基準、同じ視点で対応状況を把握し、サービス品質を底上げしていくことができます」と田中氏は語る。
コンサルタントへのフィードバックについては、その“質”も向上している。
「通話音声を自動的にテキスト化する機能によって、コンサルタントがどのような説明を行い、お客さまからの質問にどのように回答したのかを確認しやすくなりました。重要事項の説明漏れ防止や表現のばらつきの抑止につながるほか、テキストをベースにした感情分析の結果も参考にしながら、応対内容の改善ポイントを多角的に検討し、より具体的なアドバイスを行えるようになっています」と同社の上遠野 亜紀氏は話す。
チャネル営業推進部
オンライン営業チーム
主務
上遠野 亜紀氏
OLCPの役割と今後の拡張を見据えたシステム設計
選定時に同社が期待したとおり、導入プロジェクトではNECのノウハウが大いに活きた。
「従来のシステムは電話を中心とするシンプルなものだったため、Genesys Cloudの導入においては、システムとOLCPの業務や役割をすり合わせる必要がありました。NECはOLCPの業務フローやコンサルタントの動きを深く理解した上で、コールの流れやルーティングの設計を共に考えてくれました。金融機関に求められる統制要件への対応も含め、非常に心強く感じました」と、加藤氏は振り返る。
NECで本プロジェクトを担当した若井 健太郎は、その考え方を次のように説明する。
「OLCPは一般的な問い合わせ対応にとどまらず、資産運用や相続、住宅ローンといった専門性の高い相談や提案、契約までを担う重要なお客さま接点です。そのため、単純な効率化だけでなく、コンサルタント様がお客さま対応に集中できることを重視しました。例えば、通話前後の業務フローを見直し、作業の自動化などを提案しました」と若井は語る。
加えてOLCPの拠点や人員の拡張、さらには将来の運用変更にも柔軟に対応できるよう、コールのルーティング条件やスキル定義、営業時間帯ごとの運用ルールなどは、流用や改修が行いやすいよう初期段階で標準化している。「今後の運用状況を見ながら、段階的に見直せるよう、拡張性を確保しています」と若井は続ける。
第二金融ソリューション統括部
第一ソリューショングループ
主任
若井 健太郎
Genesys Cloudによって、架電業務の効率化やサービス品質の均質化を支える環境整備を実現した同社は、次のステップとしてOLCP運営の高度化を目指している。その源泉と考えているのがデータだ。「データから最適な架電のタイミングを導き出し、Genesys Cloudのスケジュール機能に反映するなど、データを起点とした業務最適化の構想を描いています。ほかにも、AIによる自動応答など、さまざまな計画を検討していますが、データ分析やAIの分野でも豊富な知見と経験を持つNECの協力に期待しています」と大西氏は語る。
今後も同社は、データに基づく仮説検証と改善を繰り返すなど、さまざまな施策を通じてOLCPの価値を磨き上げていく考えだ。
