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2021年08月30日

企業はSDGsとどのように向き合うべきか?
持続可能な社会でありつづけるために

 近年、SDGsという言葉をよく聞きます。「Sustainable Development Goals」の頭文字をとり、持続可能な開発目標を意味しています。この「持続可能な」というのは、今だけでなく、将来にわたって地球環境を失うことなく維持しつづけていくこと。よって、SDGsは「将来の世代のための環境や資源を壊さず、今の生活をより良い状態にするための目標」となります。この目標を実現するためには、国や企業などのリーダーが協力して行動していくことが大切ですが、私たち一人ひとりの意識や行動も重要となります。

MDGs の後継として新たな世界共通目標

 SDGs(持続可能な開発目標)は2015年9月、国連サミットで決められた国際社会の共通目標です。このサミットでは、2015年から2030年までの長期的な開発の指針として、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択されました。このアジェンダに掲げられたのがSDGsです。

 なぜ、こうした目標が掲げられたのでしょうか。産業革命以降、世界中で開発競争が繰り広げられてきた結果として貧困や飢餓を招き、自然環境が破壊されたことで経済・社会の基盤となる地球の持続可能性が危ぶまれたことに起因します。1995年の世界社会開発サミットでは、世界の絶対的貧困を半減させるという目標が提示されました。

 そして、21世紀の幕開けが迫りつつあった2000年9月、ニューヨークで国連ミレニアム・サミットが開催され、「極度の貧困と飢餓の撲滅」や「ジェンダー平等推進と女性の地位向上」、「環境の持続可能性確保」など、8つのゴールを掲げた開発分野における国際社会共通の目標「MDGs(ミレニアム開発目標)」を採択。このMDGs が2015年に達成期限を迎えたことを受けて、後継として新たな世界共通の目標のSDGsが定められました。

日本でも当てはまる「貧困問題」と「ジェンダー平等」

 SDGsではMDGsより幅広い課題が網羅されています。豊かさを追求しながら地球環境を守るため、17のゴールとそれを達成するために169のターゲット(具体的な達成基準)を設定。17のゴールは、大きく3つの分野と各分野を横断的に関わる枠組みに分けられます。

 まず1~6のゴールすなわち目標は順に、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「安全な水とトイレを世界中に」です。これらは社会に関する目標となります。

 ここで、貧困について日本の状況を紹介します。厚生労働省が2020年7月に公表した「2019年国民生活基礎調査」によると、「子どもの貧困率」(18歳未満)は、2018年時点で13.5%。前回2015年の13.9%から大きな改善は見られず、依然として子どもの約7人に1人が貧困状態にあるといわれています。貧困問題は先進国の日本でも当てはまる課題なのです。

 また、ジェンダー平等に関しても課題があります。2020年12月に世界経済フォーラムで公表された「Global Gender Gap Report 2020」の、各国における男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数によると日本の順位は153ヵ国中121位(前回は149か国中110位)でした。近年、日本でもジェンダー平等が浸透しつつありますが、一層の取り組みが必要と言えます。

「働きがい」や「住みよいまち」など暮らしと人生に関わる課題

 7~12の目標は、「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「働きがいも経済成長も」「産業と技術革新の基盤をつくろう」「人や国の不平等をなくそう」「住み続けられるまちづくりを」「つくる責任つかう責任」です。経済に関する目標で、暮らしの中で密接に関係しています。

 日本では長時間労働と、それによる過労死問題が顕在化。2013年に国連の社会権規約委員会が日本政府に対して、長時間労働や過労死の実態を懸念し、防止対策の強化を求める勧告をしたことが報道されました。日本でも「ワーク・ライフ・バランス」の重要性が意識され、2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行されました。

 「住み続けられるまちづくりを」は最も身近な課題です。人口が集中する東京など大都市では、通勤・通学時の満員電車や交通渋滞の問題が続いています。一方、65歳以上の高齢者が人口に占める割合が50%を超えた「限界集落」の問題があります。「限界集落」では、立地割合が少ない商店や病院など、生活サービスを利用するために遠方へ出向く必要がある上、交通手段が脆弱です。また、日本全体では高度成長期以降に整備された道路橋やトンネル、河川管理施設(水門等)、下水道、港湾などが、今後20年で建設後50年以上を経過する施設の割合が加速度的に高くなるといわれています。

地球温暖化防止に果たす日本の役割

 13~15は環境に関する目標となります。「気候変動に具体的な対策を」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」が設定されています。

 世界中で地球温暖化の影響が年々深刻さを増しています。日本でも大型台風や局地的な豪雨による大規模な自然災害が多発し、多くの犠牲者を伴うこともあります。地球温暖化防止に向けて、二酸化炭素(CO2)排出量の削減が急務なのです。

 全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)によると、CO2排出量の最多は中国で、近年では毎年約90億トン以上といいます。次いで多いアメリカは約50億トンを排出。日本は約10億トンで5番目に多い排出量です。世界中が地球温暖化防止に取り組む中で、日本の果たす役割は大きいと言えます。

世界の二酸化炭素排出量(2018年)
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世界の二酸化炭素排出量(2018年)
出典:EDMC/エネルギー・経済統計要覧2021年版/全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイトより

 そして、3つの分野を横断的に関わる枠組みに、16の「平和と公正をすべての人に」と17の「パートナーシップで目標を達成しよう」の目標があり、その上で達成のための169のターゲットが設定されています。

 17の目標は、政府や⾃治体行政だけではとても達成はできません。近年は、世界中で企業がSDGsへの取り組みを進めています。これまで関係ないと思っていたような社会の動きに企業が関⼼を持ち、経済活動の前提であった⽣活様式や消費⾏動、働き⽅などが変わっていく先を読むことが重要だからです。⻑期的な視点で⾃社の将来を考え、持続的な発展につながる経営と事業展開を図ることが大切になります。

投資家も目を光らす企業の意識、取り組みはビジネスチャンスに

 SDGsが目指すのは、世界が直面している課題の解決です。企業がこの課題解決に取り組むことによって、新しいビジネスチャンスの創出につながります。17の目標に対し、自社の技術やサービスを用いて解決する新規事業や、他業種と足りない技術を補う協働などの事業展開が可能になります。

SDGs景気DI(総合)の推移
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出典:帝国データバンク「TDB景気動向調査」

 また、企業のCSR活動として非常に重要な意義を持ちます。市場ニーズや取引先ニーズとしてもSDGsはビジネスにおける取引条件になる可能性もあります。投資家も投資条件として、収益だけでなく企業のSDGsへの取り組みも重視するため、支援を得られやすくなります。反対にSDGsに取り組まない企業は、世界で取り組むべき課題に無関心とみなされ、ビジネスチャンスを失うことになるでしょう。

 企業ブランディングにも高い効果があります。貧困問題やジェンダー平等、気候変動への取り組みなど、社会に対する責任を果たす企業として認知されます。社会課題への対応が評価され企業イメージが向上し、多くの⼈に「この会社は信⽤できる」、「この会社で働いてみたい」という印象を与えます。それにより、先進的な思考をもった優秀な⼈材が集まるなど、企業にとってプラスの効果をもたらすでしょう。

実態が伴わないとマイナスイメージに転落

 SDGsは経営層や一部の部署だけではなく、企業全体での取り組みが重要です。それは、経営理念・指針との統合を行い戦略の方向を決定する必要があるからです。そして、現場の従業員レベルまで社内に情報発信し、全社的な取り組みに向けて社内での共感を高めることが大切です。

 最も注意すべきは、SDGsウォッシュ(SDGsウォッシング)にならないようにすることです。これは、SDGsへの取り組みを掲げながらその実態が伴っていない、実際と異なることを揶揄する言葉です。社会は見せかけのSDGsに敏感で、反対に企業イメージや価値のマイナスになりかねません。

「誰一人として取り残さない」、生体認証で子どもたちを救う取り組み

 日本でも気運が高まりつつあるSDGsの取り組みを紹介します。ジェンダー平等の取り組みとして、経済産業省は東京証券取引所と共同で、2012年度より女性活躍推進に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として選定し、発表しています。女性活躍推進に優れた上場企業を「中長期の企業価値向上」を重視する投資家に魅力ある銘柄として紹介することで、企業への投資を促進し、取り組みを加速化していきます。

 また、企業の技術が開発途上国の健康と福祉の課題解決につながっています。NECの生体認証技術はアフリカで子どもたちのワクチン接種普及に貢献しています。途上国全体の子どもの3人に1人は、IDがなく存在すら認識されていないといいます。そして、アフリカのサハラ砂漠以南の「サブサハラアフリカ」と呼ばれる地域では、5歳未満の子どもの半分は出生届が出されていないといわれます。

 そのため、標準的なワクチンすら受けられず、5歳まで生きられない幼児が大勢います。この課題を解決するために、指紋認証が注目されました。指紋という生体情報を本人確認手段として使うことで、取り残されてワクチンを受けられないという状況を改善させる取り組みが進められています。まさにSDGsが誓う、「誰一人として取り残さない」の活動です。

期限まで残り9年、一人ひとりの取り組みが未来を変える

 企業のSDGsへの取り組みは、持続可能な開発を実現するために不可欠です。まずは自社の事業が17の目標にどのように貢献できるのか、理解を深めるところから始めましょう。

 そして、17の目標は「決して他人事ではない」ということです。SDGsの取り組みにはさまざまなアプローチ方法があり、国や自治体、企業などの取り組みだけではなく、エコバッグやマイボトルの利用など、私たち地球上に住む人間一人ひとりができることはたくさんあります。2030年の期限まで残りは9年。SDGsを「知っている」と「取り組んでいる」では、未来が大きく変わるはずです。

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