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2018年08月09日

NEC iEXPO KANSAI 2018

官民連携で取り組む「データシティ関西」の魅力とは
~5名のキーパーソンが明らかにした「実証事業」の課題と可能性

 2019年「G20サミット首脳会議」、「ラグビーワールドカップ2019日本大会」、「ワールドマスターズゲームズ2021 関西」、そして誘致が進む「2025 大阪・関西万博」──。大規模な国際イベントが目白押しとなる関西。それだけに、官民が連携しデータを活用した安全安心のまちづくりや人々の健康増進など新ビジネスの創出が期待されている。すでに実証実験も数多く動き出しているが、果たしてどのようなデータシティの姿が描かれ、新たなビジネスモデルが構築されようとしているのだろうか。実証実験も手掛ける各業界のキーパーソン5名がNEC iEXPO KANSAI 2018のパネルディスカッション「2025年『データシティ関西』実現に向けて」に集い、それぞれの視点から現状の課題や未来像を語り合った。

「デジタル・ガバメント」ランキング11位の日本はどう変われるか?

 国連ではデジタル・ガバメントの世界ランキングを公表している。2016年は1位がイギリスで、オーストラリア、韓国が続き、日本のランキングは残念ながら11位だ。

 なぜ、イギリスがトップにランキングされているのか──。その理由について、モデレータを務めるNEC執行役員兼CMOの榎本 亮は「イギリスは市民中心のサービス設計ができているからであり、市民が体験する価値、いわゆる顧客体験価値を見据えて行政サービスを設計していることが評価されているから」と指摘する。

 一般に行政サービスは縦割りになりがちだが、イギリスではエネルギーや水道、交通、健康など分野を横断したデータ活用が進んでいることや、スマートシティに関する用語やガイドラインを定め、分野を越えて価値観やルールを共通化していることなどがデジタル・ガバメントの成功要因になっているという。

 「2025年に向けてさまざまな国際イベントが予定されている関西では、データシティを立ち上げていくには絶好のタイミング」という榎本のコメントを皮切りに、産学官の5人のパネリストが「地域社会とデジタルの融合」「プライバシーと便利さ」「社会実験の進め方」といったテーマを中心に、実際の取り組みや想いを次のように語った。

社会課題を解決するための地域社会とデジタルの融合とは

 トップバッターは先進的なICT活用などに取り組む、神戸市企画調整局政策企画部産学連携課担当係長の長井 伸晃氏だ。神戸市では2016年度から2020年度までを目標年次とする「神戸2020ビジョン」を進めている。人口減少のなかで、「若者に選ばれるまち・誰もが活躍するまち」をテーマに掲げ、市民と行政が一緒になり、さまざまな取り組みにチャレンジしている。また、この行政の動きに呼応する形で「実験都市神戸」を掲げるなどしてさまざまな活動を進める市民も現れ始めているという。

 データ活用の取り組みでは、行政の課題解決のためにICTを活用している。「例えば、これから進められる神戸市三宮の再整備の効果をデータの可視化・分析を通じて検証を行っていくことも、その一つ。このほか、NTTドコモとの協業により、ICTを活用した子どもの見守りサービスの実証事業を行い、その結果を踏まえて民間ベースでサービス化に向けた検討が進められているところです」と長井氏は説明する。

神戸市 企画調整局
政策企画部産学連携課
産学連携担当 係長
長井 伸晃氏
大阪商工会議所
経済産業部長
槇山 愛湖氏

 2人目のキーパーソンは、大阪商工会議所経済産業部長の槇山 愛湖氏だ。大阪商工会議所では、まさに高齢化社会の日本で大きな課題となる健康寿命の延伸に焦点を当てている。槇山氏が強調するのは、「あくまでも新ビジネスの創出を目指している」こと。関西の健康・医療関連産業が拡大し、市民が心身ともに健康になれるモデル地域を目指している。データ活用では、メディカル、ウエルネス、スポーツを3本柱に取り組む。新ビジネスの創出では、裏付けとなるデータが重要になるという。例えば個人が健康づくりに取り組む際、どんな効果があるのか、具体的なデータを知ることでモチベーションが上がるからだ。「そのためには個々人にカスタマイズされた情報が必要になり、企業はデータを活用した新ビジネスの展開が可能になる」と力説する。

 次なるキーパーソンは大阪大学大学院生命機能研究科 WAKAZO執行代表の塩田 悠人氏で「関西の若者の代表」がキャッチフレーズだ。WAKAZOは若者が生きやすい社会づくりに向けて関西の学生を中心に、約50国籍、80名で活動する。データ活用ではヘルスケア分野に力を入れ、「データの正しい使い方を人に応用し、予防医学を目指したい」と意気込む。実際に進めているプロジェクトとしては、次世代ヘルスケア人材育成事業に軸足を置いた「inochi学生プロジェクト」が説明された。これは、中高大学生・高専生によるヘルスケア課題解決プランコンテストの実施や、若者による万博への参画を進めるもので「大阪・関西万博で人とモノの関係性を問うパビリオンをデザインし、時間に命をつむぐ社会を目指す『WAKAZO CREATIVE PROJECT』を計画している」と塩田氏は万博への意欲を示す。

大阪大学大学院 生命機能研究科
WAKAZO執行代表
塩田 悠人氏

大阪・夢洲を未来社会のデータ活用の実験場に

 データシティ関西の実現に向けて大きな役割が期待されるのが公益社団法人関西経済連合会だ。産業部長の野島 学氏は、関西経済の状況から切り出した。かつて関西経済は世界のベストテンに匹敵するGDPを誇ったが、近年は新興国の出現などを受けて相対的に地位が低迷。この状況を立て直すため、京阪神を中心に企業や大学、研究機関が集積する関西の地の利を生かし、「エリアとエリアを結び付け、アジア有数のイノベーション拠点を目指している」と説明する。データ活用では、誘致を進める2025年大阪・関西万博の会場に予定される夢洲(ゆめしま)を未来社会の実験場として、自動車の自動走行や新交通システム、キャッシュレスなどさまざまな実証事業を行いたいという。「研究機関が集まる『けいはんな』地域でICTの研究開発を行い、それを夢洲で実験し、ベンチャー企業が課題解決に生かすといったデータ活用・共有の循環」が目標だ。

公益社団法人 関西経済連合会
産業部長
野島 学氏
毎日放送 経営戦略室
齊藤 浩史氏

 また、デジタル技術やデータ活用と密接にかかわるのが放送業界だ。毎日放送経営戦略室の齊藤 浩史氏は、インターネット時代のテレビ広告のあり方について言及。「インターネット広告の市場規模が拡大するなかで、テレビ放送ではデータの活用が大きなテーマになっています。テレビは人を動かす力があり、その力を関西の活性化につなげていきたい」という。齋藤氏は全国の放送局61社とNECなどのメーカーや広告会社で構成されるマルチスクリーン型放送研究会の事務局長を務める。同研究会では、テレビCMなどの内容を視聴者のスマホに届けるセカンドスクリーンサービスの実用化に取り組むなど、ネットとは異なる広告展開に挑戦している。

デジタル社会に必要な地域住民のリアルな関係

 それぞれの取り組みを進める5名だが、「リアルな社会で起こる行動とデジタル社会での行動やデータを結び付ける上で何が大切になるか」との榎本の問いかけに対しては、神戸市の長井氏が子ども向け地域見守りサービスの取り組みを紹介。地域住民の関係性が希薄になるなか、ICTでいかに関係性をカバーできるかという発想が地域見守りサービスの実証事業につながっているという。実証事業はBLE(低電力Bluetooth)タグを持つ子どもが検知ポイントの受信機や、地域住民の協力者が保有するスマホの近くを通過すると位置情報が保護者の専用アプリに通知され、子どもの見守りが可能になる仕組みだ。このなかで長井氏は「デジタル実証事業といえども、商店街に受信機の設置をお願いするなど、重要なのは“リアルな人のつながり”」だという。デジタルを媒介に年配者が所有するスマホに見守りアプリのインストールを若者が手伝うなど、地域のリアルな関係性をつくるきっかけにもなっていることを紹介した。

NEC執行役員 兼CMO
榎本 亮

 また、プライバシーと利便性についてでは、大阪商工会議所の槇山氏が取り組みのなかですでに見えてきたポイントを語る。「健康や医療のデータは個人のプライバシーにかかわるセンシティブな情報。新たに健康ビジネスを立ち上げる際に、個人データをどう扱うのか利用者に理解してもらう必要があります。実証では仕組みばかりでなく“利用者がどう感じるのか”にも重きを置いている」と指摘する。

 関西経済連合会の野島氏も同様の課題があるという。連合会では企業の健康保険組合が管理する従業員の情報を集めてビッグデータ解析を行い、健康経営に役立てる活動を進めている。だが、「従業員の健康情報を外部に出すことに抵抗感がある組合もあります。夢洲などに特区を設け、プライバシーとデータ活用の問題を含め、社会の理解を得るための実験を進めていく必要がある」と提唱する。

 こうした健康データなどを活用した新サービスの創出や社会の仕組みをつくる実験のあり方について、榎本が強調したのは「小さく生んで大きく育てる発想」だ。プライバシーの問題についても、個人によって感じ方は異なり、多様性を保証するためにも地道な社会実験が必要となる。そこは、社会や人々に受け入れられるかどうか、検証を重ねていくことがポイントになる。

 冒頭で紹介したイギリスにはデジタル・ガバメントのデザイン原則がある。「まず、ニーズからはじめる」「データをもってデザインする」「受け入れられやすいものに作る」「オープンにすれば物事はもっとよくなる」などだ。こうしたデザイン原則を参考にしながら、2025年「データシティ関西」の実現に向け、「NECでは官民の皆さんとの共創を進め関西の活性化に貢献していきたいと考えています。今後ともオープンな対話を通じ、地域社会の発展を皆さんと共に追求していきます」と締めくくった。

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