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織田 浩一 北米トレンド

日用品だけではない!サブスクリプション化が広がる北米市場
~夕食や玩具、子供の習いごとのお試しまで~

2018年08月08日

 Eコマースが一般化し、その利便性を享受していると食材や家庭用品、カミソリ刃など、あまりブランド選択を考えずに定期的に購買する日用品は、自動的に自宅へ届けて欲しいと考えるようになる。それとは逆に、ファッション用品や化粧品、レシピなどのように、新しいスタイルを提案してもらったり、試用ニーズの高い商品は、スタイリストやシェフがキュレーションしたもののなかから選択することで、新たな発見を楽しめるようにしたい。

 アメリカでは、このどちらのニーズをも満たすサブスクリプションコマースが市場を拡大している。今回はその現状について解説したい。

サブスクリプションコマースとは?

 サブスクリプションとは「定期購入」の意味。定額、または商品内容やサービスによる価格で、毎月、毎週など定期的に特定の商品や商品パッケージを購買できるサービスをいう。分野としては映画・テレビ番組、ゲーム、本などのデジタルコンテンツや食品、家庭用品、ペット用品、ファッション、化粧品など多様な広がりを見せている。

 市場も大きく拡大しており、業界誌『Internet Retailer』によると大手Eコマース企業によるサブスクリプションコマースは2011年の5700万ドルから2016年に26億ドルと、50倍近く飛躍的な成長を見せている。

サブスクリプションコマース事業への投資状況

 背景には、ここ数年大きく進展している投資があり、新たなスタートアップが多数誕生している状況がある。グローバルで多分野のスタートアップ企業への投資状況などを調査するTracxnが、今年2月に公開したサブスクリプションコマースのレポート「Tracxn Feed Report - Subscription Commerce」によると、グローバルで2015年、2016年にそれぞれ16億ドルが100社近い企業に投資され、その前後の6年で毎年72%も投資が伸びていることが示されている。この時期にシード投資や追加投資を受けたスタートアップが、今では大きくビジネスを拡大したり、売却、上場などのイグジット(Exit)を行っているのが現状である。

世界でのサブスクリプションコマースへの投資状況
出典:Tracxn Feed Report - Subscription Commerce - Feb 2018
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サブ市場の分析

 このレポートにはサブスクリプションコマースのサブ市場での投資状況なども含まれている。最大の市場は、音楽ストリーミングのスポティファイ(Spotify)などを含めたデジタルメディアが35億ドルで大部分のシェアを占めている。同時に該当企業数や投資を受けた企業数は少なく、この分野の市場はある程度成熟していることが推測できる。逆に食品・飲料分野やファッションなどは該当企業数が多いが、投資を受けた企業数は比較的少なく、まだ競争が激しいので、これから市場が整理されることが予想される。

サブ市場 概要 代表的な企業 該当企業数 投資を受けた企業数 投資金額
デジタルメディア デジタルメディアコンテンツのストリーミングサービス Spotify 46 32 $3.5B
食品・飲料 食品、食材とレシピ、飲料のサブスクリプション HelloFresh 460 89 $1.1B
必需品 身繕いのための商品、家庭用品、下着を含めた毎日の必需品 Dollar Shave Club 105 19 $649M
ファッション ファッション・アクセサリーのサブスクリプション ShoeDazzle 203 29 $622M
幼児・子供 母親をターゲットとしたおもちゃや幼児・子供用品 Honest 183 37 $447M
美容 化粧・美容用品 Ipsy 158 34 $371M
ヘルスケア 医療、サプリメント、薬品などのサブスクリプション PillPack 137 23 $161M
ペット ペット用のおもちゃ、アクセサリー、食品などのサブスクリプション BarkBox 74 10 $39.4M
定期的に花や植物を届ける H. Bloom 11 4 $26.3M
ニッチ製品 ギフト、ゲームなどテーマやキュレーションによる製品群のサブスクリプション Loot Crate 183 12 $25.1M
単位:Bは10億、Mは100万。出典:Tracxn Feed Report - Subscription Commerce - Feb 2018

マッキンゼーの調査

 それでは、ユーザー側からアメリカでのサブスクリプションコマースの状況を見てみよう。コンサルティング企業であるマッキンゼー・アンド・カンパニーが、5000人のアメリカ人を対象にサブスクリプションコマースの現状について調べた「Thinking inside the subscription box:New search on e-commerce consumers」というレポートを発表している。

 まず、サブスクリプションの利用率については、下図のように49%が何らかのサブスクリプションコマースサービスを利用している。だが、主なものはデジタルメディアの利用で、単体ではオンラインショッパー全体の35%、ボックス(商品)のサブスクリプションと併せて利用する人たちも含めると46%になることが示されている。

オンラインショッパーの中でのサブスクリプションユーザー率 出典:McKinsey Analysis
”Thinking inside the subscription box: New research on e-commerce consumers”, February 2018, McKinsey & Company, www.mckinsey.com. Copyright © 2018 McKinsey & Company. All rights reserved. Reprinted by permission.
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 そしてユーザーは主に25~44才、年収は5万から10万ドルと高く(2016年の米国勢調査では個人収入の中央値は3万1099ドル)、多くが米北東部の都市地域の居住者ということがわかっている。

 男女別での利用状況はさらに興味深い。60%のユーザーが女性であるが、逆に利用サービス数では男性が高く、3つ以上のサブスクリプションサービスを利用しているのは男性が42%であるのに対して、女性は28%とかなり差をつけている。6つ以上では男性18%に対して女性7%となっている(下図)。

性別による利用サブスクリプション数。サブスクリプションユーザー中のシェア。出典:McKinsey Analysis
”Thinking inside the subscription box: New research on e-commerce consumers”, February 2018, McKinsey & Company, www.mckinsey.com. Copyright © 2018 McKinsey & Company. All rights reserved. Reprinted by permission.
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性別による利用サブスクリプションサービスランキング。出典:McKinsey Analysis
”Thinking inside the subscription box: New research on e-commerce consumers”, February 2018, McKinsey & Company, www.mckinsey.com. Copyright © 2018 McKinsey & Company. All rights reserved. Reprinted by permission.
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 同レポートでは、男女別の利用サービスのトップ10ランキングも発表している。

 全体のランキングを見ていくと、PrimeNowやパントリー、Prime Videoなどのサービスをラインナップするアマゾン(Amazon)は、Subscribe & Saveという食材や家庭用品、ペット用品などのサブスクリプションサービスを提供しており、Eコマース市場と同様にトップに立っている。続くのがダラーシェイブクラブ(Dollar Shave Club)。2016年にユニリーバが10億ドルで買収し、カミソリ事業に参入したことで話題になった企業である。

 次のイプシー(Ipsy)は、毎月5つの化粧品や美容用品を10ドルで届けてくれるサービス。そしてブルーエプロン(Blue Apron)は、同社のシェフが提示するレシピのなかから、週2-4回分の食材をパッケージにして毎週届けてくれるサービスである。次のバーチボックス(Birchbox)や大手化粧品店チェーンであるセフォラ(Sephora)によるSephora Play!も、Ipsy同様に化粧品のサブスクリプションである。

 ハリーズ(Harry’s)はDollar Shave Clubの競合で同様のカミソリ刃を送るサービス。バークボックス(BarkBox)は犬のための玩具、餌、アクセサリーなどを毎月箱詰めにして月21ドルで送ってくれるサービスである。次のジャストファブ(JustFab)は、女性向けのファッションや靴、バッグをセットでスタイリストが選んで月約40ドルで送ってくれるサービス。ハローフレッシュ(HelloFresh)もBlue Apron同様のレシピと食材のサービスである。

 女性側のランキングでは、これにファッションコーディネートのスティッチフィックス(StichFix)と、下着のサブスクリプションであるアドアミー(AdoreMe)と靴のシューダズル(ShoeDazzle)が入っている。男性側では、ゲームや玩具、オタク向け商品のルートクレイト(Loot Crate)や、食品・レシピのホームシェフ(Home Chef)、スーパーマーケットでの買い物を代行してくれるインスタカート(Instacart)が含まれている。

ニッチ化、周辺サービス

 上記で見られるようなデジタルメディア、食品、家庭用品、子供、ペット用品、ファッション、化粧品などでは、多くの企業が市場をおさえ始めていることがわかる。この市場に新規参入するスタートアップは、ニッチな市場をおさえるか、もしくはまったく新しい分野でサブスクリプションコマースを提供する必要があるだろう。

 ここでは3社ほど新しいサブスクリプションサービス、周辺サービスを紹介する。

Pearachute

 子供の習いごとお試しサブスクリプション

 全米5都市で展開し、1000以上のスポーツ、音楽、アート、バレエ、外国語などのクラスを試したり、定期的に参加することを可能にするサービス。59ドルで5クラス使えるお試し価格を用意したり、月79ドルのサービスも提供している。最大5人の子供が1つのサブスクリプションを利用でき、友達グループで同じクラスを試せる。多くのクラスにとっては、このアプリを通してサービスを見つけてもらうマーケティング施策でもある。

Mealpal

 1000以上のレストランからランチ、ディナーを定額でピックアップできるサービス

 欧米10都市で展開する、ランチやディナーのお持ち帰りセットを定額で購買できるサービス。月12回のランチであれば一食あたり6.39ドルで、前日にどのレストランのメニューがいいかを選択する必要がある。レストラン側は、午前中や午後の忙しくない時間帯に、予約された数量のランチ、ディナーセットを用意する。今までになかった収益源をつくることができ、またこれまで接点のなかった人たちへのマーケティングチャネルにもなっている。

Cratejoy

 サブスクリプションコマースのマーケットプレイス

 サブスクリプションコマース事業を始める企業や個人のために、必要な機能を集めたマーケットプレイス。ウェブサイト構築ツールやマーケットプレイス、メール・アフィリエイトマーケティング機能、支払い機能、そしてコンバージョン解析などの機能を持ち、月39ドルから使用できる。ユーザーからすると、一箇所にさまざまな種類のサブスクリプションサービスが集まっており、容易に検索できたり、新しいサービスを発見できる場所として集客にもつながっている。

 クレイトジョイ(Cratejoy)のような周辺サービスも数々登場しており、ニッチな製品のサブスクリプションサービスもそこで生まれて、サブスクリプションコマースはますます市場が拡大している。また大手小売企業やユニリーバのような消費財メーカーもサブスクリプションコマースに参入しており、現代人にとって最も貴重な資源である「時間」を生み出すショッピングの自動化はさらに進むと考えられる。

 実際には消費者のショッピング行動における作業工数を減らすだけではなく、小売側での需要予測と発注の自動化、メーカーにおける生産予測などの精度向上をもたらす。つまりサプライチェーン全体での予測精度を上げて、利益率を向上していくことにつながっていく。

 また、利用者をある程度確保すれば、すでにある規模の需要が恒常的に用意されているので、新製品やプライベートブランド製品などのテストマーケットとしての役割や初期のマーケティング活動の場を提供することなども考えられ、メーカーに対して新たなサービスを提供することも可能になるだろう。

 このように、サブスクリプションコマースは利用者、運営企業にメリットがあり、小売業界で戦略的に重要なポジションを獲得していくと筆者は考えている。

織田 浩一(おりた・こういち)氏

米シアトルを拠点とし、日本の広告・メディア企業、商社、調査会社に向けて、欧米での新広告手法・メディア・小売・AIテクノロジー調査・企業提携コンサルティングサービスを提供。著書には「TVCM崩壊」「リッチコンテンツマーケティングの時代」「次世代広告テクノロジー」など。

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