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メタバースとは?注目されている理由やメリット、ビジネスでの活用事例をわかりやすく解説

 近年、耳にすることの増えた「メタバース」ですが、最近では大企業を中心に活用が進み、生成AIとの組み合わせによってさらなる注目が集まっています。一方、メタバースに関連する技術や具体的な活用事例まではあまり知られていないのもまた事実です。

 この記事では、メタバースの意味やビジネスでの活用メリット、実際の活用事例などを解説します。ここでご紹介する内容を参考に、ぜひメタバースを取り入れたビジネスをご検討ください。

1. メタバースとは?

 メタバースとは、ギリシャ語で「超越した」という意味を持つメタ(meta)と、「世界」を意味するバース(verse)を組み合わせて作られた言葉です。総務省の定義では、「ユーザー間でコミュニケーションが可能な、インターネット等のネットワークを通じてアクセスできる仮想空間のこと」とされています。

出典:社会課題の解決に向けたメタバース導入の手引き別ウィンドウで開きます

 また、メタバース事業に注力するためFacebookから社名を変更したmetaでは、メタバースを「ソーシャルなつながりの次なる進化形であり、モバイルインターネットの後継者」と表現しています。

出典:メタバースとは?別ウィンドウで開きます

 どちらも、メタバースがインターネットを通じたコミュニティ空間として認識している点は共通しています。

 メタバースはインターネット上の仮想空間に作られた世界であり、ユーザーはその世界のなかで自分の分身=アバターを自由に操作し、さまざまな活動を行います。近年人気を集めている「あつまれ どうぶつの森」や「フォートナイト」のような、自身でキャラクターを作成し仮想空間上で自由に操作できるゲームも、メタバースの活用事例です。

 そしてもちろん、ゲームに限らずビジネス上でも、メタバースはその存在価値を高めています。

1.1. メタバースとXR、VR、AR、MRとの違い

 前述した通り、メタバースはインターネット上に構築された仮想世界そのものを指しており、ユーザーはアバターを通じて他者と交流したり、経済活動を行ったりと、現実世界に近い体験をそのなかで再現できます。

 そのような体験を可能にする技術として、XR、VR、AR、MRがあります。それぞれの違いを説明していきます。

1.1.1. XR(クロスリアリティ)

 XRは、VR・AR・MRを含む現実と仮想の融合体験を総称する概念であり、現実世界と仮想世界がシームレスに連携し双方向に影響し合う体験や技術を指します。これによりユーザーは、現実と仮想の両方の環境を行き来しながら、二つの環境が連動した新しい体験や価値を得ることができます。

 こうした技術は、エンターテインメントの世界だけでなく、教育や医療、製造業など、幅広い分野での活用が期待されています。

1.1.2. VR(バーチャルリアリティ:仮想現実)

 VRは、仮想空間をより立体的に体験するための技術です。VRの技術をメタバースに活用すると、メタバースの世界により溶け込んだような体験ができます。自分自身がその世界の登場人物になったかのような没入感が得られるため、ゲームや体験型のアトラクションなど、エンターテインメント分野で多く活用されています。

1.1.3. AR(オグメンテッドリアリティ:拡張現実)

 AR(拡張現実)は現実世界の風景にデジタル情報を重ねて表示する技術で、スマートフォンを用いたゲームやナビ機能などが代表例です。カメラ越しに映し出される現実の映像の上にテキスト、画像、アニメーションなどの情報を重ねることで、ユーザーは現実世界にいながら追加の情報や演出を視覚的に体験できます。近年では、広告、教育など幅広い分野での応用も進んでいます。

1.1.4. MR(ミックスドリアリティ:複合現実)

 MR(複合現実)は現実世界と仮想世界を高度に融合させる技術で、仮想のオブジェクトが現実空間に存在するかのように見え、かつ相互に影響し合うのが特徴です。例えば、周囲の空間を把握した上で、仮想オブジェクトを現実のテーブルや床に自然に表示したり、ユーザーの視線や動きに合わせて反応させたりすることで、より没入感のある体験が可能となります。

 MRはARのように単に情報を重ねるだけでなく、現実の環境を正確に認識しながら仮想と融合するため、医療シミュレーションや製造業での設計支援、遠隔作業支援など、実用性の高い分野で活用が広がっています。

2. メタバースが注目される理由

 メタバースは、新型コロナウイルスの影響により急激に認知度の向上が進みました。新型コロナウイルスの収束後も、新しい体験や価値を提供する技術として注目を集めています。その注目の理由を解説します。

2.1. コロナによる、テレワークの普及

 新型コロナウイルスの感染拡大によりオフラインでのイベントやセミナーが激減した一方、テレワーク化の動きが広がり、オンラインでの活動が急速に普及しました。その流れの中、メタバースは対面で会わずに、仮想空間でより円滑なコミュニケーションが取れる手段として注目を集めています。

2.2. 拡大する市場規模

 総務省が発表した「令和7年版 情報通信白書」によれば、メタバースの世界市場規模は2030年に5,078億ドルまで拡大すると予測されています。また、日本国内においても2028年度には1兆8,700億円まで成長する見込みです。

2.3. VR技術の進歩と普及

 今までメタバースを実現する技術そのものは古くから存在していたものの、一般的なユーザーへの普及は進んでいない状況でした。しかし、近年VR技術の発達により、誰にでも扱うことのできる技術に変化してきています。また、スマートフォンの普及に伴い、VR技術にも使われる高解像度・高輝度な部品が量産され、結果としてVR機器の低廉化が起こりました。

 これらの理由により、メタバースはより多くの人々に注目されるようになりました。

 そしてさらに、AI技術との組み合わせや認知度の向上によって、メタバースは国内外ともに市場が拡大していくと期待されています。メタバースが活用される領域も、エンターテインメントに限らず、今まで以上に幅広い業界で活用が進んでいくでしょう。

3. メタバースと関連する技術

 続いて、メタバースと関連の深い3つの技術について解説します。

3.1. Web3.0

 Web3.0とは、巨大企業にデータが集約されている現在の状況を変え、ブロックチェーン技術などを用いてデータを分散させることで実現する、より安全なインターネット環境のことです。総務省が発表した「令和6年版 情報通信白書」では、Web3.0は「ブロックチェーン技術を基盤とする分散型ネットワーク環境又はインターネットの概念を指す言葉であり、ブロックチェーン、NFTなどのテクノロジーを総称する言葉としても使われている」とされています。

出典:令和6年版 情報通信白書「Web3」別ウィンドウで開きます

 現在は、GoogleやAmazon、Microsoftなどの巨大企業がデータを抱え、人々の巨大企業依存が高まっている状態です。Web3.0は、この巨大企業依存を脱却し、個人がインターネット上で自由な活動ができる世界を指した概念です。このWeb3.0を実現するための技術として、メタバースや後述するブロックチェーン、NFTがあると考えるとよいでしょう。

 下記ページでは、NECが運営するBluStellar Communitiesのweb3コミュニティについてご紹介しています。

>>BluStellar Communities web3コミュニティ

 Web3.0については下記の記事でも解説しています。

>>Web3.0とは?意味やメリット、メタバース・DAOとの関連性までわかりやすく解説

3.2. ブロックチェーン

 ブロックチェーンやNFTといった技術はメタバースに必須な要素ではありませんが、メタバース内で経済活動を行う際に有効な技術として期待を集めています。

 ブロックチェーンとは、総務省の定義によると、「情報通信ネットワーク上にある端末同士を直接接続して、取引記録を暗号技術を用いて分散的に処理・記録するデータベースの一種であり、「ビットコイン」などの仮想通貨に用いられている基盤技術」とされています。取引履歴(ブロック)を鎖(チェーン)のようにつなげて管理することで、過去の取引の改ざんや不正な取引の継続を防ぐことができる技術です。

 ブロックチェーン上で特定の条件を満たした際に自動で契約を実行できるスマートコントラクトというプログラムを活用し、人手を介さず自動的に契約などを実行させる仕組みにも注目が集まっています。

出典:平成30年版 情報通信白書「ブロックチェーンの概要」別ウィンドウで開きます

3.3. NFT

 NFTはNon-Fungible Tokenの略で、日本語では非代替性トークンと呼ばれます。ブロックチェーンの技術を活用したNFTを利用すれば、デジタルデータに代替不可能な一意の値をつけることが可能です。NFTによって一般に所有者が不明とされるデジタルデータの所有を明確にし、偽造を困難にすることで、デジタルデータ取引の安全性を高めることができます。

 NFTは、ゲームや音楽などのエンターテインメント業界の他、アートやブランドグッズといったさまざまな領域で活用が進んでいます。

 メタバースに関連して注目を集めるブロックチェーンやブロックチェーンを生かしたDAO(分散型自律組織)については、以下の記事をご覧ください。

>>ブロックチェーンとは?技術の仕組みや種類、ビジネス分野における活用事例などをわかりやすく解説
>>DAO(分散型自律組織)とは?事例を交えて分かりやすく解説!ブロックチェーンが切り開く新時代の組織形態

4. メタバースをビジネスで活用するメリット

 では、メタバースをビジネスで活用することによってどのようなメリットが得られるのでしょうか。主な3つのメリットを解説します。

4.1. 新たな顧客層を獲得できる

 メタバースを活用して社外向けのオンラインショップや展示会などを開催することで、人数や開催場所に縛られず世界中にプロモーションができます。今まで接点のなかった顧客や従来の営業エリアから外れた遠方地域の顧客に対してもアプローチできるようになり、新しい顧客層を獲得できます。

4.2. 働き方改革を促進できる

 メタバースを活用してバーチャルオフィスやオンライン会議、社内研修を行うことで、テレワークを始めとするさまざまな働き方に対応しやすくなります。テレワークでは従業員の姿が見られないことが従業員間のコミュニケーション減少の大きな原因となっていますが、バーチャルオフィスであれば互いのアバターを見ながら気軽にコミュニケーションを取ることができます。ビジネスチャットツールやビデオ会議ツールでもオンライン会議や社内研修を行うことは可能ですが、メタバースのほうがより互いの存在を意識しながらコミュニケーションが取れます。

 また、バーチャルオフィスのように仮想空間上で相手のアバターに近づくだけで音声でのコミュニケーションが取れる気軽さも、ビデオ会議ツールより優れている点といえます。

4.3. コストの削減にもつながる

 メタバースを活用してオフィスや実店舗からオンラインへの移行を進めていけば、家賃や光熱費、従業員の交通費などのコストカットにつながります。固定費を削減すれば他の事業への資金投資もしやすくなります。

5. 【業界別】メタバースの活用事例

 メタバースを事業に活用し、新しい価値提供に繋げている事例を業界別にご紹介します。

5.1. メタバース×航空業界

 全日本空輸株式会社(ANA)では、客室乗務員の訓練にVRを活用する取り組みが進んでいます。VRを活用することで、実際のフライト環境や、現実では再現困難な緊急事態が発生した環境で訓練ができます。前後左右の移動や屈む動作をVR空間に反映させることもできるようになっており、きめ細かな機内訓練が可能となっています。

出典:ANA客室乗務員向け機内訓練にNEC開発のVRを活用

5.2. メタバース×医薬品業界

 武田薬品工業株式会社は、ワクチン製造における無菌操作をVRで訓練できるシステムを利用しています。これにより、実際の無菌室を使わずに安全キャビネットや培養器具の操作を仮想空間で学べます。製造トレーニングの場所や時間の制約をなくすことができ、指導者不在でも訓練できるようになりました。

出典:NEC、武田薬品に感染症ワクチン製造工程における無菌操作トレーニング向け「法人VRソリューション」を提供

5.3. メタバース×建設業界

 NECファシリティーズでは、電力や空調などのユーティリティ設備を管理するスタッフの人材育成に長い年月がかかる課題を解決するため、体験型の実践的に学べる技能習得施設「FM-Base®」の整備と、VRトレーニングアプリケーションの活用を進めています。設備管理ではヒューマンエラーによる停止から停電などのトラブル、災害まで、幅広い状況への対応が求められます。VRで複数のシナリオのもとで訓練することで、想定外のトラブルが発生した際の対応力向上が期待されています。

出典:Meta Questの秘めた可能性を探れ(3)実務で得難い経験はXRを活用 NECファシリティーズのスキルアップ戦術に迫る別ウィンドウで開きます

5.4. メタバース×空調業界

 ダイキン工業もXRやメタバースの活用に取り組んでおり、バーチャルショールームの開発などを進めています。NECは、マイクロソフトコーポレーションのメタバースソリューション「Microsoft Mesh」に関する開発ノウハウがあり、ダイキン工業にソリューションを提供しています。バーチャルショールームの開発などメタバースを活用した業務の拡大を図っています。

出典:NEC、「Microsoft Mesh」を利用し自社のエクスペリエンスセンターをメタバース上に開発

5.5. メタバース×生成AI

 生成AI技術の進歩は、メタバースの市場成長にも大きな影響を与えています。生成AIが進化することでメタバースやXRの開発が容易になり、さまざまな新しいサービスが生まれています。アバターやテクスチャ、3Dデータなどを生成AIで出力できるようになったことで、テキストのプロンプトを用いて簡単に見た目を変えることができるようになりました。

 近年注目を集めているデジタルツインやサイバーフィジカルの領域においても、現実環境の再現に生成AIを活用できるようになったことで、メタバースがさらなる注目を集めています。メタバースにおける生成AIの市場は右肩上がりで成長していくことが予測されており、今後もメタバース×生成AIの活用は進んでいく見込みです。

メタバース・XR向けの生成AI市場の伸びを示す。2023年の3910万ドルから2033年に5億6460万ドルへと年率31.5%で成長する。出典:MarketResearch.biz:Generative AI in Metaverse Market Based on Platforms別ウィンドウで開きます

 メタバースと生成AIについてより詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

>>息を吹き返すメタバース、生成AIが魅力を高める~若年層がプラットフォームをけん引、関連サービスも2025年に大躍進~

6. メタバースが抱える課題

 ビジネスにおいてメタバースを取り入れていくメリットは多数ありますが、一方で課題も存在します。

6.1. 法整備が追いついていない

 メタバースは比較的新しい概念であり、現状では十分な法整備がなされていません。メタバース内での取引や権利保護の問題において意図せず加害したり被害を受けたりするリスクがある点には注意が必要でしょう。

6.2. セキュリティ対策が必須

 メタバースの世界には、ユーザーの個人情報やアバターの著作権など、個人に関する情報や権利が複数含まれます。これらの情報や権利を守るためには、セキュリティ対策が必須です。

 具体的なサイバーセキュリティのリスクとしては、アバターや音声を偽装したなりすましや不正アクセスによる情報漏えいなどが挙げられます。こうしたサイバーセキュリティリスクを防ぐためには、システム側の脆弱性対策やデータ保護、ユーザー側の不正行為防止やコミュニティの健全性維持など、システム・ユーザー両面での対応が必要です。

6.3. 導入にコストがかかる

 法整備やセキュリティ対策に加え、企業がメタバースを活用しようとすると、導入にあたってのコスト負担が課題になります。高性能な機材の手配やセキュリティ対策、従業員の教育、社外への認知拡大アプローチなど、さまざまなアクションに導入時にコストがかかります。金銭的なコストだけでなく時間的なコストも必要となるため、戦略的に投資をしていくことが求められるでしょう。

7. メタバースの導入について

 メタバースは仮想空間を構築する新しい技術です。ビジネスにおいてさまざまな活用方法が考えられており、その活用に取り組む企業も増え始めています。今後、積極的にメタバースを取り入れれば、新しいビジネスチャンスを得られる可能性はより高まるでしょう。

 しかし、新しい技術であるがゆえの課題も存在します。この記事で解説した活用事例などの内容も踏まえ、ぜひ自社事業へのメタバース導入と活用を検討してください。

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