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2021年09月17日

なぜ、DXが注目されているのか?
デジタル時代のビジネスのあり方

 近年、企業を取り巻く環境は日々変化し、複雑かつ不透明さを増しています。特に、市場環境のデジタル化に対応するため、企業は活動の根幹を構成するビジネスモデルや組織体制、さらに文化の変革を迫られています。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大など予測できない外部環境にも対応するため、デジタル化によって組織やビジネスモデルの変革を図る一連の取り組みが「デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。

優位性を獲得するための変革がDX
IT化は業務効率、品質向上の手段

 DXは、2004年にスウェーデンのウメオ大学で教授を務めていたエリック・ストルターマン氏によって初めて提唱されました。デジタル技術の浸透によって、人々の生活があらゆる面でより良い方向へ変化できるという意味で、社会全体や人類全体を俯瞰したより広範なテーマとして生まれたコンセプトです。

 では、ビジネスの視点でDXはどのように定義されているのでしょう。デジタル技術の進展で劇的に変化する産業構造と新しい競争原理が、ビジネスチャンスにも事業継続の脅威にもなるため、デジタル技術を活用して変化に対応するという意味で使われています。

 また、経済産業省が提唱するDXには、グローバルで日本企業の再起を目指す強いメッセージが込められています。同省が公開している「DX推進指標」とそのガイダンスでは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。

 それでは、DXと従来のIT化では何が違うのでしょう。IT化とは業務の効率化を実現するため、デジタル技術の活用を進めること。一方、DXはデジタル技術の活用によって製品・サービスやビジネスモデルを変革し、企業の価値や競争力向上を実現することです。IT化は業務の効率化や品質向上などが最終的な「目的」であり、DXはIT化を「手段」として既存の事業やビジネスモデルのあり方を変革し、より高い価値を創造する取り組みとなります。

背景に生活様式と消費行動の変化
叫ばれる「2025年の崖」の危機

 DXが必要とされている背景には、生活様式や消費行動の変化、多様化が挙げられます。スマートフォンやPCは、私たちの日常生活や仕事に欠かせません。商品購入に限らず、情報収集やコミュニケーションなど、デジタル技術は消費者の行動と密接にかかわっています。消費者行動がスマートフォンなどに紐づき、大量のデータがさまざまな用途で活用されるようになっています。

 消費行動も従来の商品を購入して所有する「モノ消費」から、サービスや商品を購入したことで得られる体験に価値を求める「コト消費」に変化しています。今後、AIや5Gなどの技術進歩により、さらに消費行動が変化することも考えられます。

多くの企業が「ビジネス変革の必要性」を強く認識
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出典:「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査~ 調査結果サマリ ~」(独立行政法人情報処理推進機構)資料(平成31年4月12日に利用)https://www.ipa.go.jp/files/000073017.pdfをもとに作成

 そして、新型コロナウイルス感染症防止対策として広がったテレワークは、自然災害などのBCP(事業継続)対策としても定着するでしょう。そのため、データを一元管理するシステムの構築や業務プロセスの見直し、デジタル化が必要になります。

 デジタル化が進む中、日本企業には既存のシステムが複雑化していることで、内部構造がさかのぼって解明できない状態、いわゆる「ブラックボックス化」の問題があります。経済産業省がDXレポートで指摘した「2025年の崖」です。複雑化・老朽化・ブラックボックス化した古い基幹システムが残存した場合、2025年までに予想されるIT人材の引退やサポート終了などによるリスクの高まりなどが、国際競争力の遅れ、経済の停滞を引き起こすといわれています。さらに、古い基幹システムはコスト面でも大きな負担になるため、DXの必要性が叫ばれています。

コア業務に集中させる働き方改革を実現
データの価値を生かし、高い顧客体験を提供

 DXのメリットには、デジタル化によって業務の生産性や正確性の向上を図れることが挙げられます。従来の業務を見直し、デジタル技術を活用することで、工数の削減による作業の効率化や人為的ミスを極力回避することが可能になります。

 例えば、製造・流通などの現場では、センサーデバイスを通して現場のプロセスをモニタリング、制御、最適化、自律化させることでオンデマンド化が実現できます。時間や手間のロスも抑えられ、社員にも余裕が生じ、一層コア業務へリソースを集中できるため生産性の向上が見込まれます。経理部門などバックオフィスでは、「担当者しか分からない」というように業務が属人化されていることが多いです。DXで業務内容が明確となり、退職者が出た場合でも、新しい担当者がスムーズに引き継ぐことができます。DXを実現すれば、社員の働き方改革にもつながります。

 また、コスト削減や生産性向上だけではありません。スマートフォンなどの顧客接点から得たデータを、解析・活用することで顧客ニーズを捉えることも可能です。そのデータをプラットフォームで価値あるものに高め、利便性や豊かさといった顧客体験を提供することで、自社の商品・サービスの価値をより高めることが可能です。

サイロ化したシステムの存在が足かせ
枯渇するIT人材の確保も課題に

 DXは企業にとって多くのメリットがあるにもかかわらず、なぜ日本企業で進まないのでしょうか。

 まず、大きな課題となっているのが企業の多くが抱えるIT人材の不足です。古いシステムの運用保守は、少人数または1人で担当しているケースが多くみられます。また、経緯を熟知した担当者の退職により、スキルや専門性を有する人材が枯渇して進まない、技術進化のスピードに対応できる人材教育ができないという課題もあります。

 そのうえ、日本企業の多くは汎用的なシステムよりも、現場のニーズに合わせて事業部ごとに個別最適化した結果、システムがサイロ化(孤立化)しています。このサイロ化システムの存在が、データ一元化の障害となってデータ利活用ができない、システムの中身が複雑で現行システムの問題を把握しづらいなど、DX推進の足かせとなっています。

DXへの取組みに関し、企業規模による格差が見られる
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「デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進に向けた企業とIT人材の実態調査~ 概要編~」(独立行政法人情報処理推進機構)資料URL (令和2年5月14日に利用)https://www.ipa.go.jp/files/000082053.pdfをもとに作成

 そして、DXに対する経営層のリーダシップ不足、それによりDX推進が現場の担当者任せになっていることや現場での理解不足などの課題があります。また、縦割り組織のしがらみなどに縛られて改革を進めることはできないという、日本独特の課題も歩みを遅くしています。

戦略・ビジョンを明確化したDX推進
トップメッセージを社内外で共有

 DXは単なるデジタル技術の導入ではなく、ビジネスモデルを変革させ、市場での優位性を確立することが大きな目的です。それを実現するためには、戦略・ビジョンを明確化し、経営トップがメッセージを発信することが大切です。さらに経営層が戦略を策定するだけでなく、DXによってどのようなビジネスを構築したいのか、そのビジョンを社内外で共有することがDXを成功に導く大きなカギとなります。

 戦略・ビジョンの策定には「顧客体験を向上させる」など、DXの目的を明確化することが重要です。さらには、その目的を達成するために課題を洗い出し、どのようなデジタル技術が必要なのか既存システムを分析・評価し、システムの継続利用や刷新を検討し、社内組織を大きく見直すなど、DXに取り組める環境整備を実行することが必要になります。

 また、DX推進にはIT人材の確保と育成は避けて通れません。豊富な知識や経験を有した人材を確保し、経営トップの直轄や部門を超えて動けるDX推進チームとしてIT人材を配置することが実行力のある手法となります。

データ分析、活用を支えるDXテクノロジー
ビジネスモデルを変革するAI、生体認証など

 DXでは自社の戦略・ビジョンに合わせて、既存のシステムに必要なデジタル技術の導入が必要です。特にデータを分析、活用するテクノロジーは最も重要です。組織やビジネスモデルの変革につなげる主なテクノロジーを紹介します。

 「AI(人工知能)」は、画像認識や自然言語処理、音声認識などはDXの中核となる技術の一つです。ディープラーニングの実用化によって、AIの可能性は飛躍的に高まっています。ビジネスシーンだけではなく、医療現場や農業など今後はあらゆるシーンでAIの活用が広がるでしょう。

 「生体認証」は、スマートフォンやPCなどで活用され、私たちの生活で身近になっています。デジタル化の社会で、すばやい本人確認と自分自身をカギにする生体認証技術は、なりすましや偽造が困難な、より確実なセキュリティとして注目が高まっています。

 「ネットワーク」は、DXを支えるITインフラの重要な要素です。「クラウドや外部接続が柔軟なネットワーク」「膨大なデータ量に対応できるネットワーク」「場所を問わず利用できるネットワーク」「ビジネスを止めないセキュアなネットワーク」を実現しなければなりません。DX推進には、ネットワークの仮想化・抽象化で物理的な制約から解放する必要があります。

 「クラウド」は、インターネット上のサービスプラットフォームから、ネットワーク経由でさまざまな IT リソースをオンデマンドで、スマートフォンやパソコンで利用。DXでは、クラウド環境を活用することで無駄な開発コストを抑え、外部のシステム、データと連携しやすくなります。

 「IoT」は企業がDXの実現に向けて、幅広く求められているテクノロジーです。IoTは、センサーがモノ・コトの情報を収集してクラウド上のサーバに送り、それを分析してフィードバックを返す技術です。温度や湿度、人の動きなどリアル世界の情報を収集する手段として期待されています。

 DXではIoTやクラウドの活用頻度が増えることからセキュリティリスクも高くなります。自社の保有するコンピューターやネットワーク、Webサーバなどへの不正アクセスを防止する技術が「サイバーセキュリティ」です。

市場の競争力に不可欠なDXの取り組み
本来の目的を見失わないことが実現のカギ

 社会や消費者の価値観が様変わりしている時代に、企業が競争力を獲得して市場の優位性を維持するためにはDXの実現が不可欠です。

 DXの重要性を理解しながら取り組まなければ、間近に迫る「2025年の崖」から転落することになりかねません。それは、グローバルにおける日本経済の致命傷につながるリスクをはらんでいます。企業のさらなる成長と日本経済の躍進のため、DXへの取り組みが求められています。

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