データドリブン経営へ舵を切る関電工
レポート作成を変革し、迅速な分析と意思決定につなげる
人手不足や人材の高齢化が進む中、企業には、経験や勘だけに頼る意思決定から、データに基づく迅速で客観的な意思決定への転換が求められている。関電工も、データドリブン経営の実現を掲げ、データ基盤の整備、AI活用、人材育成などを包括的に進めている。その第一歩としてNECと取り組んだのが、コストマネジメント業務の変革だ。BI(Business Intelligence)ツール「InfoFrame Dr.Sum EA MotionBoard(以下、MotionBoard)」を活用し、属人化・複雑化していたレポート作成を標準化・自動化。単なる作業効率化にとどまらず、収益悪化の兆候を早期にとらえ、分析から改善アクションへつなげる意思決定基盤の構築を進めている。
SPEAKER 話し手
株式会社 関電工

昼岡 晶一氏
DX推進部長

日沼 正博氏
DX推進部
データマネジメントチームリーダー
NEC

大西 毅久
第二製造ソリューション統括部
第八インテグレーショングループ
プロフェッショナル

内田 花咲音
第二製造ソリューション統括部
第八インテグレーショングループ

上瀧 達也
データ基盤サービス統括部
データサービス事業グループ
データドリブン経営で意思決定のスピードと質を高める
──関電工は、中期経営計画の中でデータドリブン経営の実現をテーマに挙げていますね。
昼岡氏(関電工):当社は、電気設備工事を中心に、情報通信設備、空調・給排水設備、エネルギー関連設備などの設計・施工・保守を手掛けており、社会基盤となるインフラを支えている企業です。近年は、グリーンイノベーション企業を目指す取り組みにも力を入れており、エネルギーマネジメントシステムを通じて建物のエネルギー使用量を可視化し、省エネコンサルティングも行っております。
業績は右肩上がりに推移していますが、課題もあります。データドリブン経営は、その解決策の1つと位置付けています。例えば、喫緊の課題である人手不足や人材の高齢化においては、経験や勘に頼っていた意思決定をファクトに基づく意思決定へと転換し、スピードと質を高めたいと考えています。
DX推進部長
昼岡 晶一氏
──データドリブン経営を実現するために、どのような取り組みを進めていますか。
昼岡氏:経営層から現場管理者までが共通のデータを参照しながら、迅速かつ客観的に意思決定できる組織になる。そのためには、単にデータを蓄積するだけではなく、誰もがデータを活用し、業務改善や経営判断につなげられる環境を実現しなければなりません。そこで、データ基盤整備、AI活用、人材育成を3つの柱として取り組みを進めています。
例えば、データ基盤整備では、数年前に情報分析基盤を構築し、基幹システムのデータを集約する仕組みをつくりましたが、さらに多くのデータを収集・活用するためのデータプラットフォームの構築を進めています。ここに業務システムのデータやドキュメント類などの非構造データ、外部データなどを集約し、単なるデータベースではなく、経営を支える基盤としていく考えです。
また、生成AIを活用した業務プロセスの改善、データ活用人材の育成にも取り組んでいますが、社内文化の醸成も強く意識しています。現在も業務の中でさまざまなデータを使っていますが、目指すデータドリブン経営は、それとは一線を画します。単に過去のデータを集計したり、参照したりするだけではなく、データから未来をシミュレーションし、それを意思決定に活かす意識を浸透させ、データドリブンな文化を社内に定着させたいと考えています。
複雑なレポート作成の標準化と効率化に取り組む
──NECと共にコストマネジメント部署の課題解決に取り組んだそうですね。
日沼氏(関電工):コストマネジメント部署は、工事ごとの資材費と外注費の管理を業務としており、関電工が行っているすべての工事の利益と原価管理を一手に担っています。現場で工事を行っている各拠点の担当者と連携しながら予算の進捗を把握し、支出が想定を超えそうな案件などがあればアラートを上げ、立て直しをリードします。
この業務を行うために、コストマネジメント部署は、工事ごとに資材費と外注費をまとめたレポートを作成します。レポート作成には複数のシステムから必要なデータを取得し、Excelにマクロを組んで加工していました。ただ、一口に資材費と外注費といっても、工事の種類や拠点ごとに取引先が違うといった事情からロジックは非常に複雑で、業務が属人化していました。異動してきたばかりの担当者は、業務を理解するのにだいぶ時間がかかっていたようです。そもそも関電工が行っている工事は、常時、数万件にのぼります。その件数分のレポートを作成するわけですから、負担も相当でした。このレポート作成業務の標準化と効率化を図り、本来、注力すべき分析や改善活動に、より多くの時間を割ける環境づくりを目指しました。
DX推進部
データマネジメントチームリーダー
日沼 正博氏
──なぜNECと取り組んだのでしょうか。
昼岡氏:単なるシステム導入ではなく、当社がデータドリブン経営の実現を目指していることを理解して、提案してくれたことが大きな理由です。関電工の課題や目指す姿を深く把握しようとする姿勢からは、変革に共に取り組むという強い意識が伝わりました。
日沼氏:NECが既にデータドリブン経営に取り組み、成果を上げていることも理由です。実際に経験した企業にしかできないアドバイスなど、実践的な支援に期待しました。
──NECは、顧客のデータドリブン経営をどのように支援しているのでしょうか。
大西(NEC):NECは、自らを「クライアントゼロ」と位置付け、社内で実践してきたデータドリブン経営の経験や知見をお客様の変革支援に活かしています。
NEC自身も、業績悪化を契機としてデータに基づく意思決定への転換に取り組み、経営情報の可視化や分析基盤の整備、データ活用文化の醸成を進めてきました。その過程では成果だけでなく、多くの試行錯誤や課題も経験しています。そうした実践知を体系化したのが「BluStellar Scenario(※)」です。単なるシステム導入ではなく、構想策定からデータ活用基盤の整備、人材育成、組織への定着までを一貫して推進し、お客様が継続的に意思決定の質を高め続けられる状態を目指します。
今回の取り組みも、レポート作成業務の効率化そのものが目的ではありません。コストマネジメント部署様において、データを起点に迅速かつ客観的に判断できる仕組みを構築し、将来的なAI活用につながる第一歩にすることを意識して支援しました。
第二製造ソリューション統括部
第八インテグレーショングループ
プロフェッショナル
大西 毅久
内田(NEC):コストマネジメント部署様の課題を早期に解決するだけでなく、業務課題と活用目的が明確な領域で成果を可視化し、その実践を次の部門やテーマへ広げ、関電工全体のデータドリブン経営を前進させる先行事例にすることも意識しました。
第二製造ソリューション統括部
第八インテグレーショングループ
内田 花咲音
可視化で終わらせず、分析とアクションにつなぐ
──具体的に、コストマネジメント部署の課題をどのように解決したのでしょうか。
昼岡氏:BIツール「MotionBoard」に必要なデータを取り込んでダッシュボードを構築し、手動で行っていたレポート作成業務を自動化しました。各拠点の担当者もMotionBoardにアクセスしてダッシュボードを確認するため、Excelファイルを関係者にメール添付で配布するといった展開の手間もなくなっています。
大西:関電工様では、データプラットフォームを再構築する予定と聞いていましたが、その完成を待つと業務改善の着手が遅れてしまいます。そこで、将来的なデータプラットフォームの活用という全体構想との整合性を保ちながら、まずはコストマネジメント部署様の課題解決と早期の成果創出を優先するため、各業務システムとMotionBoardを直接連携する構成を採用しました。
上瀧(NEC):コストマネジメント部署様が長年かけて構築してきたロジックは豊富な知見やノウハウが精緻に組み込まれた高度なもので、一見しただけでは、集計ロジックを正確に把握することが困難でした。過去のレポートや資料を提供いただいたり、担当者様にヒアリングする機会をいただいたりしながら、業務やデータの種類、集計方法を理解し、同じロジックをMotionBoard上に再現していきました。
データ基盤サービス統括部
データサービス事業グループ
上瀧 達也
日沼氏:非常に丁寧な仕事で、コストマネジメント部署のレポートのMotionBoardへの移行を進めていただきましたが、決して、Excelをそのまま再現したというわけではありません。随所にNECならではの工夫が盛り込まれています。
上瀧:ありがとうございます。NEC自身に加え、多くのお客様のデータドリブン経営を支援する中で得た知見を活かし、データを見て意思決定するためのプラットフォームとして設計しました。例えば、頻繁に利用するKPI(管理指標)は画面上に配置し、しきい値を超えた案件のみを自動抽出する仕組みを実装しています。しきい値を超えた案件をクリックすると詳細がリスト表示され、そこからグラフ画面に遷移して、すぐに分析にとりかかることも可能です。
昼岡氏:以前はレポートによる可視化と、分析による調査が別の作業だったのですが、現在は、可視化と分析がMotionBoardで1つにつながっています。その成果を見て、経理部、財務部も同様のチャレンジを開始しています。
日沼氏:コストマネジメント部署のメンバーは、「要望を伝えると短期間でできあがる」とNECのアジャイル開発のスピード感にも感動していました。
──今後の展望をお聞かせください。
日沼氏:先ほど述べたとおり、レポート作成の標準化と効率化は、本来注力すべき分析や改善活動により多くの時間を割くための環境づくり。いわば課題解決の最初のステップに過ぎません。次の挑戦として、収益が悪化している工事の兆候把握や要因分析をAIで行えないか、その可能性をNECと検証しています。
内田:活用しているのは、分析テーマを設定してデータを投入することで、特徴量の設計や要因分析を支援するAIソリューション「dotData」です。関電工様における「工事の収益悪化の予兆」をとらえて原因を特定する作業のように、従来はベテランの経験や知見に依存していた分析は、dotDataによってより早く、客観的に把握できるようになります。工事の種類ごとに異なるリスク要因や特徴をクリアにしながら、コストマネジメント部署様がより迅速かつ確度の高い意思決定を行える環境づくりに貢献したいと考えています。
昼岡氏:AIを活用すれば、人ではなかなか気付けなかった関係性や要因を発見できるのではないかと期待しています。今後もNECには、データやAIの活用を共に推進するパートナーとして大きな信頼を寄せています。
関電工の取り組みは、レポート作成の効率化を出発点に、可視化、分析、兆候把握、改善アクションを1つのサイクルとしてつなぐ段階へ進み始めている。NECは今後も、自社実践と顧客支援で培った知見を活かし、関電工におけるデータとAIを起点とした意思決定の進化を支えていく。
- ※ BluStellar Scenario:AIやセキュリティなどの最先端テクノロジーの最適な組み合わせや成功事例をもとに、NECが持つ実践知を集約・体系化し、BluStellar Scenarioとして整理。お客様の課題解決とその先の価値創造に向け、改革の道筋を描きます。