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2021年01月14日

スマートシティとは?一人ひとりの生活様式にあった持続可能な都市づくり

 ICTを活用して生活の質の向上や新たな価値創出による経済循環の促進、社会課題の解決を図る「スマートシティ」という言葉をよく聞きます。実証実験などを通じて構想を磨く段階から、いよいよ社会実装する段階へと移行しつつあり、さらにコロナ禍において、住民の生活や企業活動が大きく転換していく中、今その動きは加速しています。

全体最適化が図られる持続可能な都市へ

 スマートシティとは、どのような概念の取り組みなのでしょうか。国土交通省は「都市が抱える諸問題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画・整備・管理・運営)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」と定義しています。

 都市の中では、様々な個性、生活背景を持つ住民が暮らしています。また、様々な業界・業種の企業や団体が都市機能を構成しています。スマートシティでは、ICTの利活用によって、住民一人ひとりの活動、さらには各企業・団体の活動のベクトルを揃え、効果的かつ効率的な産業の創出・育成やエネルギー利用、治安維持、子どもや高齢者の見守り、交通渋滞の解消、災害対策などを実現します。

なぜスマートシティが注目されるのか

 従来の計画都市の実現手段は、都市機能を具体化した建築物や道路の配置、土地の区画整理、ライフラインの設置など、ハードウェア作りが中心です。このため、時間が経っても都市機能は大きく変わることはなく、そこに暮らす住民の方が、都市に合わせて価値観や文化、生活を変えていく面があります。

 一方、スマートシティでは、時代とともに変化する人口増減やエネルギー消費などの社会問題、住民の価値観やニーズに合わせて、最適な都市運営の継続を目指しています。そのため変化に対し、柔軟に対応できる仕組みが求められ、スマートシティの実現手段としてICTは高い親和性を持っています。コロナ禍を契機としたテレワークの普及など、大都市への人口集中にも変化の兆しも見えてきました。ICTを活用したスマートシティは、急激な社会変化にも柔軟に対応できる都市機能として注目を集めています。

スマートシティを実現するための技術と仕組み

 スマートシティを構築するICTシステムの機能と構造という側面から見ると、いわゆる「Cyber Physical System(CPS)」そのものだと言えます。CPSとは、生活の場や街角など現実空間の状況や動きを反映したデータを収集、これを仮想空間内で解析して、現実空間の活動を最適化するシステムです。データの収集には、各種情報端末に加え、IoTデバイスの利用が必要になってきます。そして、仮想空間での解析や最適化には、クラウドや人工知能(AI)などを使ったビッグデータ解析が必要です。さらに、解析結果をフィードバックする際には、それを受けて何らかの情報を住民に提示する情報端末が必要です。将来的には、インフラ設備や自動運転車、ロボットなどに制御データをフィードバックし、都市の状況や動きに応じて最適に動く自律型システムへと発展することになるでしょう。

 ただし、システムを分野ごと、サービスごと、自治体ごとに個別最適化して実装してしまうと、構築したシステムやサービスの再利用や連携が困難になり、拡張性も乏しくなってしまいます。都市ごとにシステムの独自性があって当たり前ですが、個々に白紙の状態からシステムを構築・運用したのでは、莫大なコストと、労力と、知見を費やすことになってしまいます。

都市OSで、都市ごとの課題やニーズの変化に対応

 現実的で持続的に発展し続けることが可能なスマートシティの実現を目指して、2020年3月、内閣府は「スマートシティリファレンスアーキクチャ」と呼ぶスマートシティの設計図を公開しました。そこには、持続的なスマートシティの構築・運用を見据えたデータやサービスの連携機能を提供する情報プラットフォームである「都市オペレーティングシステム(都市OS)」と、都市の管理・運用に向けた戦略とルール、組織など「都市マネジメント」に求められる要件が定義されています。このうち、都市OSは、サービス同士の連携や都市間の連携を支えるシステム的な共通の土台となります。1対1で結合されていたサービスとデータの分離や、API(Application Programming Interface)の公開や認証を連携するための仕組みの規定など、サービスやほかの都市OSを相互に円滑につなぎやすくする役割を果たします。

スマートシティリファレンスアーキテクチャ 全体像
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スマートシティリファレンスアーキテクチャ全体像
出典:business leaders square wisdom「ニューノーマル時代、スマートシティに重要な2つの視点とは」より引用しNECにて図版作成

 都市OSには、次のような3つの要件が求められます。1つめは「拡張容易(つづけられる)」であること。機能拡張や更新を容易にするためには、機能間を疎結合に結ぶシステムにするなど、必要な機能だけを拡張・更新できる仕組みが必要です。

 2つめは「相互運用(つながる)」できること。地域内外のサービス連携や各都市の成果の有効活用を可能にするため、機能やサービスのインタフェースを共通化して、広く公開する必要があります。

 3つめは「データ流通(ながれる)」ができること。地域内外の様々なデータを分野や組織の壁を超えて流通させて一元化したデータとして利用するためには、異種データを仲介する仕組みが必要です。

 加えて、都市OS上に構築するシステムでは、社会に受容されるデータ活用を実現するための「トラスト」の確保が重要になります。トラストとは「データそのものが本当に正しいのか」という真正性、「データを扱うシステムに問題はないのか」という安全性、そして「取引先やエコシステムが信用できるかどうか」といった信頼性を担保することです。セキュリティを強化してデータの機密性を確保するだけでなく、住民をはじめ社会から信頼を得るためのより広範な取り組みが必要になるのです。

 こうしたスマートシティの構築・運用に向けた要件を満たす具体的な都市OSとして、その活用が期待されているのが、EU(欧州連合)での官民連携投資によって開発された「FIWARE(ファイウェア)」です。既に世界26カ国140都市以上が、FIWAREを採用しています。

 さらにCOVID-19の拡大によって、パンデミックはどの都市にも一様に影響を与えるものであり、予め対策をしておかないと、人々の生活に大きな支障をきたすことをあらためて経験しました。これからのスマートシティでは、防疫は課題の一つという位置づけではなく、どの都市においても前提とした課題になったといえます。そのため、今後スマートシティを推進していく際には、ある課題解決のために導入するデジタル技術やソリューションが、パンデミック発生の非常時にどのように切り替えて転用できるかという観点を持って設計することも必要です。

国内外で進むスマートシティの取り組み例

 国内外では、既に特徴的なスマートシティの取り組みが始まっています。国内では、持続可能なコンパクトシティを目指す富山県富山市の取り組み例です。同市では、少子高齢化による人口減少問題への危機感が現在ほど強くなかった2007年に、将来を見据えてコンパクトシティ戦略を打ち出しました。広域に分散していた都市機能をコンパクトに地域集約し、生活の便がよく、行政サービスも行き届き、コストも安い都市へと作り変える構想です。加えて、2018年からは、IoTを活用したスマートシティの実現にも取り組んでいます。IoT向け省電力・長距離通信が可能な「LoRaWAN™(ローラワン)」を居住地域に張り巡らせ、取得した個人情報以外のデータをFIWAREに載せて分析し、地域の新たな価値創出を行うという試みに挑戦しています。そのパイロット事業として、子供たちが登下校する際の通学路の安全を確保する「こどもを見守る地域連携事業」を実施しました。

富山市センサーネットワークイメージ
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富山市センサーネットワークイメージ
出典:富山市ホームページ「富山市センサーネットワーク」について、より引用しNECで作成

 海外では、米国ミシガン州シカゴ市で実施された米国で最初のIoTを活用したスマートシティの取り組み「Array of Things(AoT)」です。同市では、都市環境、インフラ、都市活動についてのリアルタイムデータを、市内500カ所に設置したIoTデバイスから収集しています。収集したデータは国内外の研究機関や大学、企業、行政、市民・起業家など一般に開放し、街の様子を仮想空間内で再現したデジタルツイン(先述「Cyber Physical System(CPS)」に相当するもの)を構築して、街の未来を予測するためなどに活用します。デジタルツインを活用して様々な行政の施策効果を検証し、大気汚染やヒートアイランド現象、騒音、渋滞などの効果的対策を探すことができるといいます。

 次に、中国杭州市の「ETシティブレイン計画」です。2017年、同市は、人工知能を活用した交通監視システムによって、渋滞、違反、事故を減らすシステムの社会実装を、アリババを中心にして進めました。このシステムの特徴は、単に都市の活動を「見える化」するだけでなく、社会インフラを自律制御して円滑な社会活動を促していることです。例えば、信号を制御して交通の流量を調整し、渋滞の発生を予防・抑制しています。救急車などの緊急車両が通る際には、信号を青に切り替えて目的地への到着時間を短縮させています。これによって、激しい交通渋滞はほぼ発生しなくなり、緊急車両の到着時間は平均して15分以上早くなったといいます。

一人ひとりの価値観や生活様式に合った都市機能

 世界各地の都市では、それぞれ個別の課題やニーズを抱えています。しかも、世界の人々の価値観が多様化し、地球温暖化や人口爆発、格差など様々な社会問題が顕在化したことで、すべての人が同じかたちの豊かさ、幸せを追求することはむずかしくなってきています。

 一人ひとりの価値観や生活様式に合った生き方を擦り合わせる機能を都市自体が備えるため、データを有効活用するスマートシティの構築が必須になっています。

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