メタバースとは?意味やビジネスでの活用事例、メリットを解説
近年耳にすることが多くなった「メタバース」という言葉。ビジネス業界でもメタバースを活用する事例が出始めています。しかし、その意味や具体的な活用方法まではわからないという方も少なくないのではないでしょうか。
この記事では、メタバースの意味やビジネスでの活用メリット、実際の活用事例などを解説します。ここでご紹介する内容を参考に、ぜひメタバースを取り入れたビジネスを貴社でもご検討ください。
1. メタバースとは
メタバースとは、ギリシャ語で“超越した”という意味を持つ「メタ(meta)」と“世界”を意味する「バース(verse)」を組み合わせて作られた言葉です。メタバースはインターネット上の仮想空間に作られた世界であり、ユーザーはその世界のなかで自分の分身「アバター」を自由に操作し、さまざまな活動をおこなうことができます。近年人気を集めている「あつまれ どうぶつの森」や「フォートナイト」のような、自身でキャラクターを作成し、仮想空間上で自由に操作できるゲームもメタバースの活用事例です。
そしてもちろん、ビジネス上でもメタバースはその存在価値を高めています。
1.1. メタバースとVRの違い
前述した通り、メタバースはインターネット上の仮想空間に作られた世界そのものを指しています。一方、VRは仮想空間をより立体的に体験するためのデバイスおよび技術です。VRの技術をメタバースに活用すると、メタバースの世界により溶け込んだような体験をすることができます。VRはゲームや体験型のアトラクションなどで多く活用されています。
1.2. ブロックチェーンとNFTとの関係性
ブロックチェーンやNFTといった技術はメタバースに必須な要素ではありませんが、メタバース内で経済活動をおこなう際に有効な技術として期待を集めています。
ブロックチェーンとは、総務省の定義によると「情報通信ネットワーク上にある端末同士を直接接続して、取引記録を暗号技術を用いて分散的に処理・記録するデータベースの一種であり、「ビットコイン」などの仮想通貨に用いられている基盤技術」とされています。取引履歴(ブロック)を鎖(チェーン)のようにつなげて管理することで、過去の取引の改ざんや不正な取引の継続を防ぐことができる技術です。
NFTは「Non-Fungible Token」の略で、日本語で「非代替性トークン」と呼ばれます。ブロックチェーンの技術を活用したNFTを利用すれば、デジタルデータに代替不可能な一意の値をつけることが可能です。NFTによって一般に所有者が不明とされるデジタルデータの所有を明確にし、偽造を困難にすることで、デジタルデータ取引の安全性を高めることができます。
メタバースに関連して注目を集めるブロックチェーンや、ブロックチェーンを活かしたDAO(分散型自律組織)については以下の記事をご覧ください。
1.3. メタバースとWeb3.0の違い
Web3.0とは、巨大企業にデータが集約されている現在の状況を変え、ブロックチェーン技術などを用いてデータを分散させることで実現する、より安全なインターネット環境のことです。現代はGoogleやAmazon、Microsoftなどの巨大企業がデータを抱え、人々の巨大企業依存が高まっている状態と言えます。Web3.0は、この巨大企業依存を脱却し、個人がインターネット上で自由な活動ができる世界を指した概念です。Web3.0を実現するための技術としてメタバースやブロックチェーン、NFTがあると理解しておきましょう。
Web3.0については以下の記事でも詳しく解説しています。
2. メタバースが注目される理由や市場規模
2.1. コロナによる、テレワークの普及
新型コロナウイルスの感染拡大により、オフラインでのイベントやセミナーが激減した一方、テレワーク化の動きが広がり、オンライン上での活動が急速に普及しました。その流れの中、メタバースは仮想空間でより円滑なコミュニケーションを取ることができる手段として注目を集めています。
2.2. 拡大する市場規模
総務省の「令和4年版 情報通信白書」によれば、メタバースの世界市場規模は今後大きく拡大すると予想されています。
2021年10月には、世界の巨大企業GAFAMの一角であったFacebookが、メタバースを意識させる「Meta(メタ)」に社名変更しました。今後はMetaを始めとしたさまざまな企業からメタバースを活用したサービスが展開されることが予想され、市場規模が拡大していく可能性は高いといえるでしょう。
2.3. VR技術の進歩と普及
メタバースを実現する技術そのものは古くから存在していたものの、一般的なユーザーへの普及には及んでいない状況でした。しかし、近年VR技術の発達により、誰にでも扱うことのできるものと変化してきています。また、スマートフォンの普及に伴い、VR技術にも使われる高解像度・高輝度な部品が量産され、結果としてVR機器の低廉化が起きました。
これらの理由により、メタバースはより多くの人々に注目されるようになりました。
3. メタバースをビジネスで活用するメリット
では、メタバースをビジネスで活用することによってどのようなメリットが得られるのでしょうか。主な3つのメリットを解説します。
3.1. 新たな顧客層を獲得できる
メタバースを活用して新規事業の創造や新しい価値提供をおこなうと、今まで接点のなかった顧客や従来の営業エリアから外れた遠方地域の顧客に対してもアプローチできるようになり、新しい顧客チャネルの獲得が実現します。
3.2. 働き方改革を促進できる
メタバースを活用してバーチャルオフィスやオンライン会議をおこなうことで、テレワークを始めとするさまざまな働き方に対応しやすくなります。テレワークでは従業員の姿が見られないことが、従業員間のコミュニケーション減少の大きな原因になっていますが、バーチャルオフィスであればお互いのアバターを見ながら気軽にコミュニケーションを取ることができます。
3.3. コストの削減にもつながる
メタバースを活用してオフィスや実店舗からオンラインへの移行を進めていけば、家賃や光熱費、従業員の交通費などのコストカットにつながります。固定費を削減すれば他の事業への資金投資もしやすくなります。
4. メタバースを社内で活用する事例
メタバースを社内で活用し、働く環境を整える事例として下記のようなものが挙げられます。
- バーチャルオフィス
- オンライン会議
- バーチャル社内研修
メタバースの大きな特徴は、お互いのアバターを通して、相手があたかも目の前にいるかのようにコミュニケーションが取れる点にあります。ビジネスチャットツールやビデオ会議ツールでもオンライン会議や社内研修をおこなうことは可能ですが、メタバースのほうがよりお互いの存在を意識しながらコミュニケーションが取れるようになります。
また、バーチャルオフィスのように仮想空間上で相手のアバターに近づくだけで音声でのコミュニケーションが取れる気軽さも、ビデオ会議ツールより優れている点といえます。
5. 【業界別】メタバースの活用事例
メタバースを事業に活用し、新しい価値提供に繋げている事例を業界別にご紹介します。
5.1. メタバース×小売業
小売業におけるメタバースの主な活用方法には「バーチャルショップ」が挙げられます。顧客は仮想空間上の店舗内に展示された商品をゲーム感覚で自由に閲覧でき、不明点があれば接客スタッフのアバターに近づいて質問できます。
株式会社ビームスでは、バーチャルイベントへ参加しメタバース空間上でバーチャルショップを開く試みが実施されています。バーチャルショップでは、BEAMSの社員がバーチャル接客をおこなったり、アバター用の衣装がデザインされたりと、仮想空間上のさまざまなオブジェクトによって、利便性にエンターテイメント要素を加えたショッピング体験を提供できます。
出典:世界最大のVRイベント『バーチャルマーケット2022 Winter』に5度目となるBEAMSのメタバース店が出現!
5.2. メタバース×観光業
観光業ではメタバースを活用したバーチャル旅行の取り組みが始まっています。新型コロナウイルスの影響や治安に心配がある地域など、観光に行きたくても行けないというシーンは少なくありません。しかしバーチャル旅行を活用すれば、仮想空間上の観光地を自由に散策できる体験を提供できます。
ANAホールディングス株式会社では、「時空を超える旅客機」をコンセプトにしたサービスの展開を予定しています。本サービスではスマートフォンやタブレットなどの端末を用いてバーチャル上で世界の都市や絶景スポットなどを訪れることができ、気軽に旅行体験ができます。実際の旅行に比べて旅費が少なく済むため顧客の裾野を広げられる点も大きなメリットです。
出典:バーチャルトラベルプラットフォーム「SKY WHALE」の開発・運営を担う「ANA NEO株式会社」を設立バーチャル空間での新しい旅体験提供へ
5.3. メタバース×イベント業
イベント業界においてもメタバースの活用が進んでおり、ファッションショーやトークショー、音楽ライブなどのイベントでメタバースが取り入れられるようになっています。メタバース内では、オンラインでメインのイベント映像を視聴できることに加えて、多様な展示、体験型コンテンツの提供もおこなわれています。
人気ファッションイベントの東京ガールズコレクションにおいては、アプリを用いてメタバース空間上でのイベント開催が実施されています。またメタバース空間でのみ体験できるイベントも開催されるなど、メタバースならではの魅力もあります。
出典:TGC公式メタバース「バーチャルTGC」アップデート版ダウンロード明日スタート!
5.4. メタバース×教育業
教育業においては、メタバースとVRゴーグル、ウェアラブルデバイスを組み合わせた教育改善が始まっています。メタバースでオンライン授業が行えるだけでなく、VRゴーグルによる視線や会話、ウェアラブルデバイスによる心拍変動データなどを用いて、生徒の集中度や興味を持ったポイントを可視化する試みが行われています。
NECでは、学校法人電子学園情報経営イノベーション専門職大学と仮想空間授業の実証実験を行っています。実証実験では、仮想空間上で得られた感情変化、覚醒度、会話量などのデータを基に、学生個々の授業への集中度、興味を持ったポイントなどの可視化に取り組んでいます。これらの技術を活用すれば、従来よりも生徒一人ひとりに最適化された授業を提供できるようになります。
また、NECでは企業向けに数多くのVRを導入しています。NECの事例や実証実験については以下をご覧ください。
6. 企業がメタバースを取り入れる際の注意点
ビジネスにおいてメタバースを取り入れていくメリットは多数ありますが、一方でデメリットも存在します。具体的には以下の通りです。
- 従業員や顧客への浸透に時間がかかる
- スペックの高い機器が必要になる可能性がある
- 個人情報の管理などセキュリティ対策が必須になる
- 法整備が追いついていない中での実施となる
メタバースは新しい技術であり、従業員や顧客が慣れるまでには一定の時間がかかるため、単発ではなく、継続的な取り組みが重要となります。また、スペックが高い機器が必要となり、コストが高額になる可能性がある点にも注意が必要です。
また、メタバースに関する機器や情報へのセキュリティ対策は必須であり、法律が十分に整備されていない段階での活用となる点も認識しておく必要があります。経済産業省では、仮想空間上の所有権や著作権といった観点から、その法的リスクについて言及しています。
7. メタバースの導入について
メタバースは仮想空間を構築する新しい技術です。ビジネスにおいてさまざまな活用方法が考えられており、その活用に取り組む企業も増え始めています。今後、積極的にメタバースを取り入れれば、新しいビジネスチャンスを得られる可能性はより高まっていきます。
しかし、新しい技術であるゆえのデメリットも存在します。この記事で解説した活用事例やデメリットを踏まえ、ぜひ自社事業へのメタバース導入と活用をご検討ください。