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ブロックチェーンとは?技術の仕組みや種類、ビジネス分野における活用事例などをわかりやすく解説

 仮想通貨の流行と共に大きな話題となったブロックチェーン。しかし、ブロックチェーンは仮想通貨だけでなく、さまざまな分野で活用されることが期待されている技術です。事実、ブロックチェーンを活用したソリューションは多数登場しており、市場規模が着実に拡大しています。

 この記事では、今後さらなる活用が期待されているブロックチェーンの特徴や仕組み、活用事例などを解説します。

▼本記事はこのような方におすすめ

  • ブロックチェーンの概念や仕組みを理解したい
  • ブロックチェーンのメリットとリスクを把握したい
  • ブロックチェーンがどのように活用されているのか知りたい
  • ブロックチェーンとメタバースの違いを知りたい

ブロックチェーンとは

 ブロックチェーンとは、暗号技術を使ってブロックと呼ばれる取引記録を時系列に沿ってチェーンのようにつなげ、分散的に処理・記録できるようにした、自律分散型のシステムです。

 ブロックチェーンは不特定多数のユーザーが分散してデータを保持する仕組みになっており、改ざんを防ぎやすく、データの透明性が高いという特徴があります。また、不特定多数のユーザーがお互いの情報を記録しているため、システムダウンが起きにくいです。

 一般社団法人 日本ブロックチェーン協会では、ブロックチェーンを以下のように定義しています。

  1. 「ビザンチン障害を含む不特定多数のノードを用い、時間の経過と共にその時点の合意が覆る確率が0へ収束するプロトコル、またはその実装をブロックチェーンと呼ぶ。」
  2. 「電子署名とハッシュポインタを使用し改竄検出が容易なデータ構造を持ち、かつ、当該データをネットワーク上に分散する多数のノードに保持させることで、高可用性およびデータ同一性等を実現する技術を広義のブロックチェーンと呼ぶ。」

出典:「ブロックチェーンの定義」を公開しました | JBA | 一般社団法人 日本ブロックチェーン協会 | Japan Blockchain Association別ウィンドウで開きます

 少々難解な定義ですが、この定義で重要なポイントは以下となります。

  • 悪意あるユーザーが含まれていた場合でも正常な処理が行われること
  • 過去の合意が覆らないこと
  • 改ざんの検出が容易であること
  • システムの利便性が高く、高い完全性を持つこと

 またブロックチェーンに関連して、近年では、特定の所有者や管理者に依存しない「DAO」と呼ばれる自律分散型の組織概念や仮想空間を意味する「メタバース」が注目を集めています。DAOはブロックチェーン上で管理・運営される組織であり、メタバースはブロックチェーンの活用が重要とされています。

 DAOやメタバースに関する記事も、合わせてご覧ください。

ビットコインとの違いとは

 ブロックチェーンはビットコインなどの仮想通貨と混同されやすいですが、ブロックチェーンと仮想通貨は異なる概念です。ビットコインは仮想通貨の一種であり、ブロックチェーンを技術基盤の中核として利用しています。ブロックチェーンは自律分散型のシステムであり、ビットコインはあくまでブロックチェーンを活用した技術の一形態となります。

ブロックチェーンの市場規模

 経済産業省によると、ブロックチェーン技術の展開が有望な事例として以下の5つが挙げられており、トータルの市場規模は約67兆円にもおよびます。

  • プラットフォームのインフラ化
    各自治体などが発行する地域通貨や電子クーポン、
    ポイントサービスなどをブロックチェーン上で運用・管理する
  • 権利証明の非中央集権化の実現
    土地登記や電子カルテ、出生・婚姻・転居などの各種登録をブロックチェーン上で登録・公示・管理する
  • 高効率シェアリングの実現
    デジタルコンテンツやチケットサービス、C2Cオークションなどにおける利用権利の移転や提供者・利用者の評価をブロックチェーン上に記録する
  • 透明性が高く、高効率で信頼できるサプライチェーンの実現
    小売りや貴金属管理、美術品の真贋認証などにおいて、原材料から製造工程、流通、販売までをブロックチェーンで追跡する
  • 取引やプロセスの実現
    遺言やIoT、電力サービスなどで発生する契約条件、履行内容、将来発生するプロセスなどをブロックチェーン上に記録する

出典:経済産業省 平成27年度 我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備別ウィンドウで開きます
(ブロックチェーン技術を利⽤したサービスに関する国内外動向調査)

ブロックチェーンの仕組み

 ブロックチェーンは従来の中央集権型のシステムとは違い、分散台帳技術を用いて各個人がシステムを所有し、さまざまなデータを集団で管理する仕組みになっています。ブロックチェーンを利用した代表的な技術にビットコインがありますが、ビットコインでは「ハッシュ」「合意形成アルゴリズム」「電子署名」「P2P」などの技術が使用されています。それぞれの技術の概要を解説します。

ハッシュ

 ハッシュとは、ハッシュ関数と呼ばれる計算式を用いて、データを固有の値(ハッシュ値)に変換する暗号化技術です。ハッシュ値は不可逆的で元の状態に戻すことができない性質があり、ハッシュ値から元のデータを復号することはできません。また、元のデータが変わればハッシュ値も大幅に変わるため、データを特定する一意のIDとしての機能をもっており、データの改ざんや破損があった場合には瞬時に検出できる仕組みになっています。

合意形成アルゴリズム

 合意形成アルゴリズムとは、不特定多数の人が参加するブロックチェーンのネットワーク内において公正かつ平等に合意形成ができる仕組みを指します。

 ブロックチェーンのように、不特定多数が参加し全体の合意を得ながら処理が進むシステムでは、故障したコンピューターや悪意あるユーザーが含まれている場合に、システム全体の処理が停止するというリスクが生まれます。これは「ビザンチン将軍問題」と呼ばれます。

 ビットコインの合意形成アルゴリズムであるPoWは、初めてこのビザンチン将軍問題を解決し、故障したコンピューターや悪意あるユーザーを含む場合でもデータの正当性を担保できる仕組みです。

出典:「「ビザンチン将軍問題」とは何か」第69号 - NII Today / 国立情報学研究所別ウィンドウで開きます

電子署名

 電子署名とは、電子文書の作成者を特定・証明する電子的な署名であり、日常におけるサインや印鑑の役割をサイバー空間上で担う技術です。

 電子署名の仕組みは、データを送受信する際、まず送信者が「秘密鍵」と「公開鍵」の二つを生成し、秘密鍵は送信者だけが隠し持っておきます。公開鍵は秘密鍵で暗号化されたデータの復号のみにしか使えないため、その名の通り全体に公開しても問題のない鍵です。

 データの受信者は、送信者から受け取ったデータを公開鍵で復号します。秘密鍵で暗号化したデータはペアとなる公開鍵でしか復号できないため、復号に成功すれば、そのデータの送信者は秘密鍵を持った相手だと特定できます。このような仕組みで、電子文書の作成者を特定・証明します。

P2P(Peer to Peer)

 P2Pとは、複数のコンピューターが1対1で直接通信をする接続方式です。P2Pで接続されたネットワークをP2Pネットワークと呼び、接続されたコンピューター同士は同等の機能を持ちます。従来のサーバーに情報を集約・管理する構造とは異なり、情報が分散管理されるため、特定のコンピューターに障害が発生した場合でもシステム全体がダウンすることなく、稼働を維持できます。自律分散型のシステムであるブロックチェーンでは、このP2Pネットワークがデータ管理における重要な役割を担っています。

ブロックチェーンの種類

 ブロックチェーンには、大きく分けて3つの種類が存在します。それぞれの特徴やメリット・デメリットを解説します。

パブリックチェーン

 パブリックチェーンは参加者に制限がなく、許可取りが不要で誰でも参加できるブロックチェーンのネットワーク形式です。中央管理者が存在せず、参加者が相互にやり取りを承認し合うシステムになっています。ビットコインなどの仮想通貨もパブリックチェーンを利用しています。

パブリックチェーンのメリット

  • データの透明性が高い
  • 誰でも参加できる

パブリックチェーンのデメリット

  • 処理速度が遅い
  • プライバシーが担保されていない

プライベートチェーン

 プライベートチェーンは限定されたユーザーのみが参加でき、単体の管理者によって管理されるブロックチェーンのネットワーク形式です。金融機関での記録など、組織内で行われる機密性の高いやり取りを記録する場合によく利用されます。

プライベートチェーンのメリット

  • 処理速度が早い
  • プライバシーが担保される

プライベートチェーンのデメリット

  • 許可されたユーザーしか参加できない
  • パブリックチェーンと比べてデータの透明性が低い
  • 中央集権的な要素を持つ

コンソーシアムチェーン

 コンソーシアムチェーンは限定されたユーザーのみが参加でき、複数組織の管理者によって管理されるブロックチェーンのネットワーク形式です。パブリックチェーンとプライベートチェーンの中間に位置付けられます。

コンソーシアムチェーンのメリット

  • 一定のデータの透明性、処理速度、プライバシーを担保できる
  • 複数管理者による分散管理ができる
  • それぞれの管理者がセキュリティ対策を講じるためセキュリティ性が高い

コンソーシアムチェーンのデメリット

  • 許可されたユーザーしか参加できない
  • 複数組織の利害関係が生まれるため運用変更が難しい

ブロックチェーンのメリット

 続いて、ブロックチェーンが持つ主なメリットを解説します。

改ざんされにくい

 ブロックチェーンはハッシュを利用したデータの暗号化を行い、暗号化されたデータ(ブロック)はチェーン型のデータ構造を持ち、それぞれのブロックが一つ前のブロックのハッシュ値情報を保持しています。ブロックを改ざんしようとすると、過去のブロックを一つひとつ改ざんしてハッシュ値の整合を取る必要があるため、改ざんが極めて難しく、時間が経過するほど改ざんが困難になります。

契約を効率化できる

 ブロックチェーン上で第三者を介さずに信用が担保された取引データを自動処理できる仕組みとして、スマートコントラクトという技術が発明されました。スマートコントラクトを活用すれば、契約書の締結などの手続きに必要となる事務作業の多くが不要となり、事務コストを大幅に削減できます。

運用コストが低い

 中央集権的なシステムでは、中央に設置されたシステムが各クライアントからの要求に応えられる性能や環境を整備する必要があり、多額の導入コストおよび運用費用が必要になります。一方、ブロックチェーンは各クライアントのコンピューターが分散して処理を行うため、コストを抑えて導入・運用ができます。

システムがダウンしにくい

 中央集権的なシステムでは、一部のサーバーやネットワークに障害が発生した場合、広範囲にサービス停止などの影響が出ることがあります。ブロックチェーンの場合は、データの処理や管理を各コンピューターが分散しているため、一部に障害が発生しても全体的な影響につながりにくく、安定したシステム環境を実現できます。

ブロックチェーンのデメリット

 ブロックチェーンにはさまざまなメリットがある一方、現状では複数のデメリットもあります。

法整備が整っていない

 ブロックチェーンはさまざまな場面での活用が期待されており、ブロックチェーンを用いたソリューションが多数生まれている一方、その技術の進歩に法整備が追いついていない状況です。新しい技術であるがゆえに、法的に未成熟な部分を狙って攻撃されるケースがあります。また、ブロックチェーンは非中央集権的なシステムであるために、国境を超えた法整備をいかに進められるかが現状の課題となっています。

51%攻撃のリスクがある

 パブリックチェーンの仕組みでは、不特定多数のクライアント(ノード)が多数決で取引内容の承認を行い、処理が進められます。ビザンチン将軍問題で挙げられるように、一部の悪意あるユーザーが不正な取引を行えないようにする取り組みが導入されていますが、悪意あるユーザーが共謀し、過半数を超えた処理能力を持った場合には、不正な取引が発生する可能性があります。この51%攻撃をいかに防ぐかもブロックチェーンの課題といえるでしょう。

決済や送金に遅延が発生する

 近年になってブロックチェーンの認知度とユーザー数が大きく増加しています。今後さらにユーザー数が増えると、対応できるシステムの規模(スケーラビリティ)が問題になってきます。システムのキャパシティをオーバーすると、例えばビットコインでは決済や送金に遅延が発生する、多額の取引手数料が必要になるなどの問題につながります。今後のユーザー数、取引量増加に対するスケーラビリティ対策もブロックチェーンの大きな課題の一つです。

個人情報が流出した場合は消せなくなる

 ブロックチェーンはデータの共同処理や透明性、改ざん防止に大きなメリットがありますが、裏を返せば、一度ブロックチェーン内に個人情報が流出すると二度と削除できず、暗号化された状態ではあるが参加者全体にデータが引き渡される状況が発生しかねません。ブロックチェーンの性質がデメリットを生み出す要因にもなるため、別の技術と組み合わせて、デメリットの対策をとる必要があります。

ビジネス分野におけるブロックチェーンの活用事例

 最後に、ビジネス分野においてブロックチェーンがどのように活用されているのか、総務省の「平成30年版 情報通信白書|ブロックチェーンの応用事例」を参考に、具体的な活用事例をご紹介します。

災害時の物資マッチング

 現状の災害対応には、支援物資自体は確保できているものの迅速かつ適切に被災地に分配できないという課題があります。その要因としては、災害時には情報が錯綜し被災地の正確な情報を得にくいこと、支援物資の供給・管理がしにくいことなどが挙げられます。

 この課題に対し、ブロックチェーンを活用して支援物資の需要と供給に関する情報の登録・管理を行うことで、信頼性の高い情報流通と支援物資の分配を実現する取り組みが行われています。

出典:総務省 ブロックチェーンの応用事例別ウィンドウで開きます

本人手続きの簡略化

 シェアリングサービスでは、消費者と事業者の需要・供給をマッチングさせるプラットフォームの運営者が情報を管理しており、事業者がプラットフォーム運営者に仲介手数料を支払っているのが一般的です。

 しかし、ブロックチェーンを活用して需要・供給情報や消費者の信用情報などを改ざん不可能な形式で保管できれば、仲介者の存在は不要になります。ブロックチェーンを用いて個人情報を適切に管理できるようになれば、シェアリングサービスをはじめさまざまな本人手続きの簡略化にもつながるでしょう。

出典:総務省 ブロックチェーンの応用事例別ウィンドウで開きます

非金融資産のトークン化

 現在、全世界の資産の約3分の1が、銀行に預けられない「nBA」と呼ばれる資産(美術品や高級不動産など)となっています。オルタナティブ投資は参入障壁が高く、投資家にとって価格設定やリスク計算、リターンの予測が困難であることなどから、銀行ではnBAを取扱いにくいという課題がありました。

 ソリューショこの課題に対し、ブロックチェーンを活用してnBAをトークン化し、トークンのかたちで資産を提供する仕組みを構築しています。

 トークンに明確な定義はないものの、ビットコインやイーサリアム以外の仮想通貨、暗号資産のことを指します。

 nBAをトークン化することで、最低投資額などの参入障壁の軽減、資産の流動化を実現。これにより、金融期間はより多くの投資家を対象にnBAを設立できるようになっています。

 nBAのトークン化により、オルタナティブ資産をより多くの投資家が利用できるようになります。今後はnBAおよび新しいアドバイザリーサービスの需要が高まると予想されており、専門家の予測では、2027年には約24兆米ドル(約2500兆円)の市場規模になることが予想されています。

 そのほかの金融業界におけるブロックチェーンの活用事例は以下で詳しくご紹介しています。

出典:金融業界における3つのブロックチェーン活用事例

ブロックチェーンの今後

 ブロックチェーンは、データ処理や管理の非中央集権化や透明性の高さ、改ざん防止ができる点が大きなメリットであり、今後さまざまな分野での活用が期待されています。現状では法整備やセキュリティリスク、スケーラビリティなどに課題がありますが、ビジネス分野への導入が試行錯誤されており、市場規模は拡大していく見込みです。

 ブロックチェーン技術をいち早く導入すれば、市場での優位性確保につながる可能性もあります。ぜひ今後のブロックチェーン技術の発展に注目してみてください。

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